最先端のマーケティング手法を探る~「VTuber」という新たなマーケティングの可能性~ #02

言語と国境を越え、世界へ羽ばたく「VTuber」。そのグローバルな戦略を紐解く【カバー 代表取締役社長CEO 谷郷元昭】

 

グローバル市場が当たり前となったVTuber


 グローバル市場でも活躍するVTuberの可能性についても紹介します。VTuberタレントにおけるYouTubeチャンネル登録者数ランキングで世界1位の「がうる・ぐら(Gawr Gura)」は、2023年の「The Streamy Awards」という米国の配信者を表彰するイベントのVTuber部門で受賞しています。また、ゲーム配信が主流である海外プラットフォームの「Twitch」の中でもVTuberのカテゴリーが創設されたことからも、世界中にVTuber文化が広がりつつあることがわかります。
  
世界トップクラスのVTuberを独占保有(カバー 事業計画及び成長可能性に関する事項

 日本におけるアニメの市場規模は、グローバル市場が成長していることが大きく影響し、 2021年に2兆7422億円となり、直近10年で2倍まで膨らんでいます(※日本動画協会調べ)。特に海外の伸びが大きく、10年前は全体の20%弱だったものが、この10年で50%近くまで海外が占めるようになっています。これまでは日本のアニメの流行が世界中に展開されるには、海外のテレビ局による放映権の購入が必須でした。そのプロセスが煩雑だったため、海外で実際に放送されるまでには長い時間がかかるケースが多かったです。

 しかし、今ではNetflixやAmazonプライムなど、グローバルな動画配信プラットフォーム上で多言語に翻訳されて放映されています。このような消費者接点の多様化とスピード化により、世界中でアニメファンが急激に増えています。

 日本のアニメを好きな人が世界中に増えている中で、VTuberはその最先端の文化として、アニメキャラクターがまるで生きているかのような体験を提供するため人気が出てきています。特に影響が大きいのは、もともと日本アニメの視聴者が多かった、北米、台湾、韓国、東南アジアです。

 また、ユーザーが世界で6500万人いるRPGオンラインゲーム「原神」の人気も大きいと思います。「原神」は中国のmiHoYoという会社が開発していますが、日本のアニメルックなキャラクターが、日本アニメのように受け入れられています。

 2022年、当社は世界中で20以上のアニメーションのイベントに出展し、各国の現地ファンと交流しました。そのときに私が感じたのは、アニメファンの中ではVTuberがかなり一般化してきたことです。実際に同人誌のコーナーでは、人気のアニメやオンラインゲームと同様にVTuberの同人グッズなども販売されていました。アニメファンの中でVTuberはすでに一定の地位を確立しています。
  
グローバルにオフラインイベントを展開(カバー 事業計画及び成長可能性に関する事項)

 2023年7月、米国・ロサンゼルスにて大型ライブイベント「hololive English 1st Concert - Connect the World-」を開催しました。5000人規模の会場でしたが、わずか10分でチケットが完売し、オンラインのチケットも2万5000枚を販売しました。そして最近では、ローカル向けのグッズ展開と販売を本格化し、2023年9月にはアニメイトのロサンゼルス店のオープンに合わせてコラボグッズを発売したりするなど、現地のサプライチェーンの構築にも取り組んでいます。

 日本だけでなく世界に羽ばたくVTuberタレントの業界と市場について紹介してきました。私はキャラクタービジネスの可能性を探り、UGC(ユーザー生成コンテンツ)やクリエイターエコノミーといった個人のクリエイティブな活動の可能性を信じてきました。そして、ファンや視聴者と双方向にコミュニケーションできるVTuberの特徴を活かしたビジネスを展開しています。その結果、VTuberという大きな市場をつくりあげることに貢献できたと自負しています。

※第3回 「VTuber」とのコラボキャンペーンの成功法則、キーワードは「二面性」と「親和性」 に続く
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