ダイレクトアジェンダ2024 #08

I-ne、mederi、Pococha、成長中のブランドはどんな広告施策で成果を出しているのか【ダイレクトアジェンダ2024レポート】

前回の記事:
「ダイレクトアジェンダ2024」開幕、オープニングセッションに中川政七商店 代表の中川政七氏が登場
 直販・通販事業に携わるトップマーケターが集結するカンファレンス「ダイレクトアジェンダ」が、2024年3月7日から9日にかけて、城山ホテル鹿児島(鹿児島市)で開催された。2日目のキーノートでは、I-ne 執行役員/CSOの伊藤翔哉氏、mederi 代表取締役の坂梨亜里咲氏、ディー・エヌ・エー Pococha事業部マーケティング部長の村口賢一郎氏がスピーカーとして登壇。シンクロ 代表取締役社長の西井敏恭氏がモデレーターを務め、各社の実例を掘り下げながら、ダイレクトマーケティングの現状と今後起こりうるイノベーションについて意見を交わした。

 前編となる本記事では、各社が実際に取り組んでいる広告やマーケティング施策など、企業によるSNS活用が当たり前の時代にオンラインとオフラインをどう組み合わせているのかについてのディスカッションをレポートする。
 

「ダイレクトアジェンダ」でブランド理解を深める理由とは何か


西井 モデレーターを務めるシンクロの西井です。オイシックス・ラ・大地 専門役員、NTTドコモ シニアマーケティングディレクターを務めており、事業会社のマーケターとしても仕事をしています。

ダイレクトアジェンダではお馴染みのこのキーノートは、例年、その年に活躍している企業のキーパーソンに登壇してもらい、どのようなマーケティング施策を行っているかを広くディスカッションするというものになります。
 
シンクロ 代表取締役社長
西井 敏恭 氏

 1975年福井県生まれ。2年半にわたる世界一周の旅行記を更新したWebサイトが人気となり、帰国後、旅の本を出版し、EC企業にてデジタルマーケティングに取り組む。二度目の世界一周の旅をしたのち、2016年にシンクロを設立。大手通販・スタートアップなど多くの企業のマーケティング支援やデジタル事業の協業・推進を行うほか、複数企業の取締役を兼任する。その傍ら旅を続け、訪問した国は150カ国近く。 全国のマーケティングイベントやビジネスフォーラムでの講演、雑誌・新聞・テレビなどメディア掲載多数。

はじめに、中川政七商店 代表取締役会長の中川政七氏と私が登壇した、昨日のキーノート「ライフスタイルの時代からライフスタンスの時代へ」の中で、伝えたかったことがひとつ漏れていたので、付け加えさせていただきます。

昨日のセッション後に「ダイレクトマーケティングをテーマにするカンファレンスでなぜブランドの話を最初にもってきたのか」というご質問をたくさんいただきました。私が注目してもらいたいと思っていたのが、中川さんがおっしゃっていた、AppleやNIKE、パタゴニアの事例です。中川さんはお話の中で、実は卸をやめて、直販のお店を出し、さらにはモールへの出店をやめて、自社ECに切り替えたという話をされていました。実はNIKEも数年前から自社ECにすごく力を入れています。

今回のテーマにもつながるのですが、私はこういった事例を受けて、モノだけでは売れない時代になっているので、実は「ブランド」が重要になっていると感じています。その上で、ダイレクトマーケティングに取り組まれているマーケターは顧客と直接コミュニケーションをするので、そのブランドの一番の担い手になれる存在であり、それは顧客にとっても新しい価値提供につながると考えています。

そのような経緯があって、ダイレクトマーケティングの話の中であえて「ライフスタンス」をテーマに掲げ、中川さんにお話しいただきました。今回のセッションはマーケティングの話ですが、ここにいるさまざまな業界、業種で取り組まれている登壇者から中川さんの「ライフスタンス」のお話も踏まえながら、議論を進めたいと思っています。それではまず、伊藤さんから自己紹介をお願いします。

伊藤 I-neの伊藤です。我々は大阪が本社のファーブレスメーカー(自社で工場などの生産設備をもたず、外注先に完全に製造委託しているメーカー)で、社員が340人ほどいる規模の会社です。ボタニカルライフスタイルブランド「BOTANIST」やナイトケアビューティーブランド「YOLU」、美容家電ブランドの「SALONIA」、メイクアップ&スキンケアブランドの「WrinkFade」 など、さまざまなブランドを展開しています。
 
