バレンタイン特別対談 #02
同業他社をどう見る? ブラックサンダーとメリー 人材育成からサステナブルまで互いのスタンスを深掘り【バレンタイン特別対談】
誰が、誰に、何を贈るのか。価値観が多様化する今、消費者のギフト観があらわれるバレンタイン。ともに老舗でありながら時代を先読みしたアップデートを続けるチョコレートメーカー、有楽製菓 代表取締役社長の河合辰信氏と、メリーチョコレートカムパニー 執行役員 マーケティング本部本部長の高田基位氏がスペシャル対談を実施した。
前編では、昨今のバレンタインにおける消費者動向の「二極化」を分析。「一目で義理とわかるチョコ」から「バレンタインをもっと自由に」へと、価値提案を進化させながらユニークな存在感を増し続ける有楽製菓と、伝統的な贈答用チョコに根ざしながら、「推しと、私と、チョコレート。」や「ねこみゃみれ」のような感性に訴えかけるチョコで話題化に成功したメリー社の、それぞれのマーケティング戦略を紐解いた。後編である本稿では、それぞれの独自の人材育成法や、同業だからこそ聞きたいライバルとの向き合い方、ビジネスで避けて通れない環境負荷への考えを聞いた。
前編では、昨今のバレンタインにおける消費者動向の「二極化」を分析。「一目で義理とわかるチョコ」から「バレンタインをもっと自由に」へと、価値提案を進化させながらユニークな存在感を増し続ける有楽製菓と、伝統的な贈答用チョコに根ざしながら、「推しと、私と、チョコレート。」や「ねこみゃみれ」のような感性に訴えかけるチョコで話題化に成功したメリー社の、それぞれのマーケティング戦略を紐解いた。後編である本稿では、それぞれの独自の人材育成法や、同業だからこそ聞きたいライバルとの向き合い方、ビジネスで避けて通れない環境負荷への考えを聞いた。
店頭に立つマーケティング本部員、「全部やる」の人材育成
――コロナ禍ではECサイトでの取り組みが加速しましたが、一方でメリーチョコレートカムパニーは2023年6月、チョコブランド「RURU MARY`S(ルル メリー)」初の路面店を東京・青山通りにオープンしました。どのような意図があるのでしょうか。
高田 「ルル メリー青山通り店」は、メリーの他の百貨店を中心とした店舗とは違い、基本的にマーケティング本部のメンバーが運営の中核を担っています。実は「ルル メリー」というブランドは2017年に百貨店から展開を始めました。メリーは昔から百貨店に育てていただいたメーカーで、ルル メリーも同様の出店戦略を描いていたのですが、正直、それがあまり広がらなかった。
メリーチョコレートカムパニー 執行役員 マーケティング本部長
高田 基位 氏
早稲田大学卒業後、1992年ロッテ入社。宣伝部で9年間、テレビCMや新聞、雑誌のグラフィック制作に従事の後、マーケティング部にてコアラのマーチ、トッポ、パイの実のチョコ菓子ブランド担当者として同ブランド群の育成業務に携わる。2011年にポーランドのLOTTE Wedel(ロッテウェデル)社に役員として赴任し、Marketing、R&D、Export部門を管掌しながら、同社の経営に従事。帰国後、国内グループ会社であるメリーチョコレートカムパニーでマーケティング本部の執行役員本部長に着任。現在に至る。
高田 基位 氏
早稲田大学卒業後、1992年ロッテ入社。宣伝部で9年間、テレビCMや新聞、雑誌のグラフィック制作に従事の後、マーケティング部にてコアラのマーチ、トッポ、パイの実のチョコ菓子ブランド担当者として同ブランド群の育成業務に携わる。2011年にポーランドのLOTTE Wedel(ロッテウェデル)社に役員として赴任し、Marketing、R&D、Export部門を管掌しながら、同社の経営に従事。帰国後、国内グループ会社であるメリーチョコレートカムパニーでマーケティング本部の執行役員本部長に着任。現在に至る。
ただ、非常にご愛顧くださっているファンの方々がいることは分かっていたので、このブランドの良さやエッセンスをどう抽出して、お客さまに届けられるかを議論しました。そこで、まずはきちんと、我々が本当にリーチしたいお客さまに絞って、自分たちのメッセージをお伝えして、どういう反応が返ってくるのかを見られる場が欲しいという意見が出たのです。東京・青山という場所を選んだのはそういう理由です。
路面店はまだオープンから1年も経っていないので、実験の途上ではあるのですが、クリスマスを過ぎてバレンタイン商戦にかかっている今の時期、クリスマスで見えたお客さまの反応やニーズを理解して生かそうとしているところです。これは当然、来年度にも生かしますし、マーケティング部員によるリアルタイムの情報収集の場という位置付けです。
また、路面店に限らず、メリーでは社員が入社直後に百貨店の販売員を研修の一環としてほぼ必ず経験していますし、基本的に常設店舗は社員が自ら運営しています。今、マーケティング本部にいる面々の中にも、百貨店の店舗で販売員をしていたというキャリアを持つ者もいるので、お客さまに直接向き合うということについては、基本的な土壌として根付いているのかもしれませんね。
河合 マーケティング本部の方が、店頭に立たれた経験を持っているというのはすごいですね。有楽製菓ではまずありません。でも、すごく大事な経験だと思います。オフィスにいると、お客さまの反応はSNSなどの情報で見るしかないですが、お店に店員として立てば、どうすれば売れるかといったことも含めて、いろいろなことが見えそうです。
有楽製菓 代表取締役社長
河合 辰信 氏
1982年生まれ、愛知県豊橋市出身。横浜国立大学大学院修了後、2007年シスコシステムズ合同会社入社、システムエンジニアとして大手製造業を担当。2010年有楽製菓入社。入社後は工場勤務、商品開発を経てマーケティング部や人事部の立ち上げに関わり、営業の統括も兼務。マーケティング部では、ブラックサンダーの「義理チョコ」プロモーションやラップ動画などのプロモーション活動を牽引。2018年2月に3代目社長に就任した。
河合 辰信 氏
1982年生まれ、愛知県豊橋市出身。横浜国立大学大学院修了後、2007年シスコシステムズ合同会社入社、システムエンジニアとして大手製造業を担当。2010年有楽製菓入社。入社後は工場勤務、商品開発を経てマーケティング部や人事部の立ち上げに関わり、営業の統括も兼務。マーケティング部では、ブラックサンダーの「義理チョコ」プロモーションやラップ動画などのプロモーション活動を牽引。2018年2月に3代目社長に就任した。
人材育成についてはもう、昔から悩んでいます。私自身、体系的にマーケティングを学ばずにこの世界に飛び込んでやっているので、感覚的には、理論やデータ分析など大切なことはたくさんありますが、まずは「自分でやってみる」というのが一番大事なのかなと思っています。
それもマーケティングの中の一部ではなく、全部を経験するということです。これは恐らく、我々の規模の会社だから可能なことだと思うのですが、入ったばかりの人材にもマーケティング活動のあらゆる部分を経験してもらって、経験、勉強、実践、改善を繰り返してもらうことを心掛けています。もちろん、そんなに上手くいくものでなく、マーケターとして成長しようという意識を持ってもらうためにどうするかは、まだ課題と思っています。