あなたのクリエイティブ・ジャンプは何ですか?~ネプラス・ユー京都2024 特別企画~ #11

新ヤン坊マー坊に続き本格アニメ? BtoB企業のヤンマーがなぜクリエイティブに注力するのか【ネプラス・ユー京都2024特別企画】

前回の記事:
八天堂のくりーむパンはなぜ駅ナカで人気なのか?森光孝雅代表が語る「一点突破・全面展開」のクリエイティブ・ジャンプ【ネプラス・ユー京都2024特別企画】
 アートとサイエンスを突き詰めて、ビジネス効果を飛躍的に押し上げる「クリエイティブ・ジャンプ」は、どのように生み出されるのか? そんなテーマに真っ向から挑むマーケティングカンファレンス「ネプラス・ユー京都2024(2024年5月20日・21日/ナノベーション主催)」に関連して、「あなた(貴社)のクリエイティブ・ジャンプ」を訊ねていくAgenda noteの本連載。

 今回は産業機械大手ヤンマーホールディングス(大阪市)が登場。BtoBをメインとする同社が、ヤン坊マー坊のリニューアル、本格アニメなどクリエイティブを全面に押し出したブランディングに注力する理由は何なのか。ブランディングのプロとして経歴を重ねてきた同社ブランド部コミュニケーション部部長の三田村有香氏に聞いた。
 

ブランディングが上位概念


―― 三田村さんの経歴と担当領域を教えてください。

 新卒でP&Gに入社し、マーケティング担当としてSK-IIのグローバルブランドマネージャーなどを務めました。当時グローバル担当で海外出張が多かったこともあり、いわゆる「小1の壁」ですね。子育てとの両立に悩み始めていた時に「教育という分野でマーケティングに挑戦してみないか」とお声がけを頂き、当時1万人以上の生徒を抱え日本最大規模だった通信制高校の本部に時短勤務で転職し、全国約60カ所のスクーリング拠点のブランディング統一や、教育業界ではまだ盛んではなかったデジタルマーケティングを導入しました。実は元々教員志望で免許も取得していたので、大変やりがいのある仕事でしたが、一区切りついたタイミングで、江崎グリコに転職。コーポレートコミュニケーション部の立ち上げ等に携わり、コーポレートブランディングとコーポレートコミュニケーションを担当した後、2022年7月にヤンマーホールディングスに入社しました。

 ヤンマーはホールディングスの下に農機、建機、エンジンといった各事業会社が位置しており、個々での商品プロモーション活動などを行っていますが、グループ全体としての統一的なコーポレートブランディングができていませんでした。私が入社するタイミングでホールディングスにブランド部が立ち上がり、その中の3組織(コミュニケーション部、デザイン部、コーポレートブランド室)のうちコミュニケーション部の部長になりました。ヤンマー全体としてのグローバルブランディング・コミュニケーションが主な業務になります。
 
ヤンマーホールディングス ブランド部 コミュニケーション部 部長
三田村 有香 氏

 P&Gマーケティング本部にてSK-IIグローバルブランドマネージャーや生理用品ウィスパー(日韓)ブランドマネージャー等を担当。その後不登校生支援に注力する通信制高校での広報・マーケティング、江崎グリコ(株)コーポレートコミュニケーション部を経て現職。国家資格キャリアコンサルタント。

 ホールディングスにはマーケティング部は存在せず、各事業会社に商品プロモーションを行う部門があります。BtoB要素が強いので、一般的にイメージされるマーケティングとは少しニュアンスが異なるかもしれません。しかし、私たちは「ブランディング」が最上位の概念であり、いかにステークホルダーとの友好な関係を構築し、課題解決のための価値を提供していくか、ということもそこに含まれると認識しています。現在のヤンマーでは「社内だけ、あるいは社外だけというブランディングはやめよう」という課題観があり、ブランド力についても社内・社外の両輪で評価するやり方を採用しています。

―― 社外だけでなく社内でのブランド力も重視する理由を教えてください。

 世界に約2万人の従業員がいるヤンマーは、所属する事業会社が違うと、同じグループ内でありながら「隣の事業のことは知らない」というように、コミュニケーションがサイロ化してしまう課題がありました。

 ”One Yanmar”として一体感を培い、まずは社員自身やその家族などのヤンマー内部の人にヤンマーのファンになってもらうのは、社外でのファンを増やしていくことと同様に、すごく大事だと思っています。私たちは「インクルーシブブランディング」と呼んでいますが、社内外を区別せずインクルーシブに、つまり、どんどん巻きこんでいくブランディングを心がけています。

 コーポレートブランドが確立していると、コングロマリット・ディスカウント(複合企業の企業価値が各事業の企業価値の合計を下回る状態)を防げることはさまざまな観点から証明されています。会社名を聞いた時にシンプルに「いい会社だよね!」と思ってもらえることが重要であり、ヤンマーは特に20代など若年層の認知度が落ちており、大きな課題になっています。

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