マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか #06

行動が先で、言語化は後。マーケターが見過ごしがちな事実

 

動物とは「動く生物」であって、「話す生物」ではない


 とんでもないマーケターの話しはともあれ、実際の問題として、どこに注意して対処すればよいでしょうか。

 調査レベルでは、消費者からデータを取るなら、まずは信頼性と妥当性が確認された正しい方法で、かつサンプリングなども基本を押さえて正しく収集することが大切でしょう。妥当性とは、つまり結果がきちんと実際の市場データとリンクしているのかということです。

 また、それ以外の膨大なデータと組み合わせて(現時点で可能な範囲での)最適解を導き出すためには、数理モデルによるアプローチも有効でしょう。今後もデータの蓄積が進み、ますますその重要性が増していくと考えられます。

 これらに加えて、私自身の興味としては、やはり人間そのものの理解から、調査やモデルで出てきたことの背後にある「消費者の心理過程」に迫りたいという思いがあります。

 では、脳にとって言語はどういう存在なのでしょうか。

 人間の脳の「原型」ができたのは、約5億2千万年も前に遡り、カンブリア紀のニョロっと細長い生き物(Haikouichthys)が始まりとされています。一方、言語の誕生時期は諸説ありますが、せいぜい10万年ほど前というのが大方の見方です。



 つまり、脳の成り立ちから言うと、「口から先」どころか、進化の過程のほぼすべて(99%以上)の期間は、口無し(言語無し)だったのです。非言語で身体があるという状態です。

 そこでの脳は、外界からの入力情報を処理して適切な運動を起こす「入出力変換装置」、つまり入力情報に対して近づくべきか避けるべきか、生存に直接結びつく反応を生み出す装置だったはずです。

 文字通り、「動く生物」で動物です。こうした古くからある脳を使いまわしつつ、新たに追加した部位で補いながら働いているのが、現在の人間の脳なのです。進化は、スクラップアンドビルド方式では起こりません。
 

アクションに対して理由付けがなされる


 ここで、以前のコラムでも使ったお気に入りのチャートをもう一度使わせてください。



 いつもは、AとBのうち、Bのほうが真実に近いと話をして、その中でも最初に感情(FEEL)が来る点を強調しています。しかし、ここではTHINKの前にACTが挟まっていることに注目してください。

 先ほど、脳の根本は入出力変換装置だとお話ししました。その出力がこの図ではACTに当たります。そして、そのACTに対して言語によるラベル付けがなされるという流れです。

 だから、言語化された情報は、行動や性格特性の理由ではなく結果であることが多くなるわけです。でも、それが直感に反するから、因果関係の間違いが起こってしまうんです。

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