トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #13

花王がマスマーケティングから大転換、生活者に寄り添う共創戦略の実態を聞く

 

感動体験と想いを伝えるオフラインのイベントでUGCを創出


小原 2つ目の共創は、生活者が諦めていたことや、もっとこうだったら良かったのにと思っていることに意識してアプローチし、感動体験をしてもらうことでUGCの創出を目指すということです。

中村 感動体験がお客さまの発話の種になると考えているわけですね。使用時の感動体験を生むために、マーケターとして工夫していることはありますか。

小原 当たり前のことかもしれませんが、生活者を観察し続けることが一番のポイントだと思います。できるだけ多くの生活者にお会いして、この人がどの日焼け止めを使っているのかを想像できるくらいまで肌感を上げられるようにしています。その感覚を、チーム全員で共有できていることもポイントになります。
  

我々は、生活者やインフルエンサーと継続して向き合い続けるということが、ビオレUVというブランドへの信頼や絆につながると考えています。そこで、オフラインのイベントなどを通して、生活者やインフルエンサーにブランドの想いや商品の開発背景などを直接お話しする機会を設けています。

この取り組みをはじめてから、どれくらいの人とやり取りしているか数えたところ少なくとも500人以上の生活者やインフルエンサーとコミュニケーションしていることがわかりました。そのイベントでは、インフルエンサーを含めた生活者に対して我々が抱えている悩みを聞いていただいたりもしています。一方で、普段の皆さんの悩みを聞くなどして、それをどのように商品に落とし込むかを探ったりしています。ここは地道にかなり泥臭く、愚直に取り組んでいますね。これが3つ目の共創です。

特にタイアップ広告などで出演するインフルエンサーには、SNS投稿するときのオリエン資料を送って終わりにするのではなく、我々の想いを聞いてファンになってもらい、熱量の高い投稿につなげてもらいたいと考えています。

中村 そうしたイベントを開催している様子を、インスタライブなどのオンラインで配信しないのですか。

小原 それも考えたことはありますが、クローズドのイベントだからこそ言っていただけることがあると実感しています。我々もなかなか言いにくい話も含めて、生々しい苦労話を聞いていただきたいという想いがあるのです。

中村 お客さまに生々しい声を届けるというのは、大事かもしれないですね。
  

小原 はい。インフルエンサーも、自分のフォロワーに中途半端な製品を薦めたくないという想いをお持ちなので、自信をもって紹介できる製品だと思ってもらえるようにコミュニケーションしています。

中村 そういえば、以前インフルエンサーにインタビューしたときも、「開発者に実際に会ってその熱量が伝わると、自分も熱量を持って投稿できる」と、同じように話していました。ちなみに、UGCをうまく創出するために、小原さんが大事にしていることは他にありますか。

小原 私は、商品をお伝えいただくインフルエンサーに対する理解をかなり深めている自信があります。どれだけ共創していただく人々を理解して、その人と愛を持って取り組めるかがポイントだと思っているんです。

※後編 花王「ビオレUV」の新戦略、3Sサイクル(Scene・SNS・Store)の真価 に続く
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