ダイレクトアジェンダ特別企画

「ECサイトの商品は、店頭販売に最適化されたパッケージである必要はない」アスクル 輿水宏哲、オイシックス・ラ・大地 西井敏恭【対談】

 ダイレクトマーケティングの可能性を探るカンファレンス「ダイレクトアジェンダ(1月29日から大分・別府開催)」。そのキーノートのモデレーターを務めるオイシックス・ラ・大地 CMTの西井敏恭氏が、登壇者に事前インタビュー。

 バルクオム 代表取締役CEOの野口卓也氏(第1弾)、ビームス EC統括部 部長の矢嶋正明氏(第2弾)に続いて、アスクルでLOHACOの事業戦略を担う、同社 取締役執行役員の輿水宏哲氏に、売上を伸ばしてきた考え方や競争戦略について話を聞いた。
 

最後発ECとして目指したのは第2世代ナンバーワン


西井 まずはアスクルがLOHACOを立ち上げた経緯から、お聞かせいただけますか。

輿水 アスクルは、オフィス向け商材市場をリードしてきた立場ですが、消費者向けでは過去2回ほど挑戦するも、正直うまくいきませんでした。3度目の挑戦にあたり、集客や多彩な決済手段に対応するため、2012年にヤフーと資本提携してLOHACOを立ち上げたのです。

 しかしながら我々は最後発のため、既存のECサイトとは異なる戦い方でなければ勝ち目はありません。そこで掲げたのが「第2世代ECナンバーワン」。例えば、それまでのECサイトでは嗜好品の単品購入が多く、複数の商品を同時に注文する人は少ない。そこで我々は、ECをもっと日常に近づけて、普段使いする日用品をスマホで手軽に購入してもえるサービスを目指したのです。
輿水 宏哲 氏
アスクル
取締役執行役員 ECマーケティング本部長
1977年生まれ。早稲田大学法学部卒。2000年大学4年在学時にeグループに入社、2001年会社買収によりヤフーに転籍。2006年はてな入社、取締役経営企画担当。2009年グリー入社、執行役員Web Game事業統括本部Platform本部長。2014年アスクル入社、現在に至る。BtoC向けEC「LOHACO」(ロハコ)のECマーケティングを担当。

西井 なるほど。ポジションを変えたわけですね。

輿水 はい。サービス構築で重視したのは、日用品を扱うためスピーディな翌日配送や1900円以上という安価から送料無料にすること(※1月10日より変更)。また、水や生活紙といった重くてかさばるものは、宅配ボックスから自宅へ運ぶのも大変ですので、玄関先まで確実にお届けする時間帯指定の無料化にもこだわりました。

西井 現在のLOHACO利用者は、どのような方ですか。

輿水 仕事や育児に忙しい女性がターゲットです。狙い通り、働きながら子育てをしている女性に多くご利用いただいています。エリアで言えば、都市部が中心です。地方の方は、休日に車でショッピングモールに行ってまとめ買いをする人が多いのですが、それができない都市部の方のライフスタイルにLOHACOが合っているようです。

 昨年は火災の影響がありましたが、サービス開始から5 年で売上高417 億円(2018 年5 月期)を達成し、2018年8 月には累計のお客様数が500 万人を超えるなどご支持いただいています。さらに伸ばしたいと思っていますが、順調に成長しています。
 
LOHACO(ロハコ)。“くらしをかるくする”をコンセプトに、飲料・食品、キッチン用品から医薬品、コスメなどの日用品から生活家電まで販売している。
 

今後、小売とメーカーの垣根はなくなっていく

西井 近年は小売業がPB(プライベートブランド)を強化するなど、メーカーに近い機能を持ち始めています。輿水さんは、現在の状況をどのように見ていますか。
西井 敏恭 氏
オイシックス・ラ・大地
執行役員 CMT
シンクロ代表取締役。1975年5月福井県生まれ。2年半にわたる世界一周の旅行記を更新したWebサイトが大人気となり、帰国後はEC企業にてWebマーケティングに取り組む傍ら、旅行を続け、訪問した国は100カ国近く。Webマーケティングのプロとして「ad:tech」をはじめ全国で講演多数。ドクターシーラボにてデジタルマーケティングの責任者を務め、独立。国内大手からスタートアップ企業のマーケティングアドバイザーをしながら、オイシックス・ラ・大地では執行役員CMTとしてサブスクリプションモデルのEC戦略を担当している。

輿水 たしかにメーカーと小売業の垣根は、なくなりつつありますね。さらに今年は、中国を訪問する企画が複数回あり、「ニューリテール」と呼ばれるオフラインとオンラインが融合した業態に触れることで、チャネルの融合も進んでいると思います。

 また現在、日用品は多くの人がリアル店舗で購入していますが、それがECサイトで購入されるようになると、商品パッケージや梱包単位も変わります。おそらく我々の会社のあり方も変わるだろうと思っています。

西井 今後は、小売業は小売販売だけ、メーカーは商品生産だけという時代ではなくなっていくのでしょう。私たちオイシックスも野菜の小売として創業しましたが、現在では自社開発のミールキット「KitOisix」が好評です。



輿水 私も週3で使用しています(笑)。

西井 ありがとうございます。「KitOisix」を販売する中で、お客さまからいただいたフィードバックをすぐに商品開発に生かすため、商品開発の機能を持つことが重要でした。直にお客さまとつながり、そこで得た声を開発に生かしたからこそ、「KitOisix」がヒットしたと思います。
 
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