バレンタイン特別対談 #01

バレンタイン商戦をどう制す? ブラックサンダーとメリーチョコレートが分析する「消費タイミングの二極化」

 

最初は理解できなかった「推しチョコ」


―― 続いて商品戦略についてお聞きしていきます。メリーチョコレートカムパニーでは2023年、「推しと、私と、チョコレート。」というブランドを販売開始し、SNSなどで話題になりました。2024年版は新色が加わって、さらにバリエーションが豊富に。顧客のニーズに合わせて細分化した場合、費用対効果はどのように考えていらっしゃるのですか。

高田 まずメリーにおけるバレンタインの商品開発では、市場の二極化、つまり「自分のためのチョコ」と「贈答用のチョコ」に消費者のニーズが分かれていることを踏まえて、共通するテーマは持ちつつも、それぞれに班を設けて取り組んでいます。いろいろとアイデアを出して、最終的に「これでいこう」と決めるチェックポイントがいくつかあります。最初にプレゼンを聞いて一番意味が分からなかったのが「推しと、私と、チョコレート。」でした。

「推し」という言葉は、今では当たり前に使われていると思いますが、2023年バレンタインに向けて、2021年に商品開発部の若手メンバーが提案してきた当時、正直私は全く知りませんでした。言っていることが20%もわからず、「悪いけど、日本語で話してくれない?」と言ってしまったくらいです(笑)。

ただ、それが若者に流行っているのであれば、やってみようと、2023年に初めて導入しました。同じく、2023年に発売したブランド「ねこみゃみれ」も、猫が好きな人の気持ちに寄り添った商品で、社内の猫好き社員から上がった企画です。私は猫が嫌いなわけではないですが、当初はメンバーの「猫愛」に圧倒されて理解が追いつきませんでした。
   メリーチョコレートカムパニーの「推しごとチョコレート」。2024年は推しカラー「しろ」を加え9色で展開

こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、これらの企画で利益を上げようとはあまり考えていません。もちろん、赤字にならないように設計はしていますが、こうして話題として取り上げていただいたり、「メリーチョコレートはバレンタインの時期に面白いことをしている」と思ってもらえる、そんな入り口のひとつになってくれればいいと考えています。

―― 遊び心ある企画といえば、有楽製菓も2021年にECサイト限定で、バレンタインチョコレートをプレゼントできる「下駄箱」や「練習用マネキン」などを販売して話題になりました。

河合 下駄箱やマネキンといった企画をしたのは、コロナ禍のバレンタインで、「バレンタインをもっと自由に」と謳い始めた年でもあります。店舗にはなかなか来ていただけない中で、どうせオンラインでやるならオンラインでしかできない、かつ他のチョコレートメーカーがやっていないことをやりたいと考えました。

きっと皆さん、かつて一度はバレンタインでドキドキ、ソワソワした経験をお持ちではないでしょうか。学生時代のその気持ちを思い出してもらうアイコンといえば下駄箱。そこで下駄箱付きのブラックサンダーを思いついたわけです。すぐに売り切れましたね。2023年からはリアルなイベントも復活し始めてたので、オンラインもオフラインもきちんと使って、本当の意味で「バレンタインをもっと自由に」楽しめるような場やツールを提供していきたいと思っています。

高田 オンラインは「今だけ・ここだけ・あなただけ」と言われるように、オンラインでしか手に入らない商品を織り交ぜて展開することを基本的に意識しています。たとえばバレンタイン専用商品として2021 年に導入した「はじけるキャンディチョコレート。」では、文具メーカー様とコラボしたオリジナル商品を開発し、当社のオンラインショップ限定で展開しています。おかげさまで、毎年完売するなどご好評を頂いています。
  

※後編「同業他社をどう見る?ブラックサンダーとメリー 人材育成からサステナブルまで互いのスタンスを深掘り【バレンタイン特別対談】」に続く
他の連載記事:
バレンタイン特別対談 の記事一覧
  • 前のページ
  • 1
  • 2

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録