B2Bアジェンダ2024レポート #03
ヤンマー、中外製薬、横河電機が実践する、B2Bビジネスのためのブランド戦略の裏側【B2Bアジェンダ2024レポート】
企業スローガンで社内外に発信する中外製薬
風口 ヤンマーホールディングスさんのように「共感」を生む活動は、ブランド形成において非常に大切だと思います。横河電機さんや中外製薬さんは、ステークホルダーの共感をえるためにどのような取り組みを行っているのか、お考えをお聞かせください。
阿部 横河電機でもBtoC企業とは違った方法でBtoB企業としてのファンづくりに注力しています。
横河電機
執行役常務 マーケテイング本部本部長 CMO 博士(技術経営)
阿部 剛士 氏
1985年、現インテル株式会社入社。インテル・アーキテクチャ技術本部長、マーケティング本部長、技術開発・製造技術本部長を歴任。2009年以降、取締役 兼 副社長執行役員に就任。2016年、横河電機株式会社入社。マーケットコミュニケーション、マーケットインテリジェンス、ブランディング、知財、新規事業開拓、標準化戦略、オープン・イノベーション、工業デザイン、政府渉外などを傘下にマーケティング本部を統括。
執行役常務 マーケテイング本部本部長 CMO 博士(技術経営)
阿部 剛士 氏
1985年、現インテル株式会社入社。インテル・アーキテクチャ技術本部長、マーケティング本部長、技術開発・製造技術本部長を歴任。2009年以降、取締役 兼 副社長執行役員に就任。2016年、横河電機株式会社入社。マーケットコミュニケーション、マーケットインテリジェンス、ブランディング、知財、新規事業開拓、標準化戦略、オープン・イノベーション、工業デザイン、政府渉外などを傘下にマーケティング本部を統括。
昔はブランド価値というと「機能的価値」だけでしたが、最近では「感情的価値」やエモーショナル、シンパシーが注目されており、それはまさにファンづくりですよね。さらに、インターネットの普及で「自己実現価値」や、なりたい自分になるという「社会的価値」も重視されています。
この中でファンづくりは「感情的価値」と「自己実現価値」が関係するのでBtoB企業でもその重要性はBtoC企業と変わりません。
風口 ファンづくり、ロイヤル顧客を形成していくところですね。中外製薬さんは阿部さんにご紹介いただきました4つの価値の中でも、「社会的価値」に注力して市場のパーセプションを変えようということをブランド戦略の中で実現されたと聞いています。
宮田 中外製薬は2004年に一般用医薬品事業を売却したことを境に、特に若年層の認知率がものすごい勢いで下がりました。それに加えて、当社の事業に対する理解がアップデートされないままだったので、これらの課題を経営層に訴え1年ぐらい議論を重ねてブランディングを始めました。
ブランディングの目的は「企業認知の維持向上(生命関連企業としての信頼感・患者貢献への共感獲得)」「イノベーション企業としてのイメージ獲得」、「社員の求心力・モチベーション向上・イノベーション支援・アイデア触発」の3つでした。
中外製薬 広報IR部長
宮田 香絵 氏
1999年、中外製薬株式会社入社。広報IR部にてインベスターリレーションズ、メディアリレーションズ、社内広報およびコーポレートブランディングを担当。同社購買部長を経て、2023年7月より同社広報IR部長(現任)。ブランディングでは2015年より中外製薬の企業広告、WEBサイト等の展開を担当。
宮田 香絵 氏
1999年、中外製薬株式会社入社。広報IR部にてインベスターリレーションズ、メディアリレーションズ、社内広報およびコーポレートブランディングを担当。同社購買部長を経て、2023年7月より同社広報IR部長(現任)。ブランディングでは2015年より中外製薬の企業広告、WEBサイト等の展開を担当。
その3つを統合して「創造で想像を超える。INNOVATION BEYOUND IMAGINATION」という企業スローガンをつくりました。これがとてもフィットし、社員からの支持も高く、社外からも好評でした。
医薬品で病気を治す、そしてその周辺のサービスを提供していくのはもちろんなのですが、将来的にはもしかしたら中外製薬の「製薬」は無くなってもいいのではないかという話が社内で出ているくらいです。とにかく社会課題を解決していく、そのためにいろんなチャレンジをしてイノベーションで解決していく、そういう会社になっていくと思っています。
中外製薬 企業CM「Innovation Lab/AI創薬」篇 30秒
風口 医薬品の会社というよりも、イノベーション企業としてメッセージやスローガンを考えられたんですね。
宮田 はい、そうです。続いてブランドのポジショニングは、研究開発型の企業は他にもたくさんありイメージが似ているので、どうやって差別化を図るか、当時は徹底的に強みを洗い出す作業をしました。
それによって、当社では「抗体医薬品」、「ガンゲノム医療」、「AI創薬」などのファクトが強みとして出てきたので、それを少しずつ取り上げてテレビCMなどを通じて展開しているところです。
ブランドイメージは挑戦的に打ち出していて、その中でも社会課題の解決に対して興味や関心をもつ生活者にフォーカスして展開しています。
風口 中外製薬さんはDXブランディングもされていて、社内外に発信もされていますよね。
宮田 そうですね。DX人財をターゲットに勉強会やイベントなどを行うことで社内外の人にも集まっていただき、みんなで議論するような取り組みに力を入れています。noteやYouTubeなどを活用し社外にも発信することで、当社のDXでのゴールや姿勢を浸透するようにしています。
風口 それはDX人材の採用に貢献するような取り組みだと思いますが、指標としてDX人材の獲得もブランディング活動のKPIに入っているのでしょうか。
宮田 はい、非常に重要なKPIとして入れています。中外製薬はもともと新卒から入った人がすごく多かったのですが、今はDX部門の約7割が中途採用です。
風口 ヤンマーホールディングスさんの「ヤン坊マー坊」のリニューアルも、若年層にアプローチし、人材採用に繋げていくことも目的としてあるのでしょうか。
三田村 採用ももちろん入っています。特に当社の場合は女性の採用数を増やすことも数値目標で掲げています。
※後編 ブランド価値をビジネス成長に結びつける、B2Bマーケターに求められる役割とは?【B2Bアジェンダ2024レポート】 に続く
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