マーケティングアジェンダ2024レポート #02

1件のSNS投稿から生まれた味の素「冷凍餃子フライパンチャレンジ」から学ぶ「不」の声との向き合い方【マーケティングアジェンダ2024レポート】

前回の記事:
YOASOBIのヒットをフェーズごとに徹底解剖、最適解を探し続けることの大切さ【マーケティングアジェンダ2024レポート】
 国内外のブランド企業などのトップマーケターが集結する日本最高峰のマーケティングカンファレンス「マーケティングアジェンダ2024(主催:ナノベーション)」が2024年6月19日から22日にかけて、沖縄県・読谷村(グランドメルキュール沖縄残波岬リゾート)で開催された。

 そのキーノートセッションをnote プロデューサー/ブロガーとしてビジネスパーソンのキャリア構築や、企業の広報やマーケティングのサポートを行う徳力基彦氏がレポートする本連載。その第3弾として、味の素冷凍食品が追求する定番商品の「永久改良」と、その先にもたらされた「話題化」について、同社 取締役常務執行役員 マーケティング本部長の松本征之氏がスピーカー、ビザ・ワールドワイド・ジャパン マーケティング本部長 Vice President, CMOの里村明洋氏がモデレーターを務めたセッションをレポートする。
 

SNS投稿をきっかけにフライパンの提供呼びかけ


「冷凍ギョーザが張り付いてしまうフライパンを提供してください」

 そんな味の素冷凍食品の呼びかけに、なんと3520個ものフライパンが届いてしまったことで、SNSでも大いに話題になった「冷凍餃子フライパンチャレンジ」。

 その裏側を味の素冷凍食品 取締役常務執行役員 マーケティング本部長の松本征之さんが、沖縄で開催された「マーケティングアジェンダ2024」で詳しく教えてくれました。

 この「冷凍餃子フライパンチャレンジ」は、日本だけでなく海外のさまざまなPRアワードを受賞しており、業界では有名な成功事例となっています。実は、この企画のはじまりは1件の「餃子の皮が張り付いた!」というお客様の声に遡ります。
  
「油いらないって!!書いてたじゃん!!!嘘つき!!!」

 焼け焦げた餃子の皮がフライパンにこびりついた写真とともに投稿されたこの投稿は、X上で話題になり、同様の現象が起きた人の共感の声や、アドバイスなどが寄せられる事態になります。

 通常の企業であれば、ある意味での炎上状態になっているこの投稿には直接触れずに、1件のクレームとして扱っていたかもしれません。

 しかし、味の素冷凍食品の担当者は、この投稿に正面から向き合う判断をします。翌日にこの投稿に対して、お詫びの文章とともにフライパンの提供の依頼のコメントを行ったのです。
 

 SNS上のクレームに対してサポートを行う行為は「アクティブサポート」と呼ばれ、現在では多くの企業が実施していますが、通常は解決が可能なクレームに対するサポートを中心に行うのが常識です。

 生活者の焼き方や環境によって焦げてしまった可能性がある行為に対して、ここまで踏み込んだ対応を行うことはリスクもあります。

 しかし、味の素冷凍食品の対応はこれだけにとどまりませんでした。

 翌月にはなんと「冷凍ギョーザが張り付いてしまうフライパンを提供してください」と同様の問題が発生するフライパンの提供を全国に呼びかけたのです。

 その結果、冒頭に書いたように、なんと約3日間で全国より1000個以上のフライパンが集まり、最終的には3520個も集まることになります。



 その後、味の素冷凍食品は、R&Dチームが届いたフライパンを徹底検証。なんと3520個のフライパンにナンバリングをして、3Dスキャンをして専用サイトを立ち上げます。



※参考:冷凍餃子フライパンチャレンジ|味の素冷凍食品

 さらにnoteも立ち上げて具体的な経緯報告まで実施するのです。

※参考:まずは100個!|味の素冷凍食品公式フライパンnote

 こうした味の素冷凍食品の徹底した改良への姿勢は「狂気のサイト」としてSNS上でも話題になり、最終的にリニューアル商品の売上は定番商品としては大幅増という結果につながります。

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