マーケティングアジェンダ東京2022外伝 #03
2030年までに起きるマーケティングトレンドの変化に、マーケターはどう向き合うべきか【マーケティングアジェンダ東京2022レポート外伝 第2回】
2023/04/05
オンラインプログラミングスクール「テックアカデミー」を運営するキラメックスでマーケティングを担当している福田保範です。2022年12月8日、9日に行われた「マーケティングアジェンダ東京2022」のレポート第2弾になります。
今回は「マーケティング・広告業界予想 2012年 ⇒ 2023年 ⇒ 2030年」というテーマで、横山隆治事務所 代表取締役の横山隆治氏と、資生堂インタラクティブビューティー DX本部/デジタル戦略部の大槻開氏が登壇したセッションをお届けします。2023年だけではなく、2030年という長期的な視点から業界予測を行い、マーケターが意識すべき重要なことを探りました。
今回は「マーケティング・広告業界予想 2012年 ⇒ 2023年 ⇒ 2030年」というテーマで、横山隆治事務所 代表取締役の横山隆治氏と、資生堂インタラクティブビューティー DX本部/デジタル戦略部の大槻開氏が登壇したセッションをお届けします。2023年だけではなく、2030年という長期的な視点から業界予測を行い、マーケターが意識すべき重要なことを探りました。
過去・現在・未来を踏まえ、今後のマーケターとしての行動を考えよう
横山氏は、広告業界歴40年のビジネスパーソンで、自身のブログ「業界人間ベム」でマーケティングやデジタルに関する知見を発信しています。特に、年初にその年の広告業界の動向を予測する記事を発表し、大きな話題を呼んでいます。また、書籍『トリプルメディアマーケティング ソーシャルメディア、自社メディア、広告の連携戦略』や『広告ビジネス次の10年』などを執筆した広告界のレジェンドです。
一方で大槻氏は、横山氏が社長を務めていたデジタルインテリジェンスでキャリアをスタート。その後、P&Gに入社し、メディアマネージャーや男性用シェーバー「BRAUN」 のブランドマネージャーを経て、現在は資生堂インタラクティブビューティーで資生堂のDX推進やBeauty KeyというOne-IDプラットフォームの開発などを担当しています。
デジタルの最前線で活躍している2人が、近年のマーケティングを少しだけ振り返りながら、間近に迫る重要なこと、間近ではないけれど考えるべき本質的なことを語りました。今後のマーケティング業界は、どのような方向に向かっていくのか。その中でどうすべきか、自分自身の仕事を振り返りながら読むことで参考になると思います。それではどうぞ。
AIと人間のマーケティングスキルの融合
横山氏が運営する「業界人間ベムRELOAD」は、マーケティング業界で働いている人が注目しているブログのひとつで、毎年1月にその年の業界予測をしています。この10年をまとめたものがこちらです(赤字が 実際に潮流を捉えたキーワード )。
このスライドから、予想通りに進んでいる部分と、思ったよりも進みが遅かったり、日本というローカルな特殊事情で想定とずれていたりする部分がみて取れます。その中でも、2019年からAI関連の進化が目立ちます。
横山氏は「2014年に執筆した『広告ビジネス次の10年』の中で、いま振り返って想定とずれていた点があるとすれば『デジタル化とグローバル化は表裏一体』と書いたことです。日本はローカルで独自に発展しており、グローバルとは違う動きをしてきました。例えば、海外で売上の高いBtoB系の企業がMA(マーケティングオートメーション)ツールを導入して、仕組み化していく。それのノウハウを逆輸入で日本に“海外の成功事例”として展開されることはよくあると思いますが、それが成功するとは限らないでしょう」と語ります。
横山 隆治 氏
大きな潮流として2008年と2021年の広告費の比較と推移を、次のようにまとめています。
テレビや新聞、雑誌などのマスメディアとプロモーションメディアの広告費が減り、インターネット広告が大幅に増えました。そして、インターネット広告の内部でも、枠モノではなく運用型広告が大きく伸びています。この後の話に繋がりますが、単純な広告出稿ではなくクライアントのビジネス課題に合わせたカスタマイズ型の運用型広告が重要になり、マーケティングスキルが必要になってきました。
大槻氏からは「労力のかかる仕事をAIに任せる動きが出てきています。たとえば、広告のAI化は自動入札から始まりましたが、2022年に話題となった画像生成AI『Stable Diffusion』は一定のクオリティの広告クリエイティブがつくれてしまうことを実証しました」と言います。
大槻 開 氏
それに対して、横山氏は「エージェンシーにクリエイティブアイデアを頑張って100案出してもらう必要はなくなり、クライアント側がAIで制作した100案の中から良いものを選ぶだけでよくなっていくということです。ただ、選ぶためのセンスや経験、スキルは必要になるので、マーケティング人材と資本の投入は必要になっていきます」と続けます。
さらに、横山氏は「文化が変わってきたことを認識しています。もはや広告会社やベンダーは決まった枠や商品を売り歩くのではなく、お客さまひとり一人にカスタマイズした商品を売っていくという動きに変化しています。そうなってくるともう人間業だけでは対応できず、売り物作りはAIの力を借りる必要があります。マーケティング・広告のビジネスモデルの転換の第1フェーズはここから始まっていきます。その実現をしてから、キャピタルゲインを生むための資本と人材の投入が第2フェーズとなる。そんな2030年までの大きな潮流を感じています」と言います。
私自身、そのような潮流は2022年頃から顕著になっているという感覚はありました。Chat GPTやCanvaによる自動化が話題になっている昨今、広告会社やベンダーは単にツールや広告枠を売るのではなく、ビジネス課題に沿った提案とソリューションの提供が必要になることは間違いありません。