最先端のマーケティング手法を探る~「VTuber」という新たなマーケティングの可能性~ #03
「VTuber」とのコラボキャンペーンの成功法則、キーワードは「二面性」と「親和性」
現在、VTuber市場は急速に拡大しており、2022年には520億円だった市場規模が、2023年に800億円に達する見込み(※矢野経済研究所調べ)である。ただし、これは日本国内市場のみの見立てであり、海外市場を含めると、2030年までには約1兆円規模に成長するとの予測もされている(※グローバルインフォメーション調べ)。この新しい領域である「VTuber」というビジネスチャンスを、現代のマーケターは見過ごすわけにはいけない。
本連載では、世界中から人気を集めるVTuberグループ「ホロライブプロダクション」の創業者であり、自らもYAGOO(ヤゴー)の愛称でVTuberファンから知られるカバー代表取締役社長CEOの谷郷元昭氏がVTuberのマーケティングにおける価値を伝える。同氏は、2022年にForbes JAPANが発表した「日本の起業家ランキング2023」で第3位にランクインするなど、経営者としても注目されている。
第2回では、VTuberタレントがグローバル市場で飛躍している背景とその戦略について解説した。第3回は、VTuberが街のサイネージ広告や商品とのコラボ、WebCMでの出演など、この1~2年でVTuberタレントのコラボ広告を目にする機会は格段に増え、その広がりの加速を感じている読者もいるだろう。そこで今回は、VTuberのBtoBビジネス戦略と、その実績や実例について詳しく紹介する。
本連載では、世界中から人気を集めるVTuberグループ「ホロライブプロダクション」の創業者であり、自らもYAGOO(ヤゴー)の愛称でVTuberファンから知られるカバー代表取締役社長CEOの谷郷元昭氏がVTuberのマーケティングにおける価値を伝える。同氏は、2022年にForbes JAPANが発表した「日本の起業家ランキング2023」で第3位にランクインするなど、経営者としても注目されている。
第2回では、VTuberタレントがグローバル市場で飛躍している背景とその戦略について解説した。第3回は、VTuberが街のサイネージ広告や商品とのコラボ、WebCMでの出演など、この1~2年でVTuberタレントのコラボ広告を目にする機会は格段に増え、その広がりの加速を感じている読者もいるだろう。そこで今回は、VTuberのBtoBビジネス戦略と、その実績や実例について詳しく紹介する。
親和性で活躍するVTuberタレントビジネス
エナジードリンクのレッドブル社が2021年に「レッドブル・エナジードリンク パープルエディション」という巨峰フレーバーの商品を期間限定かつネット限定で販売開始しました。当社とコラボレーションし、所属タレントである「湊あくあ」さんと「獅白ぼたん」さん2人のバーチャルアンバサダー就任記念という形でステッカーを付けてAmazonで発売したところ、深夜0時の販売開始にもかかわらず、わずか30分で完売しました。
想定以上の反響をいただいた結果、レッドブル社にもかなり喜んでいただきました。パープルエディションが通年商品となった2023年3月以降も、継続的に取り組んでいます。
レッドブル社はプロゲーマーをアスリートという目線で捉え、eスポーツ系のイベントなどにも協賛する企業です。「湊あくあ」さんは、コラボ前からもともとレッドブルが大好きなことを日々の活動で公言しており、かつゲームの上手なタレントであったことで起用いただきました。そして同じくゲームの得意な「獅白ぼたん」さんと一緒に「ゲーム」という親和性からコラボしたという経緯があります。
このようなVTuberのBtoBビジネスは、主に「タイアップ広告」と「IPライセンス」の2種類に分類されます。まず、タイアップ広告の代表的なものは「企業から依頼を受けて配信するゲーム実況」です。ゲーム会社の許諾をとることで実現するゲーム実況はVTuberの普段の配信においてもメインコンテンツのひとつになっているため、非常に相性がいいコラボとなっています。
ゲーム実況以外にもVTuberのライブ配信の中で、食品やコンビニ、商業施設といったさまざまな企業のサービスを紹介するようなVTuberのインフルエンサー性を活かしたコラボがあり、特にいまあげたような企業との相性のよさを強く感じています。その中でも、ファミリーマートやロッテといったコンビニや食品メーカーとは、期間限定で手に入るクリアファイルや商品パッケージなどで、VTuberのキャラクター性を活かしたコラボをすることもできます。VTuberは魅力的な声のタレントが多く、声や喋りへの需要も高いため、たとえば店内放送のような形で活用することで来店のフックにつなげることができます。
さらに、水族館などをはじめとした商業施設とのコラボについても相性がよく、すでに定着しつつあります。施設の中で限定メニューやグッズを販売する形で、施設とファンがWin-Winになるようなコラボを設計できるというメリットがあり、水族館の集客にもつながり上手くいきやすいのです。
また、VTuberはSNSでの発信も多く、ファンの間でも活発にSNSでの投稿が見られるので、SNSのトレンドに乗りやすいという傾向もあります。そのため、こうしたコラボを行うと、実際に訪れたファンがSNSを通じて発信することでより広く拡散されるため、SNSでのバイラルを狙ったキャンペーンができることも特徴の1つです。
次に「IPライセンス」では、VTuberをキャラクターとしてとらえたコラボを行っています。たとえば同じゲーム軸であると、インゲームコラボなどがこちらにあたります。コラボ期間中のみVTuberタレントがゲームに登場し、ダウンロードできるものです。配信コラボでは単にゲーム実況しながら紹介するのに対し、インゲームコラボではVTuberそのものがキャラクターであるというVTuberのIPライセンスの特性を活かすため、より強いコラボ感が演出されます。
一般のYouTuberなどのリアルなインフルエンサーの場合、キャラクターではないという点からゲームの世界観にマッチさせるのが難しい面があります。一方でVTuberは、先程もあげたように、インフルエンサーでありながらIPキャラクターでもあるという二面性を持つため、インゲームコラボと相性がよく非常に効果的です。
その場合、タレントのゲームキャラクターを目的にいままでそのゲームをプレイしていなかったファンがダウンロードしてプレイするきっかけになるので、App Storeのランキングが上位に上がるという効果が見込めます。最近ではIPライセンス型のコラボをし、タレントが日々の配信でさらにそれをプッシュするという連動型のコラボが主流になりつつあります。