トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #07

熱烈ファンの多い『機動戦士ガンダム』から読み解く、マーケティングに価値共創が重要な理由【クー・マーケティング・カンパニー 音部大輔氏】

 

消費者が価値と認識したときに「価値」となる


中村 音部さんの中では、価値共創はどのように定義していますか。
 

音部 そもそも「価値が何か」を私の中でまだ定義していないので、価値共創の定義も明確ではありません。ただ、マーケティングの領域における価値は、「消費者が体感して価値だと認識できて初めて価値である」と理解しています。

厳密に言えば、価値はモノやサービスにあらかじめ内包されていないのです。たとえば、1万円の商品やサービスは、その金額分の体験を提供できる可能性を十分に持っていますが、実際にその価値を享受できるかどうかは消費者次第です。つまり、「as is(商品やサービスそのものの状態)」に価値があるわけではないのです。そういう意味では、価値はベネフィットに近いと思っていますね。

中村 価値は、商品やサービスを使っている最中に発生しているということですね。そして、ブランドが想定していないことも含め、消費者側がユースケースをつくっている状態が共創なんでしょうか。

音部 正直、共創をどう定義するかは、まだふんわりしている部分があります。ただ、消費者とブランドが一緒につくる共創もあれば、消費者同士でつくる共創もあると思います。ビールは1人で飲んでもおいしいけれど、誰かと一緒に飲むからこそ味わえるおいしさもありますよね。この価値は、一緒に飲む人がいなければつくられないわけです。

中村 価値共創はまだ明確に定義されていないかもしれませんが、マーケティングにこの概念を取り入れる場合、どこから始めるといいでしょうか。

音部 最初のステップは、ユーザー理解です。どのような仕組みでユーザーがベネフィットを感じるのかを深く理解することから始めましょう。 例えば、ある商品に10万人のユーザーがいるとします。次に獲得目標とする1万人のユーザーは、まだその商品を使っていない人々の中にいます。ただし、現在の10万人のユーザーと新しいユーザーは似た特徴を持つ可能性があります。次の1万人のユーザーを獲得するためには、まず現在のユーザーのベネフィットを正確に把握しておく必要があります。これが第一歩だと思います。


※後編「現代に葛飾北斎が降り立ったら通用する? マーケターが長く活躍するための唯一の道【クー・マーケティング・カンパニー 代表 音部大輔氏】」に続く
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