社会変動を紐解き、マーケティングで時代を拓く #04

マーケターは「欲求」の迷路を解き、「希望」に寄り添い価値ある消費を【LIFULL篠崎亮氏】

前回の記事:
時間シェア争奪の時代、マーケターは「欲求」の迷路を解いて活路を開く【LIFULL篠崎亮氏】
 不動産・住宅情報サービス「LIFULL HOME’S(ライフルホームズ)」を運営するLIFULL(ライフル)で、住生活に関する不動産会社や自治体のマーケティング・課題解決支援に取り組む篠崎亮氏が、時代の変化に伴う消費者や商品・サービスの動向を読み解き、未来を拓くマーケティングのあり方を模索する本連載。

 第3回では時間シェアの争奪が激しくなっている中、迷路のように入り組んだ欲求の現状を考察した。第4回の本稿は後編として、複雑化する消費者の欲求にマーケターはどう向き合うべきか、インサイトを的確にとらえた事例などを踏まえて検証する。

 前編で引用した「アプリ市場白書2022」(App Ape)が示すように、現代の消費者の時間シェアは、エンタメ系・動画系・ゲーム系といったアプリ利用が多くを占めています。

 そのような中で、「パルス型消費」(Google提唱)などと呼ばれる衝動的な買い物は、セレンディピティや「ながら」消費など、流行のキーワードで捉えれば聞こえは良いですが、すべてが「欲望」「希望」が叶うものと紐づいた消費とは捉えづらく、無感情に時間を費やしてしまうものや、ストレス発散などの反射的な動機に基づく行動も多いのではと感じます。無料型のコンテンツ消費やサブスクリプション型のサービスが普及したことで、逆にお金を意識して使うということは、厳しい経済状況もあいまって「ある種の痛み」を伴う消費になってきているとも思います。
 
LIFULL / LIFULL HOME’S事業本部 マーケティング部 クライアントマーケティングユニット コミュニケーショングループ・グループ長
篠崎 亮 氏

 マーケティングにおいて人のインサイトを捉えることが重要であることは言うまでもありません。ただ消費には、根源的な欲求を叶える意識的な行動だけでなく、無感情に時間を使っている行動や、欲求と行動の不一致が度々あることを踏まえるべきだと思います。現実として、いまマーケターはインサイトを深く理解せずとも、AI等のテクノロジーを活用して反射的な消費を引き起こすことがより可能になってきています。むしろその方が消費を促進し、より大きな売上を生む可能性があるとさえ感じます。

 私自身、顧客体験価値(CX)の領域が生まれてから、人間中心設計やオムニチャネル・OMO(Online Merges with Offline)といった言葉と関わりを持ってきました。そして、第4次産業革命と呼ばれる時代になり、政府は2022年11月に「スタートアップ育成5か年計画」を採択し、IoT・ビッグデータやAIを活用したテクノロジー領域のベンチャー企業は年々増加しています。一方で、ベンチャー企業にとって事業成長の維持は容易ではないことも分かってきています。こうした状況の中で、「欲望」「希望」に応える幸福感を与える「価値ある消費」を目指すことは、事業と顧客の関係性を良質なものにして、ライフサイクルを延命させる可能性がある、とても大事な視点だと考えます。

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