ダイレクトアジェンダ特別企画
「Amazon Prime Now」がスタートした時、LOHACOが社内で議論したこと【ダイレクトアジェンダ特別企画】
2019/01/07
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Amazonとは異なる、LOHACOが提供する価値
西井 ECサイトの運営にあたり、Amazonを意識せざるを得ないと思います。LOHACOとAmazonの違いは、何でしょうか。お話を聞いていると、やはりLOHACOの生活者起点を貫こうとする姿勢かなと思いました。輿水 そうですね。当社の社長も言っていますが、Amazonとは正面から勝負するつもりはありません。おそらく会社としての考え方が違うと思っています。
以前、最短2時間で商品が届く「Amazon Prime Now」が始まったとき、LOHACO社内でも、どう対応するか議論したことがあります。その結果、行きついたのが配達時に1時間刻みの時間指定ができる「Happy On Time」というサービスでした。当日午前9時までに注文するとその日の午後6時以降、午後5時までに注文すると翌日以降の時間指定が1時間単位で可能というものです。
配達スピードはAmazonほど早くはありません。しかし、お客さま視点に立つとLOHACOが扱う日用品を急いで購入したい人は、近隣の店舗に行くはずです。それよりも例えば、土曜日の午前中指定だと、朝9時から12時までの3時間荷物が届くのを待つ方が嫌だと思うんです。それならば、指定できる配達時間を1時間ごとにして、待つ時間が少ないという価値を提供した方がいいと話し合いました。
輿水 宏哲 氏
アスクル
取締役執行役員 ECマーケティング本部長 1977年生まれ。早稲田大学法学部卒。2000年大学4年在学時にeグループに入社、2001年会社買収によりヤフーに転籍。2006年はてな入社、取締役経営企画担当。2009年グリー入社、執行役員Web Game事業統括本部Platform本部長。2014年アスクル入社、現在に至る。BtoC向けEC「LOHACO」(ロハコ)のECマーケティングを担当。
アスクル
取締役執行役員 ECマーケティング本部長 1977年生まれ。早稲田大学法学部卒。2000年大学4年在学時にeグループに入社、2001年会社買収によりヤフーに転籍。2006年はてな入社、取締役経営企画担当。2009年グリー入社、執行役員Web Game事業統括本部Platform本部長。2014年アスクル入社、現在に至る。BtoC向けEC「LOHACO」(ロハコ)のECマーケティングを担当。
西井 おっしゃる通りだと思います。実はオイシックスも、有機野菜が最短4時間で届く「Amazonフレッシュ」が始まったときに同じ議論をしました。
急に野菜が必要になった方は、「Amazonフレッシュ」や近隣店舗を使っていただければいい。私たちは、注文がはいってから生産者側に収穫を依頼して、その後配送する。つまり注文してから最短で届くのではなくて、収穫から最短で届くのがオイシックスの価値であり、毎週決まった時間にいつも買う野菜をより安心で手軽に購入できるようにして、その購入自体が毎週の楽しみになるようなサービスにしたいという話をしました。それこそ、既存のスーパーマーケットも競合だとは考えていないのです。
西井 敏恭 氏
オイシックス・ラ・大地
執行役員 CMT シンクロ代表取締役。1975年5月福井県生まれ。2年半にわたる世界一周の旅行記を更新したWebサイトが大人気となり、帰国後はEC企業にてWebマーケティングに取り組む傍ら、旅行を続け、訪問した国は100カ国近く。Webマーケティングのプロとして「ad:tech」をはじめ全国で講演多数。ドクターシーラボにてデジタルマーケティングの責任者を務め、独立。国内大手からスタートアップ企業のマーケティングアドバイザーをしながら、オイシックス・ラ・大地では執行役員CMTとしてサブスクリプションモデルのEC戦略を担当している。
オイシックス・ラ・大地
執行役員 CMT シンクロ代表取締役。1975年5月福井県生まれ。2年半にわたる世界一周の旅行記を更新したWebサイトが大人気となり、帰国後はEC企業にてWebマーケティングに取り組む傍ら、旅行を続け、訪問した国は100カ国近く。Webマーケティングのプロとして「ad:tech」をはじめ全国で講演多数。ドクターシーラボにてデジタルマーケティングの責任者を務め、独立。国内大手からスタートアップ企業のマーケティングアドバイザーをしながら、オイシックス・ラ・大地では執行役員CMTとしてサブスクリプションモデルのEC戦略を担当している。
輿水 同感です。日用品の買い物も基本的には「なくなったから、買わなきゃ」という義務的な作業になりがちです。我々もオイシックスと同じように、その時間を少しでも楽しいものにしたいと考えています。
そのため、「セレンディピティ(偶然の出会い)」を演出できるよう、新商品の提案には特に力を入れています。新商品をTOPに出すことはもちろん、もともとカタログを通じてオフィス商品を販売してきた会社だということもあり、写真にもこだわっています。社内からは「200円の日用品の撮影に、いくらかけるんだ」という声もありますが、多くの方にLOHACOがある生活を好きになってもらうためには必要だと思っています。そのお陰もあって、LOHACOで一度リピートしていただいたお客さまは、定期購入に近い形で月に複数回買ってくださるようになっています。
西井 これまでのマーケティングは、新規顧客の獲得が最も大事だと思われてきました。しかし実は、初回購入は自社の商品を試してもらう段階で、リピートこそが利益を生み、マーケティングにとって最も重要だと考えています。
LOHACOの場合は、「LOHACOを使っている自分が好き」「LOHACOのパッケージで部屋がすごく気持ちよくなった」など、LOHACO独自の体験がリピート購入につながっているのでしょう。