社会変動を紐解き、マーケティングで時代を拓く #03

時間シェア争奪の時代、マーケターは「欲求」の迷路を解いて活路を開く【LIFULL篠崎亮氏】

 

その買い物は「欲望」「希望」を満たせているか


 これまで私が不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」のブランドに携わり、リサーチを通して得てきた住み替えのインサイトのひとつは「自分や同居者を思いやり、よりよく生きようとする」ことであり、消費行動の先で、手にしたい姿には豊かさや幸福感が内包されていると理解しています。



 これは田中洋著の「消費者行動論体系」(中央経済社)に記される「欲望」や「希望」に分類できるものだと思います。

 ニーズのうちでも特に強い欲求のことを欲望(desire)と呼ぶ。欲望とは消費者が描く夢想と社会的な状況的コンテキストとの間に生まれる情報のことである(Belk et al., 2023)。(中略)
 一方、希望(hope)という概念がある。希望は「目標に合った結果が可能と評価されるとき喚起される正の感情」(de Mello & Mac Innis, 2005, P45)と定義される。希望はうれしい、興奮するというような正の感情であり、目標と合致した自分にとって望ましい結果が予測されるとき感じられるものである。(出典:田中洋著「消費者行動論体系」中央経済社)

 


 その住み替えの領域の検討フェーズでも、昨今はYouTuberが住まい購入をガイドするコンテンツが人気で、住み替えに求める情報として自分らしい選択を見つけることを求める一方で、インフルエンサー等の発言に考えを左右される人も多く感じます。

 ひとつの消費に対して、商品購入の先に描く「欲望」「希望」にも近しい根源的な欲求と、優れた顧客体験(CX)によって満たされるサービス利用の欲求、そのいずれを顧客は求めているのか。それは二者択一な選択肢ではないが故に、消費者自身にとっても難解な問いであり、多くの人は消費の最中で自身の欲求を正しく把握できず、正しく叶える行動を取ることは非常に困難であると捉えるべきです。

 そして、それぞれの欲求と行動が正しく一致していれば幸福感や不具合の解消といった成果が得られるでしょうが、欲求と行動が不一致であれば欲求は満たされず、消費は浪費になってしまいます。

 欲求と行動の不一致は、多くの消費行動において現実に起きています。マーケターはそれに対してどう向き合うべきなのでしょうか。次回は具体的な事例から考えてみます。

※後編 に続く
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