ダイレクトアジェンダ特別企画 #04
ビームスの独自「EC戦略」は、どのように誕生したのか【対談 オイシックス・ラ・大地 西井敏恭、ビームス EC 矢嶋正明】
2018/12/06
リアル店舗とECの連携をどう進めたのか
西井 ECサイトの売上は、全体の何割を占めていますか。
矢嶋 現在は、2割は超えています。
西井 そんなに高いのですね。
矢嶋 2005年にZOZOTOWNでEC販売をスタートし、そこから徐々に売上を伸ばしていきました。
西井 2005年にスタートさせた当初、社内の反応はいかがでしたか。
矢嶋 僕は「ECは面白くなるぞ!」と期待していましたが、社内は「インターネットで洋服は売れない」という反応がほとんどでした。それは当社が特別だったわけでなく、当時は業界の常識だったように思います。
西井 その後、ECに力を入れていこうという声が起き始めるのは、いつ頃ですか。
矢嶋 リーマンショックの後ぐらいからですね。ファッション業界全体の売上が伸び悩む時期にも、ECサイトの売上が伸び続けていました。
ネットに売上を取られたという考え方も一部にはありましたが、店頭でECサイトの商品ページをケータイでスタッフに見せて商品を探すお客さまが増えたことで、ECは集客用のメディアだという理解が進んだように思います。2009年に、自社のECサイトを立ち上げました。
西井 私も前職の時に似たようなことがありました。ECは店舗のお客さまを取るように感じるかもしれませんが、実際はデータを見てもお客さまのカニバリは起きていなかったし、併用する人のLTVが一番高かったりしていた。LINEを配信するとお店にLINEをみて訪問するお客さまなどが見えるようになって、店舗側からもっとWEBを活用したい、という声ができていったことがありました。ビームスのように、現場のスタッフも含めてリアル店舗とECが連動している姿は、ひとつの理想系だと思います。その方向は、トップダウンによるものだったのですか。
矢嶋 トップダウンもありましたが、それとは別に2010年頃にFacebookやTwitterが普及して、会社としてスタッフにSNS活用を奨励したことも大きかったと思います。スタッフの個性を全面に出していこうというムードが社内で高まっていたのです。
西井 なるほど、会社のカルチャーも関係しているのですね。確かに、ビームスがスタッフはSNS禁止と打ち出したら、ちょっと気持ち悪いですよね(笑)。
矢嶋 そうですね、社内には非常に個性的な人材が集まっています。外部の方からは、「動物園みたい」と言われることも(笑)。でも、全員がひとつのビームス号という船に乗り込んで、同じ方向を見て進んでいるという雰囲気がありますね。
西井 矢嶋さんも店舗スタッフ出身ですよね。
矢嶋 はい。店舗のアルバイト販売員として入社してから正社員になって、2003年から内勤になりました。もともとインターネットに関心を持っていて、当時は「百式」の田口元さんたちが開催していた「無敵会議」(異業種交流イベント)などに参加していましたね。
西井 そう考えると、矢嶋さんの存在がすごく特殊ですよね。僕も2003年からECサイトに関わってきましたが、当時の「無敵会議」などに出ていて、現在もデジタルマーケティングの第一線で活躍している人は少ないと思います。そういう意味では、矢嶋さんも動物園の一員ですね(笑)
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