令和女子の解体新書 #03

メルカリが「買う基準」を変えた、コスパ2.0時代のリセールバリューの威力

前回の記事:
消えた失恋ソング。令和の若者たちが「失恋離れ」している理由

メルカリなどフリマアプリが流行する背景

 連載の第一回で述べた4つの切り口「マインド・価値観」「消費トレンド」「カルチャー」「社会課題」のうち、今回は「消費トレンド」の視点からアプローチしていきたい。

 筆者は電通でSNSを中心とした新しいコミュニケーションのあり方について研究・提言する仕事をしているが、ユーザー同士のつながりはメディア・コミュニケーションの領域にとどまらず、モノの商流の変化にも結実している。

 いわばコマースが「B to C」だけでなく「C to C」の領域にも拡張している。そして、そのプラットフォームとして筆頭に挙がるのがメルカリだと言える。まず利用実態についてのファクトを確認してみよう。

 『Eコマース&アプリコマース月次定点調査(2019年2月度)』(調査元:ジャストシステム、対象:17歳~69歳の男女1100人)によれば、個人間商取引(CtoCサービス)を利用した経験がある人のうち、現在利用中のサービスとしてメルカリを挙げた人は47.1%で、ヤフオク!の46.2%を上回った。

 さらに、メルカリの年代別利用率を見てみると、10代(70.0%)、20代(62.3%)、30代(51.4%)、40代(40.9%)、50代(32.1%)、60代(21.2%)。一方で、ヤフオク!の利用率は10代(26.7%)、20代(31.9%)、30代(47.3%)であることから、若年層ほど「メルカリ」の利用率が高いことが明らかだ。

 メルカリユーザーの定着率が顕著なこともよく言及されるポイントで、一度使い始めた人が止めない、ということも利用率の高さにつながっているだろう。また、メルペイ(メルカリによるペイメントサービス)と各種サービスとの連携が進んでいるということからも、今後メルカリがコマースのプラットフォームとして存在感を増していく趨勢が見えてくる。



 メルカリはまさにスマートフォン時代の申し子で、写真を撮ってすぐ出品できてしまうという意味で、ユーザーが要するステップ数が大幅に減った。つまり、出品がカンタンになって、ハードルが大きく下がったことで、モノがたくさん集まりやすくなり、それを買いたい人たちが集まってくる、という良いサイクルが回るようになったのだ。

 これは、例えば写真を撮ってシェアしやすい環境ができたことでインスタグラムのようなビジュアルコミュニケーション系のSNSが発展したのと同様で、ユーザー中心の場(プラットフォーム)の動向を見極めるうえで欠かせない視点だ。

 筆者は2017年10月に『シェアしたがる心理~SNSの情報環境を読み解く7つの視点~』という単著を上梓したが、これもメルカリでかなり出品されている。書籍など多くの人が「必要なときに買って売る」が C to Cで繰り返されるため、メルカリ内で商品がグルグルと回っている。折らない、書き込まない、汚さない…と「メルカリで高く売ること」まで考えて、モノをつかうようになっている人もいるほど。出品をして、売れて発送する前に読むというライフハック術さえある。

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