行動経済学で理解するマーケティング最新事情 #10
社会人になっても学び続ける「習慣」は、どうすればできる? 行動経済学から解明した2つの方法
行動経済学から読み解く「学び」
4月に入り、新年度を迎えて新たなスタートラインに立つ人が多い季節となりました。人事異動でマーケティングの部門に所属された方々、新入社員としてマーケティングに携わる職場に配属された方々が「マーケティングを学ぼう!」と気合を入れている姿が目に浮かびます。
意気込みは大切です。まずは皆さんが目にしている「Agenda Note」のメールマガジンを登録して様々なコンテンツに触れると良いでしょう。私とも月に一回、お目にかかる機会があるはずです。私自身、一生懸命に学ぶ方々の姿を見て、自らの背筋が伸びる思いです。
私の場合を振り返ってみると、2007年にアドテクツールベンダーに新入社員として入社して以降、右も左も分からない中で、諸先輩方の活躍を見ながら「自分も頑張っていこう」と一心不乱に勉強してきました。幸いにしてマーケティング界隈は、メディアなどで露出されている方々が多くおられます。そうした方の背中を比較的、見やすい業界ではないでしょうか。
ただし、ヒップホップユニットのCreepy Nutsさん風に表現すれば「上も下もパンパン」です。努力して±0の現状維持、歩みを怠れば後退あるのみ。自己研鑽が当たり前の業界でもあります。そこで今回はいつもと主旨を少し変えて「学び」について行動経済学の観点で読み解きます。
「頑張る」という意思は長く続かない
マーケティングに限らず、何かをいちから学ぼうとすると、まずは「学習計画」を立てようとする人が多いのではないでしょうか。中学・高校で培われた癖かもしれませんが、「アレとコレを学べば、目標達成」というのは分かりやすい計画ではあります。
ただし、なかなか計画通りに進まず、途中で挫折してしまう人も多いでしょう。ダイエット計画や筋トレ計画を立てても長続きしないのと同じです。ちなみに、学校は「強制力」と「自分のキャリアが傷付くかもしれない恐怖」が付いて回るので、計画通りに進むことが多いです。
なぜ計画は頓挫するのか。人間は、今すぐリターンが得られないものに投資して大きな利益を得るより、今すぐリターンが得られるものに投資して小さな利益を得る傾向にあるからです。現在の楽しみを優先し、計画していた行動を先延ばしにしてしまう傾向を「現在バイアス」と言います。
A:今すぐ1万円がもらえる
B:1週間後に1万100円がもらえる
B:1週間後に1万100円がもらえる
この2つの選択肢が提示されると、Aを選ぶ人が多いでしょう。Bの場合、1週間で金利1%、単利で考えても年利換算52%ですから“超絶お得”にも関わらずです。
C:1年後に1万円がもらえる
D:1年と1週間後に1万100円がもらえる
D:1年と1週間後に1万100円がもらえる
この2つの選択肢が提示されると、Dを選ぶ人が多いでしょう。条件面は先ほどと全く一緒で期間が1年間伸びただけなのに、1週間待てる人が大半なのです。それほど「時間軸」は重要なのです。
以上の結果から、現在に近い事柄であれば、メリットが減ったとしても早く利益を得られる選択肢を選ぶ傾向にあると分かります。要は「目先の利益」に転んだとも言えます。
AではなくBを選ぶには、バイアスに惑わされない「強い意思」が必要です。しかし、多くの人が「ダイエットは明日から」と唱え、食器棚の奥深くにプロテインの大容量パックが眠っているように、短期の利益に流れがちで、ダイエット計画や筋トレ計画を完遂するには意思の力では賄えないと筆者は考えます。