B2Bアジェンダ2024レポート #02

進化するB2Bマーケターの役割、データと肌感の融合でビジネスインパクトを最大化する【B2Bアジェンダ2024レポート】

前回の記事:
新時代のB2Bマーケターの役割とアクションを徹底議論【B2Bアジェンダ2024レポート】
 国内最大級のB2B特化型マーケティングカンファレンス「B2Bアジェンダ2024(主催:ナノベーション)」が 9月12日と13日に鹿児島(鹿児島センテラス天文館)で開催された。

 キーノートでは「ビジネスインパクトを最大化する新時代のB2Bマーケターの役割とアクション」と題して、キーエンス データアナリティクス事業グループ マネージャーの柘植朋紘氏、NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 事業推進部 マーケティングインテグレーション推進室長の徳田泰幸氏、三井住友カード ビジネスマーケティング統括部 シニアマネージャーの鈴木研吾氏がスピーカーとして登壇。モデレーターを日本電気 マーケティング&アライアンス推進部門 マーケティングストラテジー&オペレーションズ統括部 マーケティングシニアディレクターの東海林直子氏が務めた。

 前編では、B2Bマーケターがビジネスインパクトを出すための役割や必要なアクションについて、営業の売上最大化や注力領域を決めること、横串の活動が重要なことなどが語られた。後編では、テクノロジーを活用して効果を最大化するために重要なポイントは何かについて詳しく紹介する。
 

「データ」と「肌感」のバランスの大切さ


東海林 先ほど、みなさんデータはすでに活用されていることが分かりましたが、テクノロジーの活用についても聞いていきます。

徳田 魅力的でキャッチーな商品やサービスをつくったと思っても、実際には購買に至らないことがあります。そうした状況を踏まえて、戦略を考えた場合、できるだけ早く結果を知って、できるだけ早く対策を打つことが必要だと思います。
 
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 事業推進部 マーケティングインテグレーション推進室長
徳田 泰幸 氏

 法人営業を15年経験後、新規開拓営業組織の事業戦略担当を経て、2019年にイネーブルメント機能として社内組織であるData.Camp®を立ち上げる。2020年から3,500名の大手法人営業部隊のセールス・マーケティング戦略を担当し、2024年7月からはお客様のデータドリブンセールス・マーケティング領域の推進に対するご支援・コンサルティング業務に従事。国内企業全体のイネーブルメントの発展と底上げを目指し、関連イベントにおいても多数講演。著書:『セールス・イネーブルメントの教科書』(イーストプレス)

もしかしたらCX(顧客体験価値)とEX(従業員体験価値)の観点で言うと、顧客の反応をずっと見ていかないといけません。提案して顧客に刺さっている、刺さっていないことを、いち早くキャッチアップしなければいけないからこそ、やはりデータやテクノロジーが必要になると感じています。それが我々の原動力の源になっています。

あと、データをシステムありきでつくり始めるとうまくいきません。そのシステムをつくるための目的が必要です。そこを徹底することが重要だと思います。

東海林 それもマーケティングの役割になってきているのでしょうね。システムとして導入されたものを当たり前に使うのではなく、何のために取り組むのかという目的が重要ですね。

徳田 従来のマーケティングの「誰に(WHO)」「何を(WHAT)」「どうやって(HOW)」は中心にありつつ、顧客からのフィードバックシステムをどのぐらいつくれるのかが非常に重要になってきます。ここを意識した上で、データをどのようにつくっていくかを重要視していますね。

柘植 
キーエンスではデジタルで取れるデータはもちろん重視しますが、データでは取得できないようなお客さまの表情の変化や、営業が何となく感じたことなどの「肌感の情報」も、データと同じぐらい非常に大事にしています。データ化できる情報は森羅万象の一部でしかないので、データ化が可能なものはデータで確実に捉え、それ以外のものも肌感でしっかりと捉え、ビジネスに活かそうという考え方です。
 
キーエンス データアナリティクス事業グループ マネージャー
柘植 朋紘 氏

 新卒でキーエンスに入社後、コンサルティングセールス・人事採用を経て、データをフル活用したマーケティング・営業推進・販促活動に10年以上、従事。現在は、キーエンスの高収益を支える「データ活用ノウハウ」を基に開発した『データ分析プラットフォームKI』を幅広く展開中。各種イベントなどでの講演多数。

東海林 デジタルだけではなく、アナログの「肌感」も大事にしているのですね。鈴木さんはいかがですか。

鈴木 柘植さんのおっしゃるデータと肌感のバランスには、私もものすごく同意です。数字はたしかに世界共通の言語で客観的でぶれることがありませんが、数字だけを見ていると直感的に感じる変化や、「お客さんがこう思っているのではないか」という微妙なニュアンスが欠落してしまいます。
 
三井住友カード ビジネスマーケティング統括部 シニアマネージャー
鈴木 研吾 氏

 BtoBのセールス&マーケに一貫して従事。
自動車業界でCS営業を経験後IT業界に転籍、ソリューション営業としてAI・データ・5Gを活用した新事業創出プロジェクトを担当。その後マーケティング部門でトリプルメディア、デジタルマーケティング基盤を担当。
2022年より三井住友カードにてBtoBマーケティング立上げに従事。アジャイル手法のプロジェクトマネジメントによりビジネスキャッシュレスを推進中。
趣味はプロボノ。中高生向け金融経済教育やNPO向けデジタル活用コンサルで教壇に立つ。

実際、数字だけのダッシュボードを見てもお客様の顔が見えてこず、どんなコミュニケーションをすればいいのかイメージが広がりません。それであれば、インサイドセールスの担当者と10分程度話したほうがはるかに良いアイデアが出ると思います。

顧客のことを知りたいというニーズはマーケターの心の中のベースにあると思います。一方で言語化・数値化することは、共通言語にするのと引き換えにニュアンスを削ぎ落すことです。そのため数字はしっかり見ながら、それをどう解釈してお客様を理解していくかが重要です。解釈と議論を重ねて、最終的にはマーケティングチーム全員で同じ感覚を持つことが大事だと考えています。

東海林 マーケティングの役割やマーケターは、データと肌感の両方が必要でおもしろいですね。
 
日本電気 マーケティング&アライアンス推進部門 マーケティングストラテジー&オペレーションズ統括部 マーケティングシニアディレクター
東海林 直子 氏

 NEC入社後、通信ネットワーク系の代理店販売業務を担当しユーザーコミュニティを立ち上げ、その後、法人向けインターネットサービス(BIGLOBEビジネス)で新サービス企画および 営業支援を担当。2004年からは市場リレーション推進部門にて メールマーケティングをベースとした 全社マーケティング活動を開始。
現在は、IMC本部でオウンドメディア、外部メディア、 リアルイベント等の様々なタッチポイントと MA、SFA、インサイドセールスを連動させたマーケティング施策実行を統括。

徳田 我々も定性的なデータの収集に力をいれており、その中で全営業担当が遠慮なく意見を言える環境をつくっています。たとえば、「こんな商品・サービスは売れないよ」という辛辣なフィードバックを求めるためにアンケートを実施しています。これが非常に重要で、メタバースが流行っているから実際に取り組もうとしたものの、「実際には使い道がわからない」といったリアルの声が集まるのです。

こうした声は、やはり直接聞いてみないとわからないですし、それを事業に生かすかどうかの判断も「肌感」に基づいて行われます。

東海林 「データ」と「肌感」のバランスが重要だということですね。

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