I-ne 執行役員/CSO
伊藤 翔哉 氏

  2011年入社。Eコマースとデジタル上におけるブランド戦略に注力し、広告、マーケティングも兼任。オンラインで認知を獲得して実績を上げて、ドラッグストアなどのオフライン販売網に拡大展開する、オンライン起点でのビジネスモデルの構築に尽力。2017年取締役 兼 販売事業本部本部長代理、及び株式会社VUEN(現・株式会社Dr.SYUWAN) 代表取締役就任。2022年1月執行役員兼デジタルマーケティング本部本部長就任。2023年4月より、艾恩伊(上海)化粧品有限公司 董事就任。2024年1月執行役員 CSO(Chief Sales Officer)及び株式会社Endeavour代表取締役就任。

主力はヘアケアブランドの「BOTANIST」や美容家電ブランドの「SALONIA」です。最近では医薬品にも挑戦しており、目薬なども販売しています。

西井 「BOTANIST」や「YOLU」はみなさんご存知かと思うのですが、かなり話題になっているシャンプーですよね。そういった中で、まさにダイレクトマーケティングからスタートして、卸も使っていらっしゃる会社さんです。では次に、坂梨さんお願いします。

坂梨 mederi 代表の坂梨と申します。mederiは2019年に設立して丸4年が経過しました。もともとは私の長年の不妊治療の体験がきっかけで、ひとりでも多くの女性に、望むタイミングで妊娠・出産・キャリアを実現していただきたいという想いで始めました。
 
mederi 代表取締役
坂梨 亜梨咲 氏

 明治大学卒業後、ECコンサルティング会社を経て、女性向けwebメディアのディレクター、COO、代表取締役を経験。自らの4年に渡る不妊治療経験からmederi株式会社を設立。オンラインピル診療サービス「メデリピル(mederi Pill)」、妊活サポートプロダクト「メデリベイビー(mederi Baby)」を展開。2021年より実業家・前澤友作氏が設立した前澤ファンドから出資を受けている。

私たちが提供しているサービスは、生理に悩む女性と産婦人科医をつなげるオンライン・プラットフォーム「メデリピル」です。医療DtoCの領域で展開しているのですが、あくまでも医療用医薬品なので、ユーザーさんがカートに入れてすぐに買えるようなものではありません。必ず医師の診療が必要なので、買うまでの過程も複雑なところが特徴的かなと思います。

西井 mederiはまさに、ユーザーとのコミュニケーションがきちんとできていないと販売してはいけない、という商材を扱っていますよね。そういった部分におけるコミュニケーションに配慮しながら、立ち上げから2年で急成長しています。テレビCMでも目にすることが多いですね。それでは、続いて村口さん、お願いします。

村口 DeNAで、「Pococha」というライブコミュニケーションアプリのマーケティング責任者をしている村口です。Pocochaという名前を聞いたことがない人もいらっしゃると思います。実は、Pocochaは今年で7周年を迎え、国内ではライブ配信アプリ市場における月間利用者数No.1(※1)のサービスです。
 
ディー・エヌ・エー Pococha事業部マーケティング部長
村口 賢一郎 氏

 外資系コンサルティング会社でのコンサルティング経験、外資系広告代理店での戦略プランニング経験を活かし、Google で Product Marketing Lead として Hardware 事業(Google Home, Google Pixel など)の日本立ち上げに従事 。Google Pixel の日本市場への浸透に販売促進、パートナーシップを通して貢献 。また IBM から分社化した IT インフラ企業である Kyndryl Japan の事業立ち上げの CMO として企業ブランディング、新マーケティングモデルの確立を実現 。2023 年7 月より Pococha の Head of Global Marketing を担当。広告代理店と事業会社、B2C とB2B、コミュニケーションの上流から下流までの経験した強みを活かし、新規ブランドの立ち上げ・グロースマーケティングが強み。

一般的にライブ配信と聞いて多くの人がイメージするのは、一部のトップインフルエンサーが多くの視聴者と収益を得るようなピラミッド型のビジネスモデルのプラットフォームです。しかし、実はPocochaのコミュニティにおいては、配信者であるライバーと視聴するリスナーのコミュニティの平均人数が10~20人くらいの少人数なんです。そういった小さなコミュニティが何万個もある様子をイメージしていただけたらと思います。

つまり、いわゆる「ファンコミュニティ」が無数に生まれる状態で、そこにおける体験が、ユーザーさんにとって非常に価値があるものになると考えています。

西井 私も「Pococha」というアプリの名前は知っていましたが、その仕組みはあまりよくわかっていなかったのでインストールして試してみました。Pocochaの収益源のほとんどは、投げ銭からという認識でよろしいですか。

村口 はい、リスナーがライバーに送る課金型アイテムが売上となります。

西井 ですので、モノを販売するという話ではなくて、まさにダイレクトにお客さまとつながって、そこから新しい価値を生みながら収益をつくっていく、今までにないタイプのビジネスですね。

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