トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #01

ファミマ CMO 足立氏が語る、価値共創というレンズでみるマーケティング【Facebook Japan中村淳一氏 新連載】

 

企業コラボで重要なのは、Win-Winであること


中村 次は、企業同士の共創について聞いていきたいと思います。現在、ファミリーマートで、さまざまな企業とコラボレーションしている意図について教えてください。

足立 企業間のコラボレーションを推進している意図は、我々の商品やサービスとのタッチポイントを増やすためです。普段ファミリーマートと接点が少ない人に対して、「ファミリーマートに行く理由」をたくさんつくることを重視していますね。
  
コラボ企業との共創に関して語る足立氏

中村 企業が持っている切り口を通じて、ファミリーマートに興味を持ってもらう機会を増やすという狙いで、話題と信頼という意味では近いのかもしれませんね。

足立 コラボ先の企業から発信してもらえる、話をしてもらえるという点では、信頼につながると思います。もうひとつ、先方にとっては、提供されている商品やサービスに対してより広い認知を獲得できるということがコラボのポイントですね。コンビニは利用者数が非常に多いので、たとえば店頭を使った施策では、それらのコラボ先の企業の商品やサービスに対してすごく高い認知を獲得できたりするんです。コラボレーションするときはお互いにWin-Winな関係になることも重要です。

中村 「共創」と簡単に言っても、実行するのは難しいですよね。足立さんが実行するときに心がけていることはありますか。

足立 とりあえず、挑戦してみるということですね。特に共創や話題化の施策は、テストマーケティングがほぼできません。そのため、コラボするときにそこまで投資が必要ないのであれば、どんどんやってみればいいと思います。実際にやってみないと、お客さまからの反応は分からないですからね。

中村 共創する企業や相手を選ぶコツはありますか。

足立 それは3つあります。ひとつ目は、ある程度の利用者数がいることです。毎日多くのお客さまが来店する我々ファミマにとっては、相手のユーザー数が5万人や10万人だと誤差のようなものなので、少なくとも数百万人単位でなければほとんど我々にメリットがありません。そのため、利用者数は見るようにしています。

2つ目は、お客さまのプロファイルです。我々と遠いプロフィールのお客さまを持たれているコラボ先さまとは、お互いのお客さまにアプローチすることで、新しい層の方々にリーチできます。まあ、お客さまのプロファイルが似ている方が、話題になりやすいんですけどね。

3つ目は、こんな企業とコラボしたら面白いのではないかという実験的な相手を選ぶことです。過去の事例でいうと住友生命さんで、我々は普段「健康」という言葉を前面に出してはいないのですが、実際には健康的な商品を多く販売しているんです。そのため、健康を媒介にしたビジネスやブランド、サービスから認めてもらうことにより、直接の送客もですが、会社のイメージに紐づいていくという効果を狙っています。

中村 面白いですね。共創する企業の巻き込み方もコツがあるんでしょうか。

足立 コラボ企業の巻き込みは、コツがあるのかな…考えたことがないですね(笑)。ただコラボを「話題化」していくという意味では、突っ込みやすい、ついつい突っ込んでしまう、何か言いたくなるという、これを「突っ込まれビリティ」と言っていますが、この「突っ込まれビリティ」が高いコラボだと話題になることが多いんですよ。

「話題化」なので、たとえばツイッターの投稿で考えると、投稿を見ても「ああ、そうなのね」で終わってしまったら、まったく意味がなく話題になりません。そのため、お客さまがリツイートや、コメントなど、何かアクションをしたくなるように内容を考えたり設計するのが、とても重要です。話題になりやすいように、お客さまが思わず突っ込みたくなるような余地を空けておく「突っ込まれビリティ」が話題化には大事だと思います。

中村 なるほど。それは信頼の部分ということでしょうか。

足立 それは、その会社、商品やサービスとして、ある程度の信頼があるということは前提ですよね。

中村 商品やサービス自体に、信頼があるということでしょうか。

足立 はい。たとえば「あなたはどちらが食べたいですか?」という2 or 3択などの施策を、いろいろな会社で取り組んでいますが、どちらも知らないと話題になりませんね。そのため、新製品でどちらを食べたいですかという施策は、ほぼ話題にならないですね。

ファミマの例でいうと、「森永ラムネフラッペ」と「森永ミルクキャラメルフラッペ」や、他社の例でいうと、「きのこの里」と「たけのこの里」という比較キャンペーンは有名です。お客さまは自分のことであれば参加しやすいし、何か言いたくなりますが、まったく知らない新商品が2つ並んでいて、「あなたはどちらが食べたいですか?」と言われても知らないので、突っ込んでくれないんです。

中村 足立さんにとって、「価値共創時代のマーケティング」とは何でしょうか。

足立 先程お話した通り、「誰が言うか」は商品やサービスの信頼性にものすごく影響するわけです。それに加えて、その評判が多くの人に広がっていくことも重要なのは間違いありません。そうであれば、話題にならない、またはお客さまに発信してマーケティングは、今の時代を活かしていないと言えます。

※後編「ファミマ足立氏でも勝率は3割、大事なのは挑戦して経験値を蓄積すること【価値共創時代のマーケティング】」に続く
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