あなたのクリエイティブ・ジャンプは何ですか?~ネプラス・ユー京都2024 特別企画~ #08

「男梅」をヒットさせたノーベル製菓の「特徴の極大化」と「定番化」戦略【ネプラス・ユー京都2024特別企画】

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 アートとサイエンスを突き詰めて、ビジネス効果を飛躍的に押し上げる「クリエイティブ・ジャンプ」は、どのように生み出されるのか? そんなテーマに真っ向から挑むマーケティングカンファレンス「ネプラス・ユー京都2024(2024年5月20日・21日/ナノベーション主催)」に関連するAgenda noteの本連載。カウンシルメンバーによる寄稿に続き、関西などを拠点とする企業に「あなた(貴社)のクリエイティブ・ジャンプ」を訊ねていく。

 今回は、1929年創業で大阪の「あめちゃん」文化を牽引する老舗菓子メーカー「ノーベル製菓」(大阪市)が登場。天童よしみさんの「なめたらあかん~」のCMなどで認知度は高いが、同社の商品戦略の真価は「特徴の極大化」にあると、「男梅キャンデー」のヒットメーカーでもある取締役開発部長の杉本政彦氏は語る。「一時的なヒットは悪」と言い切る同社が追求する「クリエイティブ・ジャンプ」とは。
 

「一時的なヒットは悪」


―― ノーベル製菓は「VC-3000のど飴」や「はちみつきんかんのど飴」、「男梅」などのヒット商品で知られています。キャンデー市場でヒットを飛ばせる打率はどれくらいなのですか。

 キャンデー市場は入れ替わりが激しく、肌感覚では毎年1000の新商品が出て、1年後には1割も残っていないという世界です。その中で当社は年間10億円以上を売り上げるヒット商品を比較的頻繁に出しているほうだと思います。最近は若者の間でグミが流行していますが、当社も2019年に出した「ペタグーグミ」が、供給が追いつかないほど売れました。また今年3月に出した新商品「ソルベットグミ」も、発売初日から供給が不安定な状況になるほど売れて、現在グミは「出すと売れる」という状況になっています。

―― ヒットが続くのは素晴らしいことですね。

 もちろん買っていただくのはありがたいのですが、メーカーであるノーベル製菓としては、1~2カ月だけバズって売れて、翌年には消えているような商品は、はっきり言えば「悪」です。「無くても困らないけれど、ちょっとした時に寄り添ってくれる」ようなお菓子を目指す当社にとって一番大切なのは、幅広いお客さまに継続的に買っていただける「定番」を生み出すこと。しかし、現在はSNSなどの影響で流行が変わりやすく、定番商品を生み出すのが非常に難しくなっています。
 
ノーベル製菓 取締役 開発部長
杉本 政彦 氏

 2000年龍谷大学経営学部卒業後、教育関係の企業へ就職。その後2001年にノーベル製菓開発部商品企画課に転職。入社後は主に商品企画に従事し、2010年より開発部全体の管理者となる。開発統括として、24年1月より取締役となり、現在に至る。男梅ブランドについては開発当初から携わり、企業コラボ含めマーケティング全般に関わりながら、日々開発に精進。

 メーカーにとって商品開発は当然ながら、最初は全て「経費」です。どれくらい売れるか分からない中で生産計画を立て、継続的・安定的に売れ続けるように仕向けることが、お金や人といったリソース配分を考えた時に、利益を最大化しやすいのです。一時的にバーンと売れると、残業してもらったり、別の製造ラインを止めたり、原材料を追加で仕入れたりしなければなりません。いつまで売れるか分からないのに、無駄なコストやロスになってしまうリスクの方が大きいのです。

 また、食品業界は大手企業が市場の大部分を占める中で、当社のような規模の会社の製品が入り込める「空きスペース」は限られています。一方、スーパーやコンビニのバイヤーさんも、その商品が一過性のものか、新機軸になるものかを見極めて、棚の鮮度を保つように入れ替えをされています。一時的にしか売れないものは、代わりの商品がすぐ出てくるので、長期的な信頼が築けません。営業パーソンは小売店に継続的に足を運んで、実績と信頼を積んで人間関係を築く必要があります。営業の数も大手に比べて少数なので、当社としては地道に商品を「定番」にはめ込んで、じわじわと広げていくことを目指しています。

―― ノーベル製菓にはマーケティングの専門部署がなく、杉本さんが統括される開発部が商品企画や、広告宣伝以外のマーケティングを担っていると聞きました。杉本さんは「男梅キャンデー」をヒットさせたことでも知られますが、どのような戦略で商品開発やマーケティングに取り組んでいるのですか。

 当社の商品は特定の世界観や枠にとらわれることなく自由に企画されていますが、他社との差別化はかなり意識しています。技術担当者と企画担当者が1対1で向き合い、「これは技術的に難しい」となっても、「できない」とは言わず、違うアプローチを考えます。目的は他社と違う商品をつくり、お客さまの満足を得ることです。妥協するくらいなら、つくらないほうがマシという考え方が浸透しています。

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