トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #14

花王「ビオレUV」の新戦略、3Sサイクル(Scene・SNS・Store)の真価

前回の記事:
花王がマスマーケティングから大転換、生活者に寄り添う共創戦略の実態を聞く
 ソーシャルメディアの普及や発達により、企業からの情報発信だけでなく、顧客による情報発信や評判形成、企業と顧客の双方向的なコミュニケーションを踏まえたマーケティング活動が重要だと言われる時代。そんな「価値共創」の時代に、マーケターはどう価値を定義し、マーケティングの実務に落とし込んでいくのか。この連載では、Facebook Japan マーケティングサイエンス統括 執行役員の中村淳一氏がトップマーケターにインタビューし、そのヒントや考え方を解き明かしていく。

 第7回は、花王 ヘルス&ビューティケア事業部門 スキンケア事業部 シーズンの小原聡太郎氏が登場。前編では、近年大きく変化している花王のマーケティングコンセプトや日焼け止めブランド「BioréUV(以下、ビオレUV)」での価値共創の取り組みについて詳しく聞いた。後編では、ビオレUVが実践する新しいマーケティングのサイクルから、SNSのUGC(ユーザー生成コンテンツ)戦略や店頭、使用場面までを考えた取り組みについて詳しく聞いた。
 

ビオレUVが重視する独自のマーケティング「3Sサイクル」


小原 前編で少しお話しした「3S(Scene:使用場面、SNS・UGC戦略:クチコミ、Store:店頭)」についてご紹介します。
 
ビオレUVにて実践されているお客さまのWow!が生まれ・自走するBiore UVの新マーケティング“3Sサイクル”

我々が大事にしている3Sとは、「Scene」「SNS(UGC戦略)」「Store」を指します。Sceneとは、製品にこだわることで、どのようにお客さまの感動体験を生むかということです。そして、それをSNSで広げ、それを見た人にどのようにStoreで購入していただくかを考えています。

これらはすべて、我々ビオレが大事にしている「実感(Wow)」です。それは、驚くような体験をどのように自走させるかという意識をもって取り組んでいます。PRやテレビCM、サンプリングによる体験、デジタル配信などは、この3Sをブーストする役割として位置付けています。

中村 それは面白いですね。「Wowをどのように自走させるか」は、どのような背景で目指すようになったのですか。

小原 2021年にビオレから「アクアリッチ 水層パックUV」という製品を発売して非常にうまくいった経験からです。その理由を改めて整理すると、Wowが自走したことがポイントだったと考えられました。

そこで2022年、同じ手法で「アクアリッチ 瞬感ミストUV」をテスト発売したところ、今度は同じサイクルがより大きな輪となってつながっていき、2023年の大ヒットにつながっていったんです。そこから、Wowを自走させることを重視するようになりましたね。
 
花王 ヘルス&ビューティケア事業部門 スキンケア事業部 シーズン
小原 聡太郎 氏

 慶応義塾大学総合政策学部卒。2014年に花王に入社し、4年間販売部門(店舗担当、販売戦略部門など)を経験したのちに、2018年よりスキンケアブランド「ビオレ」のマーケティングを担当。2024年2月よりベトナムに赴任。

中村 Wowが生まれ、自走するために重要視するポイントとして、この3つのSを選んだのにはどういった理由があるのでしょうか。

小原 まずStoreについて、日焼け止めカテゴリーが特徴的なのは、ドラッグストアの店頭の一等地に半年近く展開いただけるカテゴリーであるということです。そのようなカテゴリーはなかなかないと思いますが、そこをお客さまの接点として押さえることがポイントだと考えています。

中村 なるほど、Storeは「小売り様との共創」なんですね。

小原 そうです。そのため、小売りの皆さんにもインフルエンサーと同様に、熱量高く製品についてお伝えしています。

次にSceneについてです。ビオレが大切にしているのは、どのように使用実感していただくか、そこでWowを感じてもらえるかです。すべてはお客さまの使用体験を起点として広がっていくと考えています。

中村 Sceneと感動体験はイコールになるのでしょうか。
 
Facebook Japan マーケティングサイエンス統括 執行役員
中村 淳一 氏

  慶応義塾大学経済学部卒。現在京都芸術大学大学院芸術修士(MFA)在籍中。2002年に消費財メーカー、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)入社、消費者市場戦略本部に所属。柔軟剤ブランド「レノア」の日本立ち上げのコアメンバーや、かみそりブランド「ジレット」、店舗営業チャネルシニアマネージャーを経たのち、13年からシンガポールにてグローバルメディア、アジア地域ビッグデータ担当のアソシエイトディレクターに着任。17年6月にフェイスブック ジャパン(Meta)入社。マーケティングサイエンスノースイーストアジア統括。他JMAインサイトハブコアメンバー等。

小原 私はイコールだと思っています。たとえば、ミストタイプの日焼け止めはいままでになかった使用感・使用方法に驚きがあると、それが結果的にSNSで広がっていくわけです。

中村 そうした場合、Wowが自走すると思いますが、ビジネス上のKPIなど数値目標はどうしていますか。

小原 そうですね。データで追いにくい部分はありますが、SNSなどの数値がとれるところは発話量などKPIを設けています。また、Storeの販売数も数値を取っています。そこで「3S」のサイクルの中でも、SNSからStoreの間で分断しないようにすることが大事だと感じています。

中村 分断しないためには、どのようなことに取り組んでいますか。

小原 これは花王のいい部分だと思いますが、ひとつのブランドに対して担当が分かれずに、私や事業部のマーケターがすべてを管理しているんです。もちろん営業担当はいますが、Scene、SNS、Storeの3つで分断が起きないように、一気通貫で担当できていることが重要だと思います。

また前編で紹介したように、リスクを最小化するためにある程度失敗することを前提にテスト販売を実施します。そこでいただいたお客さまの声をもとに改善を行い、翌年の全国販売で最大の成果を出すように目指しています。
  

中村 最初の年に小さいテストマーケティングを行い、翌年に大きく広げたやり方であると、「3Sサイクル」が2周回っている感じがします。1周目のときは、Storeからスタートするのですか。

小原 はい、そうです。基本的にはStoreからスタートしており、ここを小売様と取り組んでいます。一方で、2周目は逆回りもあり、生活者の声をもとにもう一度、Sceneに落とすためにはどうするのか、商品をよりよくするためにはどうするか、というサイクルにも取り組んでいく必要があります。お客さまの声を直接聞いて、より良い製品にして、このサイクルを強める取り組みをしています。

マーケターに役立つ最新情報をお知らせ

メールメールマガジン登録