トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #05

若者は「体験」からの逆算で買う。毎月200人に会って見えた最新消費トレンド【SHIBUYA109 lab.所長 長田麻衣氏】

前回の記事:
行動経済学の観点からみる「価値共創」とは? Preferred Networks富永朋信氏が語るオートノミーの重要性
 ソーシャルメディアの普及や発達により、企業からだけでなく、顧客による情報発信や評判形成、双方向のコミュニケーションを踏まえたマーケティング活動が重要になっている。そんな「価値共創」の時代に、マーケターは価値をどう定義し、マーケティングの実務に落とし込んでいくのか。本連載では、Facebook Japan マーケティングサイエンス統括 執行役員の中村淳一氏がトップマーケターにインタビューし、そのヒントや考え方を解き明かしていく。

 第3回は、SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏が登場する。毎月200人の若者(15~24歳)と直接会って生の声を聞き、その情報をもとに自社のマーケティングだけでなく、他社のコンサルティングも手掛ける同氏に最新の消費傾向やヒット商品が生まれるポイントを聞いた。
 

毎月200人の若者の声を聞くSHIBUYA109 lab.


中村 本日は、長田さんが考える「価値共創」についてお聞きしていきます。まずは、長田さんのご経歴と現在の仕事内容から教えてください。

長田 新卒でマーケティング支援会社のネオマーケティングに入社しました。そこで化粧品や食品、玩具メーカーなどの商品開発やブランディング、調査、PRのサポートを3年ほど経験しました。その後、2017年7月にSHIBUYA109エンタテイメント(以下、109エンタテイメント)に入社し、今に至ります。

入社後は、マーケティングチームを構築し、around20(15-24歳)、いわゆるZ世代を中心とした若者の情報を外部にも提供するために「SHIBUYA109 lab.(以下、109ラボ)」を立ち上げました。若者に特化したマーケティング専門機関として、企業や社会と若者をつないで、企業の課題を解決するために活動しています。
  
SHIBUYA109エンタテイメント
SHIBUYA109 lab.所長
長田 麻衣 氏

中村 109ラボでは、若者をどのように定義しているのですか。

長田 SHIBUYA109(以下、109)のターゲットである15~24歳の人たちを若者として定義しています。

中村 では、若者の情報はどのように得ているのでしょうか。

長田 毎月200人の若者に実際に会って生の声を収集しています。109の館内に週末私たちが立ち、来館者に「今、時間ありますか?」と声を掛けてアンケートに答えてもらったり、そこで連絡先を交換して後日グループインタビューをしたりしています。

現在、約1000人の若者とLINEでつながっており、たとえば、アイドル好きの子がどのような消費をしているか、政治に対してどう思っているかなど、109と関係のない話題も幅広くインタビューしています。

中村 非対面と、実際に会って話すアンケート調査では、やはり得られる情報量は違いますか。

長田 全然、違うと思います。たとえば、非対面アンケートで好きなファッションブランドを聞けば、「特になし」という回答が1位になります。でも、ファッションに興味がないのかというと、そうではありません。対面のインタビューで、どのように服を選んでいるのかと深掘りしていくと、「ブランドではなくテイストで選んでいる」と回答が返ってくるんです。

今は量産系や淡色系、Y2Kスタイルなど、いろいろなファッションテイストがあるので、それを表現するために必要なアイテムをさまざまなブランドから選んで揃えています。実際に会って話すと、非対面だけではわからない情報を多く得ることができます。

中村 面白いですね。得た情報をどのように活用していますか。
  
Facebook Japan マーケティングサイエンス統括 執行役員
中村 淳一 氏

長田 大きくは社内向けと社外向けの2軸で活用しています。社内向けは、109のマーケティング活動です。調査結果から毎月トレンドレポートを作成し、その中で人気のブランドをポップアップストアに誘致したり、コラボレーションして期間限定の食を展開する「IMADA KITCHEN(イマダキッチン)」の商品開発のベースにしたりしています。

社外向けは、外部に対するマーケティングコンサルティング事業です。クライアントの業種は非常に幅広く、化粧品やアパレル、アプリなど若者向けの商品やサービスを提供している企業に若者の動向をセミナー形式で話したり、一緒に商品開発をしたり、ユーザビリティ調査をしたりしています。

ほかにも、昔よりも若者の関心が薄れていることに危機感を感じている自動車やテレビ局などの業界からの相談も多くあります。たとえば、自動車の場合、ステータスやブランドとしての自動車の所持に興味はなくても、移動としての体験は重視しています。そこで、自動車を通してどのような体験を提供できるのかを考えて提案したこともありました。

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