CESレポート #02

P&G初出展に感銘。豊作だった「CES2019」から考察するコミュニケーションの近未来【電通 森直樹】

前回の記事:
ここを押さえよう!CES2019チェックポイント【電通 森直樹】

CES2019は久しぶりの豊作だった

 今年も、1月8日~11日に米国・ラスベガスで、世界最大規模のテクノロジーカンファレンスであるCESが開催された。筆者の参加は8回目となる。毎年、何か新しい発見を求めて参加していたのだが、今年は久しぶりの豊作だったと考えている。

 テクノロジーでは、AIやロボティクス関係が本格的に市場投入され、製品やサービスへ組み込まれてきた。そして、すでに米携帯大手のベライゾンは、5Gを米国一部地域でローンチしていた。今年は「5G元年」と言えよう。さらに、自動車関連はコネクテッドカーや自動運転といった技術要素から「MaaS(Mobility as a Service)」へと移り、サービスやエコシステムが注目されはじめた。まさに、テクノロジーそのものの進展、それに伴うビジネスエコシステムやライフスタイルが大きく変化している転換点にあると言ってよいだろう。
 

P&GがCESへ初出展の衝撃

 今年のCESに参加して、筆者が最も衝撃と感銘を受けたのは、FMCG業界の雄であるP&Gが初出展し、記者発表会を開催したことだ。彼らは、CESの文字を取って自らの出展を“P&G Consumer Experience Show”と宣言、テクノロジーと顧客インサイトによる”体験“をテーマにしていると発表した。P&GのCDO(Chief Design Officer)であるPhil Duncan氏は「我々は181年もの消費者向けイノベーションの歴史を誇り、イノベーションに関して新参者ではない」とCESに出展する意義について自信を見せていた。



 彼らは、P&G Life Labを記者発表会で紹介。都市化、高齢化、資源の枯渇といった社会的・環境的な問題の影響に対峙するテクノロジーの進展とパワーが、消費者体験を変化させること。そして、その消費者体験の変革が、事業機会であり、イノベーションの源だという。彼らは、Disrupt(破壊)を積極的にリードすることで、今日の市場で成功できると主張していた。
 

What if? (もし~なら)をテーマに挑戦を続ける。

 記者発表会で、P&G Chief Research, Development and Innovation OfficerのKathy Fish氏は、テクノロジーを消費者インサイトと組み合わせることで、イノベーションを提供可能にしているという。それは、とても重要な質問「What if? (もし~なら)」から始まるというのだ。



 その例として、「もし、理容室での蒸しタオルを使った髭剃りの体験が毎日できるとしたら?それも、理容師と蒸しタオルなしで」から、温かく心地よい髭剃りを瞬時に提供するHeater Razor (ヒーター剃刀)を開発。

 「もし、1枚の自撮りから、パーソナライズされた肌の美容方法が得られるとしたら?」から、AIを使用した、美容業界初の機械学習アプリケーションOlay スキンアドバイザーを提供。

 「もし、歯ブラシから、パーソナライズされた歯科のオーラル・ケアを受けられるとしたら?」から、AIによってリアルタイムに正確なブラッシングアドバイスを提供するOral B genius Xを開発。

 「もし、この小さなコンパウンド(化合物)が、環境を助けることができるとしたら?」から、80%の重さ、70%のスペース、75%の排気物質をなくすことが可能な、D3というまったく新しいコンパウンドを開発。洗剤やシャンプーなどの製品の配達や保管に革命をもたらすという。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録