最先端のマーケティング手法を探る~「VTuber」という新たなマーケティングの可能性~ #02

言語と国境を越え、世界へ羽ばたく「VTuber」。そのグローバルな戦略を紐解く【カバー 代表取締役社長CEO 谷郷元昭】

前回の記事:
見逃せないチャンス、市場規模1兆円まで広がると予測「VTuberビジネス」の衝撃的な実態
 現在、VTuber市場は急速に拡大しており、2022年には520億円だった市場規模が、2023年に800億円に達する見込み(※矢野経済研究所調べ)である。ただし、これは日本国内市場のみの見立てであり、海外市場を含めると、2030年までには約1兆円規模に成長すると予測されている(※グローバルインフォメーション調べ)。この新しい領域である「VTuber」というビジネスチャンスを、現代のマーケターは見過ごすわけにはいけない。

 そこで本連載では、世界中から人気を集めるVTuberグループ「ホロライブプロダクション」の創業者であり、自らもYAGOO(ヤゴー)の愛称でVTuberのファンから知られているカバー 代表取締役社長CEOの谷郷元昭氏がVTuberのマーケティングにおける価値を伝える。同氏は、2022年にForbes JAPANが発表した「日本の起業家ランキング2023」で第3位にランクインするなど、経営者としても注目されている。

 第1回では、社会的認知が進んできた「VTuber」という現象に焦点を当て、急拡大する市場におけるビジネス戦略について解説した。第2回は、VTuberタレントがグローバル市場で飛躍している背景とその戦略について詳しく紹介する。
 

リアルでもオンラインでも活動範囲を広げ続けるVTuber


 まず、VTuberが活動するコンテンツの種類を紹介しましょう。VTuberの活動は、「日常の活動」と「記念日的な活動」の2つに大きく分類できます。

「日常の活動」は、大きく分けて3つの配信に分かれます。1つ目は「雑談配信」です。タレント自身の好きなコンテンツや趣味、日常会話をする配信です。

 2つ目は「ゲーム実況」です。ヒットしているゲームは国内外問わずあまり変わらないので、「このタレントはゲームが上手いな」「あ、懐かしいゲームの実況配信している」という共感は、世界中の人が同じように感じられるという特徴があります。

 そして3つ目が「歌の配信」です。雑談は言語に依存してしまいますが、歌やゲーム実況であれば言語がわからなくても多くの人に伝わるので、グローバル市場でも受け入れられるのです。
  
ホロライブプロダクションに所属するVTuberの宝鐘マリンがYouTubeで通常配信する様子

「日常の配信」に続いて、「記念日的な活動」を見ていきましょう。当社のタレントでいうと、誕生日に音楽ライブを実施しています。自宅で行う日常の配信活動とは違い、会社が保有するモーションキャプチャースタジオで収録して配信します。当社のスタジオでは複数人と共演し全身を使った配信が可能なため、リアルのアーティストとコラボレーションすることもあります。

 前述したオンラインでの活動の他に、最近ではライブやテレビ出演するタレントも増えています。ライブでは「幕張メッセ」や「東京ガーデンシアター」などのリアルのライブ会場で有観客のライブも開催しております。このようにリアルな場への進出が増えているのが、最近のVTuberの大きな潮流です。
  
ホロライブプロダクションに所属するVTuberの星街すいせいが登場したライブの様子

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