トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #06

現代のマーケターが知るべき若者の消費傾向、キーワードは「共創」「参加」「体験」「界隈」【SHIBUYA109 lab.所長 長田麻衣氏】

前回の記事:
若者は「体験」からの逆算で買う。毎月200人に会って見えた最新消費トレンド【SHIBUYA109 lab.所長 長田麻衣氏】
 ソーシャルメディアの普及や発達により、企業からだけでなく、顧客による情報発信や評判形成、双方向のコミュニケーションを踏まえたマーケティング活動が重要になっている。そんな「価値共創」の時代に、マーケターは価値をどう定義し、マーケティングの実務に落とし込んでいくのか。本連載では、Facebook Japan マーケティングサイエンス統括 執行役員の中村淳一氏がトップマーケターにインタビューし、そのヒントや考え方を解き明かしていく。

第3回は、SHIBUYA109 lab.所長の長田麻衣氏が登場する。前編では、毎月200人の若者(15~24歳)と直接会って生の声を聞き、その情報をもとに自社のマーケティングだけでなく、他社のコンサルティングも手掛ける同氏が最新の消費傾向やヒット商品が生まれるポイントについて紹介した。後編では、マスが効かなくなった今、マーケターが若者をターゲットとするときのポイントやクチコミ、SNS投稿のコメントを重要視する事実、企業のSNS活用と長田さんが考える「価値共創」について詳しく聞いた。
 

マスに効果が見込めない時代のマーケティング


中村 マーケターが、若者(SHIBUYA109のターゲットである、around20の15~24歳)に向けたマーケティングを行うときに考えるべきポイントはありますか。

長田 やはり「マス」が効かなくなっているということですね。今は“界隈(かいわい)” という特定の緩いコミュニティからトレンドが広がっていくので、小さな界隈に企業が参加して、一緒に盛り上げていき、じわじわとマスをつくっていく方法を考える必要があります。
  
SHIBUYA109エンタテイメント
SHIBUYA109 lab.所長
長田 麻衣 氏

中村 企業に対して、どのようなアドバイスをされていますか。

長田 毎月200人の若者に会って生の声を収集しているので、私たちはいろいろな界隈の傾向に知見を持っています。それをもとに商品やサービスがどの界隈にフィットするか、そこに合うプロモーションがどのようなものかを一緒に考えましょうと話しています。

中村 その企業に合う界隈を定義して、選ぶところから始まるということですか。

長田 はい。SHIBUYA109(以下、109)のマーケティングでも同じですが、ファッションでは好きな世界観で界隈がつくられているので、私たちはその主要な界隈ごとに社内でInstagramのアカウントをつくり、各界隈の子が見ているタイムラインを再現できるようにしています。

そうすると、それぞれの界隈の子が撮影する場所やそこでのコーディネート、画像加工の仕方、表示されがちな広告といった傾向が見えてくるんです。それを参考に、各界隈の子に向けた施策を考えていきます。

中村 ほかに、マーケティングをする上でのキーポイントはありますか。
  
Facebook Japan マーケティングサイエンス統括 執行役員
中村 淳一 氏

長田 今回の対談テーマにもありますが、やはり「共創」は非常に重要で、私たちもクライアントに共創プロジェクトを提案することが多くあります。単に若者にインタビューして商品やサービスをつくるというよりも、同じ子に意図から理解してもらい、一緒に考えてもらったほうが早いですし、ズレがないと思います。

中村 そのアイデアが固まったら、次に何をされるんですか。

長田 109館内のプロモーション施策の企画であれば、アイデアが固まったら、告知の制作やその場所づくりに入ります。

中村 告知はどのようにしているのですか。

長田 SNSが中心ですね。109の公式として運営しているInstagramやTwitterなどで発信します。広告はせず、109を好きな子がアカウントをフォローしてくれているので、そこで告知や投稿すれば集まってくれるという構図です。

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