ライジングアジェンダ2024レポート #03
資生堂 清水明子氏が語る、マーケターとして必要な「感性」の磨き方【ライジングアジェンダ2024レポート】
2025/03/27
感性を磨くために「本物」に触れ続ける
廣澤 それは純粋な論理だけで導き出された判断ではないですよね。まさに、そこに清水さんの「感性」が働いていると思います。そもそも清水さんは「感性」をどのようなものだと考えていますか。
清水 「感性」を言語化するのは難しいですが、私たちは日常生活の中でよく「比較級」で物事を語ります。その中で絶対的な価値を見出し、判断できる力こそが「感性」ではないでしょうか。つまり、物事を俯瞰的に見て、絶対的な価値を見極める力です。
マーケターにとって重要なのは、自分の個人的な好みではなく、「ブランド」として客観的に判断することです。それは「自分が好きかどうか」ではなく、ブランドの本質に照らして判断する必要があります。

廣澤 つまり、客観的な視点と俯瞰的な視点から本質を見極める力が「感性」だということですね。では、その感性をビジネスでどのように活かしていけばよいのでしょうか。
清水 データや論理から導き出せるのは、すべて過去の事実です。何が起きて、何が流行り、お客さまがどう反応したか。しかし、マーケターが生み出すべきは未来です。過去の延長線上にはない、飛躍的なジャンプが必要な瞬間があります。
そこで重要になるのが、ブランドの競争優位性の源泉を見極める力、そして比較級ではない絶対的な価値を生み出す感性なのです。
廣澤 「データドリブン」という言葉が聞かれる昨今、データから明らかになった論理だけでビジネスを進めようとする傾向があります。論理は日々の訓練で伸ばすことができますが、感性やセンスは、そう単純ではありません。個人として感性を養うには、どのような経験が必要でしょうか。
清水 感性は一朝一夕に身につくものではありませんよね。資生堂の創業者一族である前会長の福原義春の言葉に、「本物に触れ続けよ」というものがあります。私自身を振り返っても、人生の中でどれだけ良いものや一流のものに触れ続けてきたかが、感性を磨く上で重要だと感じています。

そうした経験を蓄積し続けることで、本物ではないものや不自然なものを見分けられるようになっていきます。
廣澤 それは経験を極限まで研ぎ澄ませた結果、得られる感性だといえますね。
※後編 「ブランドは細部に宿る」資生堂 清水明子氏が明かす、徹底したこだわり【ライジングアジェンダ2024レポート】 に続く
※清水明子氏は「Agenda note」が主催する次世代を担う若手マーケターの育成の場となるアクセラレータープログラム「Rising Academy powered by ノバセル (ライジングアカデミー)」で2025年4月10日、「ブランディング」をテーマに講義を実施予定。
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