最先端のマーケティング手法を探る~「VTuber」という新たなマーケティングの可能性~ #04
バーチャルタレントだからこそ超えられる壁、VTuberの活用方法とリスクとは
現在、VTuber市場は急速に拡大しており、2022年には520億円だった市場規模が、2023年に800億円に達する見込み(※矢野経済研究所調べ)である。ただし、これは日本国内市場のみの見立てであり、海外市場を含めると、2030年までには約1兆円規模に成長するとの予測もされている(※グローバルインフォメーション調べ)。この新しい領域である「VTuber」というビジネスチャンスを、現代のマーケターは見過ごすわけにはいけない。
本連載では、世界中から人気を集めるVTuberグループ「ホロライブプロダクション」の創業者であり、自らもYAGOO(ヤゴー)の愛称でVTuberファンから知られるカバー 代表取締役社長CEOの谷郷元昭氏がVTuberのマーケティングにおける価値を伝える。同氏は、2022年にForbes JAPANが発表した「日本の起業家ランキング2023」で第3位にランクインするなど、経営者としても注目されている。
第3回では、VTuberタレントの特徴を活かした広告やコラボからBtoBビジネスの戦略と事例について解説した。第4回は、VTuberタレントを企業の広告やコラボなどで具体的に起用するにあたっての方法や注意点、リアルタレントとの違いや炎上リスクなどについて、現代のマーケターが気になるVTuber活用のポイントと注意点について詳しく紹介する。
本連載では、世界中から人気を集めるVTuberグループ「ホロライブプロダクション」の創業者であり、自らもYAGOO(ヤゴー)の愛称でVTuberファンから知られるカバー 代表取締役社長CEOの谷郷元昭氏がVTuberのマーケティングにおける価値を伝える。同氏は、2022年にForbes JAPANが発表した「日本の起業家ランキング2023」で第3位にランクインするなど、経営者としても注目されている。
第3回では、VTuberタレントの特徴を活かした広告やコラボからBtoBビジネスの戦略と事例について解説した。第4回は、VTuberタレントを企業の広告やコラボなどで具体的に起用するにあたっての方法や注意点、リアルタレントとの違いや炎上リスクなどについて、現代のマーケターが気になるVTuber活用のポイントと注意点について詳しく紹介する。
「タレント」「IP」へと大きく変化したVTuberの活躍
当社ホロライブプロダクション所属の「星街すいせい」さんは、YouTubeチャンネルの登録者数が200万人を超える人気タレントです。アーティストとしても楽曲がオリコンチャート上位に入り、ゲーム・アニメ・ミュージック・ITなど広い分野でプロを育成する「専門学校HAL」のテレビCMソングに起用されるなど人気を博しています。YouTube視聴がメインのファン層から若年層にも広がり、「YouTubeは見ていないけどTikTokで見ている」「SpotifyやiTunesで音楽を聞いて知った」といった声も聞くようになりました。
これは「星街すいせい」さんに限ったことではなく、当社タレント全般にいえることです。実際にLINEリサーチが発表した2023年9月度のZ世代のトレンドランキングでは23位にホロライブが入りました。また、同アンケートの15歳~18歳男性部門では6位にランクインしています。現在、新たなファン層は特にZ世代を中心に大きく拡大している状況です。
このような経緯から、VTuberにおけるビジネスのあり方も変化しています。当初、VTuberはインフルエンサー性をもつ配信者と認識されていたため、収益はYouTubeでのゲーム配信コラボが中心でした。しかし最近では、配信者から「タレント」へ、さらに「IP」としての認知がされはじめたことで、ゲーム配信コラボからインゲームコラボへと変遷を遂げていったようにキャラクターIPとしての価値も認識されています。そして、そのIPを活用することによって、各種商業施設や多くの企業とのコラボが始まり、成果を挙げるようになりました。
また、普段からタレントの活動を支えてくれるファンにとってみれば、タレントが成長し活動の幅が広がっていくことを応援してくれているので、「自分の推しが企業とコラボできるようになった」「自分も知っているコンビニや有名な食品メーカーとのコラボだ」「テレビCMも流れるのか」と一緒に祭りのように盛り上がっていただけることで、さらなる潮流ができています。
VTuberタレントの具体的な使い方
このように、ただのインフルエンサーでもただのIPでもない、両方の価値を併せ持つVTuberは、どのような形で起用すれば効果を最大化できるのでしょうか。その特徴を活かすポイントや注意点について紹介します。
まず読者の皆さんに伝えたいのは、「タレントと商材の親和性がコンバージョンにつながる」ということです。時折「YouTubeチャンネルの登録者数が多い順に5人アサインしたい」といった依頼をいただくこともあります。しかし、それでは案件感の強い単なるプロモーションになってしまい、実際のコンバージョンにもつながりにくいと私は考えています。
タレントを選ぶときは、フォロワー数やYouTubeチャンネルの登録者数が多いかどうかという判断基準で選ぶよりも、タレントのIPやその商材との親和性を活用する視点で検討していただきたいと思っています。第3回でも紹介した事例のおさらいですが、継続してコラボさせていただいているレッドブル社は、eスポーツ系のイベントにも協賛する企業で、起用いただいた「湊あくあ」さん、「獅白ぼたん」さんとは「ゲーム」という親和性でコラボさせていただいた経緯があります。
このように、それぞれのタレントには違った特徴や魅力があり、それに惹かれてファンが集っているため、単に人気だからという理由でコラボをしたとしても、効果を最大化できるとは限りません。
まずは問い合わせからという形でも、具体的に何をやりたいかが決まっていたとしても、VTuber起用に関してはこうした特徴を押さえた上で、最適な提案をしています。また、もし不安に思われたとしても、当社の実績も増えてきたため、類似事例を紹介することで、具体的なイメージを伝えることもできるようになっています。
実際にタレントを活用するときの依頼や問い合わせには、さまざまなパターンがあります。直接または広告会社を通じてご相談いただくことも多いですし、もちろん、まったく知らないところから急にお問い合わせいただくこともあります。さらに、一度起用していただいた企業は、VTuberの活用の仕方を理解してくださり、継続的に依頼をくださることも増えてきています。
現状多い依頼は、IPキャラクター性とインフルエンサー性を活用した掛け合わせの案件ですが、コラボの仕方も多様になってきていて、純粋な広告としての起用やテレビCMでの起用も対応できるようになり、実績としてはWebCMなどがありますが、今後力を入れていきたい分野でもあります。