マーケティングアジェンダ2024レポート #02

1件のSNS投稿から生まれた味の素「冷凍餃子フライパンチャレンジ」から学ぶ「不」の声との向き合い方【マーケティングアジェンダ2024レポート】

 

「不」の声の解消は、感動につながる


 ここで注目したいのは、同様の状況になったときに私たちは同じ判断ができるか?という点です。

 味の素冷凍食品が、今回ここまでの神対応を行うことができた背景にはまず「永久改良」という企業文化が、一人ひとりに浸透していた面が大きいようです。
  
ビザ・ワールドワイド・ジャパンの里村明洋氏(左)、味の素冷凍食品の松本征之氏(右)

 実は味の素冷凍食品においても「永久改良」を誰が言い出したのかは分からないそうですが、冷凍餃子では絶対負けないという活動が文化に根付いていった歴史があるようです。

 だからこそ、SNS担当者は顧客の声から逃げずに正面から向き合い、あえて着払いでフライパンの募集をチームとして決断し、R&D(研究開発)チームもフライパンを徹底的に検証するという信じられないほど地道な作業に取り組むことができたのだと言えます。

 また、味の素冷凍食品のSNS担当者が過去にX上で冷凍食品を巡る手抜き論争が勃発していた際に、「手抜きではなく手間抜き」という投稿を通じて賛否の声が交差したものの、多くの応援の声を得ることができたという経験があったことも、好影響を与えていたようです。
 
※参考: 企業の投稿が44万いいね! 冷凍餃子の#手間抜き論争が大きく話題化した理由
 
松本さんは、顧客の「不」の声は見過ごしたくなりがちだが、その声を解消できると感動にもなり得ると話されていました。

 特に「冷凍餃子フライパンチャレンジ」で重要なのは、この取り組みが最初から話題化を狙ったものではなかったという点でしょう。

 現場の担当者一人ひとりが、顧客の「不」の声と逃げずに向き合い、「永久改良」の企業文化によって「不」の声を本気で解消しようと取り組んだことが「冷凍餃子フライパンチャレンジ」の成功につながったと言えます。
  
「冷凍餃子フライパンチャレンジ」のプロジェクト担当である、味の素冷凍食品 製品戦略部マーケティング担当の駒木根理花氏(中央)を囲んで

 ファミリーマートCMOの足立光さんも「話題化は炎上と紙一重だからこそ、一歩踏み込む勇気が大事」という話をされていました。実は一見炎上やクレームに見える顧客の「不」の声にこそ、その企業が取り組むべき本当のテーマがあるということも言えるかもしれません。
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