ダイレクトアジェンダ2024座談会 #02

生成AI、物流、ライフスタンス…ダイレクトマーケの最新キーワードを徹底議論【ダイレクトアジェンダ座談会】

前回の記事:
激変の2024年、ダイレクトマーケの最新潮流をI-ne、GDO、スクロールのキーパーソンが読み解く【ダイレクトアジェンダ座談会】
  EC・通販事業に携わるトップマーケターが鹿児島県に集結し、最先端の知見を交換する合宿型カンファレンス「ダイレクトアジェンダ2024」(2024年3月7日~9日)。それに先駆け、カウンシルメンバーを務めるシンクロ代表取締役社長の西井敏恭氏、ゴルフダイジェスト・オンライン執行役員の志賀智之氏、スクロール360常務取締役の高山隆司氏に加え、特別ゲストとしてダイレクトアジェンダ2024のキーノートのスピーカーであるI-ne執行役員の伊藤翔哉氏の4氏が座談会を開き、ダイレクトマーケティングの最新潮流を読み解いた。

 前編では、全体的に苦戦を強いられた2023年の動向を振り返り、「踊り場」とも言われるDtoC(Direct to Consumer:メーカーがオンラインストアなどを通じて直接顧客と取引するビジネスモデル)ビジネスの本質を問い直した。本稿では、生成AIなど2024年のキーポイントを俯瞰し、ダイレクトアジェンダ2024の全体テーマである「ライフスタンス」にも議論が及んだ座談会の後編をお届けする。

ダイレクトアジェンダ2024公式サイトは、こちら
 

AI活用、EC物流はどうなる?


――ダイレクトマーケティングにおける2024年注目のテーマはなんでしょうか。

志賀 やはり生成AIの存在は大きいでしょう。ゴルフダイジェスト・オンラインでもサイト内の顧客体験の改善などに活用していくつもりです。どんなお客さまにどんなアプローチをしていくか。たとえば、サイト内には大量のコンテンツや記事がありますが、それらを全て読み切れるわけではありません。商品の口コミなどは件数が多いと価値が高いように見えますが、何千件と溜まっているとかえって読まれにくいという実状があります。その点、要約が大得意であるAIを使えば、お客さんが商品の特徴をつかみやすいサイトづくりができます。2~3年はかかると思いますが、データを使いながら、少しずつ新しいサービスや顧客体験を磨き込んでいこうとしているところです。
 
ゴルフダイジェスト・オンライン 執行役員 CMO /CIO
志賀 智之 氏

 2008年入社後、IT戦略室長、情報活用推進部部長を歴任し、お客さま体験デザイン本部(現UXD本部)設立後、同本部長を経て執行役員CMO/CIOに就任。データの活用と徹底した顧客中心のマーケティング設計により、会員基盤やサービスの相互利用を着実に拡大し売上の連続成長を実現している。

レコメンドエンジン(WebサイトやECサイトでユーザーごとに商品やコンテンツをおすすめする機能)は、もっと進化するでしょう。顧客ごとにパーソナライズしたり、情報過多だったところをシンプルに見せられるようにしたり、その手の処理は人間よりAIのほうが早いので、活用が一層広がりそうです。

高山 私はよりパーソナライズが進むと考えています。商品を発送する時に同梱物を印刷して送ることが多いのですが、特にリピート通販系は、初回のお客さまに挨拶状を入れ、次のお客さまには使い方のヒントを入れて、というように同梱物のパターンが膨大にあり、「物流泣かせ」と言われます。

それが最近はオンデマンドプリンターが導入され、お客さまの属性ごとに異なる内容を印刷して、顧客とのコミュニケーションをより良くできる上に、必要なものを必要なだけ印刷できるようになってきました。よりパーソナライズされたメッセージを入れる研究開発も増えています。

「物流2024年問題」は、今年4月1日からドライバーの時間外労働時間が年間960時間に制限されることで全体の2割の労働時間がなくなる、すなわち2割の荷物が届かなくなるのでは、という問題です。ちなみに、残業は年間の総量でカウントするので、実は2024年ではなく2025年3月頃にドライバーが残業時間を使い果たし、仕事ができないという「2025年問題」とも言われます。
 
スクロール ソリューション事業セグメントオフィサー 兼 スクロール360 常務取締役
高山 隆司 氏

 1981年スクロール(旧社名ムトウ)入社以来、42年にわたり通販の実戦を経験。 2008年には他社のネット通販企業をサポートするスクロール360の設立に参画、以後、200社を超えるネット通販企業の立ち上げから物流受託を統括。 その経験を生かし2015年2月に「ネット通販は物流が決め手!」「シニア通販は『こだわりの大人女性』を狙いなさい」(ダイヤモンド社)を出版。

EC物流に関しては、ヤマトや佐川など大手企業は既にかなり残業対策を進めており、それほど影響しないとみられます。ただ、長距離輸送は、たとえば九州の産物が途中で中継しなければならなくなるため、新鮮な状態で関東に届かなくなるというケースが考えられます。北海道産物については、フェリーを使えば、意外と大丈夫という見方もあります。

――空輸や海運、新幹線、ドローンなどさまざまな輸送手段があるとも言われますが、代替できるのですか。

高山 新たな輸送手段が現在のトラック輸送の何%までカバーできるかというと、全然足りないというのが研究者らの見解です。一方、今回のダイレクトアジェンダ2024でも紹介されますが、コンビニの物流を利用してEC商品やレンタル商品の発送・返品をスムーズに行うサービスなど、効率性も顧客体験価値の向上も目指す取り組みが広がってきています。

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