SNS・消費行動から見えてくるアラサー女子のココロ #26

ひろゆき氏の切り抜き動画の盛り上がりは、私たちのSNS戦略の見直しを問う

前回の記事:
SNS上の「身近な体験づくり」が次の消費を生む。現代のブランド“愛着”論

 最近、ソーシャルメディアを上手く使った事例として、ひろゆき氏のYouTube動画の拡散方法が取り上げられることが多い。

 先日のLINEリサーチの調査で、若者(15歳~24歳)が信頼するインフルエンサーとして、HIKAKIN氏に次いでひろゆき氏が2位にランクインしたことは、大きな話題にもなった。



 Googleトレンドを参照すると、今年のはじめから検索数が大きく伸びていることがわかる。世の中の注目度が高まっているのだ。

 ひろゆき氏といえば、20代後半以降の年代にとっては「2ちゃんねる創始者」として知っている人が多いのではないだろうか。そして、2ちゃんねると言えば、1990年代後半から2000年代の文化だと理解している人も多いだろう。そこで「今ひろゆき氏の動画が人気なんだよ」という話を聞けば、「どうして今?」と感じる人も多いのではないかと思う。

 その人気の背景にあるのが、ひろゆき氏が定期的に配信しているお悩み相談の動画配信と、その切り抜き動画の拡散だ。
 

ひろゆき氏を新時代のインフルエンサーにした「きりぬき動画」の鮮やかな設計


 ひろゆき氏の動画が人気になった理由として語られているのが、第三者による「まとめ」の効果だ。「論破王」と呼ばれ、2018年には『論破力』という本も出している彼が、悩める人の相談にスパスパと答えていく姿は爽快だ。

 コンテンツの力は間違いなく強い。しかし、それと同時に、再現可能かつ新しい動画の拡散方法として注目されているのが、“第三者が自分の動画を再編集して配信することを許す”というスタイルである。

 YouTubeで「ひろゆき」と検索すると、無数の動画が出てくるが、それのほとんどはひろゆき氏が作成したものではない。ひろゆき氏の動画を切り貼りして独自の動画を作成し、数万回の再生数を稼いでいる人が無数にいるのである。



 多くの場合、そういった切り抜き動画は、元動画の著作権者の許可をとっていない違法なものであることが多いが、ひろゆき氏の一番ユニークな点としては、そうした切り抜き動画が「ひろゆき氏公認」なところにある。

 もちろん、自分の動画を切り抜いて稼いでいる人たちを、ひろゆき氏が黙認しているわけではない(当初は黙認だったそうだが、今は方針を変更している)。YouTubeのContents IDを利用して、切り抜き動画が獲得した広告料の一部が自分にも分配されるように設定しているのである。

 この手法により、ひろゆき氏ひとりだけでつくるよりもはるかに膨大な量の「ひろゆき動画」が誕生し、自身も追加の収益を得ながら、動画の拡散に成功したのである。

 ひとりの視聴者としてYouTubeで動画を見てみると、たしかに一本動画を再生すると無限に関連動画に「ひろゆき動画」が出てくるし、ひろゆき動画の本編の多くは1時間以上、長いと2時間以上あるため見ていられないが、切り抜き動画は数分なのでサクサク見ることができる。私自身も思い返してにると、少し前からTikTokでも切り抜き動画を見かけるようになっていた。

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