「現場力とは、何か?」~ネプラス・ユー大阪2023 特別企画~ #01

先輩からの「現場に行け」が腹落ちした瞬間【ネプラス・ユー大阪2023 特別寄稿:能川一太】

 2023年7月12日から13日にかけて、マーケティング・カンファレンス「ネプラス・ユー大阪2023 (主催:ナノベーション)」が大阪(梅田サウスホール)で開催される。テーマは、「現場力~Go beyond your territory~」。AIはじめテクノロジーが発達し、変化の激しい現代では、実際に「現場」で一次情報に触れることが重要という考えのもと、多数の魅力的なセッションが行われる。今回は、本カンファレンスの開催を記念し、カウンシルメンバーに「現場力とは、何か?」をテーマに寄稿してもらった。第1回は、「ビジネスをスケールさせるコミュニケーションの極意 」というテーマのセッションのモデレーターを担当する近鉄都ホテルズ 執行役員の能川一太氏になる。
 

「現場へ行け」

 
能川 一太 氏
近鉄都ホテルズ 執行役員

近畿日本鉄道で、駅や駅ビル、美術館などの設計、建築を担当。その後、観光特急「しまかぜ」のサービスの立ち上げ、観光地への旅行プロモーションを実施。志摩スペイン村の支配人を経て、近鉄が経営するレジャー事業を担当した後、 今は近鉄都ホテルズでマーケティングを担当。

  先日、TBS系列の人気ドキュメンタリー番組「情熱大陸」で建築家の永山祐子さんが、建設現場でタイルの色合わせをしたり、オブジェに使うオーガンジーをハサミで切り落としたりするシーンを見ました。私自身も近畿日本鉄道で建物の設計を担当していたことがあって、「あぁ、建築の現場だな」と懐かしく思いました。

 製図板に向かって、図面を引いて、ヘルメットを被って、現場へ出る。そこで設計通りにできているか、確認するんですね。それが私にとっての、最初の「現場」でした。当時、先輩からは「現場へ行け」とよく言われたものです。現場へ行くと、図面では見えないものが見えてきます。

 あの頃から随分と時間が経って、色んな仕事を経験してきました。そしてある時、先輩から「現場へ行け」と言われていたのは、こういうことだったのかと、得心したことがありました。

 テーマパークの支配人をしていた時のことです。あるショーについて、売上よりも「観客数を増やしたい」と思っていた時期がありました。というのも、自分たちとしては、すごくお勧めできる内容なのに、お客さまに観に来てもらえないわけです。踊っているダンサーが可哀想だし、何よりお客さまも素晴らしいショーを観ることなく帰ってしまう。それでは申し訳ないと、日々、事務所で思い悩んでいました。

 そんなある日、考え疲れてテーマパーク内へ散歩、ではなく巡回に出たとき、ゲストのなんでもない普通なら見過ごしてしまうような動きを見て、「あっ!」と、それまで悩んでいた答えが文字通り、スッと降りてきました。夏休みで、子ども連れのお客さまが多く来ていて、その親から「子どもも観ることができるのか?」とキャストが聞かれていたのです。そのシーンから、子ども限定で無料にするアイデアが思い浮かびました。このアイデアは、結果的に観客数だけでなく、売上にも貢献しました(詳しくは、こちらの記事を見てください )。

「あぁ、現場に行けと言われていたのは、こういうことだったのか」と、その時になってやっと腹落ちしました。


 

私の体感した「現場力」


 ショーが始まる時間には、いつも現場に立って、ゲストを観察したり、受付のキャストと話したりしました。そのうち、スタッフルームに私の分もお菓子を用意してくれるようになりました。そこまでくると、大抵の話はスムーズに進みます。

 何よりも現場からの愚痴が聞けるようになります。それを解決していくと(というよりも、ただ聞いているだけなのですが)、どんどん良いアイデアが出てきます。「こうしたらいいと思うんだけど、やってみてもいいですか?」や「それなら、こうしたらもっといいんじゃない?」など、そんなやりとりです。

 上から押し付けられたアイデアは、いくら良くても実現されにくいものです。それは、現場の「実現させよう」という気持ちが入りにくいから。現場にはヒントが落ちています。そこで、みんなと一緒になって課題を見つけて拾って、解決策を実行することが大事なのです。

 そんな楽しく、学びの多い現場を離れることになった最後の日、スタッフに胴上げしてもらいました。最初はバランスを崩して落ちないかなと、少し不安を感じたのですが(笑)、全身を丸ごと任せることができて、なんとも言えない安心感がありました。

 そんなふうに身体を任せることができるほど、みんなのことを信頼して同じ目的に向かって力を合わせる。それが、私の体感した「現場力」です。

 

ネプラス・ユー大阪2023 公式サイトは、こちら

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