鹿毛康司、モダンエルダーを目指す #05

総再生3.6億回超の天才YouTuberはどうやって生まれたのか。過去の栄光を捨てて変身し続けるJunko☆とは何者か。

前回の記事:
「マーケターよ、一度でいいから作詞しろ」 無印良品で本当の共創に挑む若き天才
「モダンエルダー」という言葉を知っていますか? 若者に耳を傾けて新しいことを受け入れながら、エルダーとしての力も発揮する「職場の賢者」のことを指します。日本を代表するマーケターであり、クリエイティブディレクターでもある鹿毛康司氏がモダンエルダーを目指して、様々な若手にインタビューしていく企画です。

 鹿毛氏は「過去うまくいったことも、今ではうまくいかないことがあります。自分としては、思考能力はまだまだ大丈夫だと思っている一方で、時代との何らかのズレを修正し続けなければいけないと、恐怖を感じているんですよ」と語ります。本連載では「若者に教えてもらう」をテーマに、時代とビジネスの勘どころを探っていきます。

 第5回は、YouTuberやコンサルタント、ダンサーとして活躍するJunko☆氏が登場。同氏は、矢沢永吉さんなどの大物アーティストのバックダンサーを務めたり、水森かおりさんの紅白歌合戦の振り付けもしている有名ダンサー。成功を収めながらも、YouTuberに転身し大成功。自身のYouTubeチャンネルは総再生回数3.6億回を記録している。さらには「もうやんカレー」をはじめとする企業のコンサルを請け負ってV字回復を達成するなど、マーケターとしても手腕を発揮しています。
 

Junko☆は天才か。


鹿毛 まず、Junko☆さんは何者なのか、自己紹介をお願いします。

Junko☆ エンタメユニット「LOL Dojo / 実験道場」のYouTuber、振付師、コンサルタントとして活動しています。実験道場はYouTubeとTikTokを合わせた総再生回数は3.6億回以上、総フォロワー数は50万人を超えました。

鹿毛 すごいね、3.6億回超え。

Junko☆ 自分の好きなことをやって生きているだけなのですが、数字もついてきて嬉しい限りです。ところでネットで調べたけれど、鹿毛さんもYouTuberやったことありますよね。
 
Junko☆(蛇澤純子)氏
 静岡県出身、明治大学卒。子ども向け世界平和コメディのYouTube運営や、途上国での世界運動会、ドバイでの世界平和盆踊り開催等を通じ、エンタメで世界を平和にする活動を行う。「人生は実験だ!」をテーマにした世界平和パフォーマンスでは、日本全国、世界7ヵ国のフェスや舞台に出演。現在、埼玉パナソニックワイルドナイツ チアリーダー振付師。

鹿毛 そう、実は何年も前に1度だけYouTuberにチャレンジしてみようと思ったんですよ。

Junko☆ 拝見しました。鹿毛さん、うまいじゃないですか。ただ、相当テコ入れは必要ですけどね(笑)。

鹿毛 そこなんだよ。CM作ったり、SNSの世界でも賞を取ったりしてコミュニケーションの仕事をやってきたけれど、YouTubeは難しかったです。

Junko☆ どうしてYouTubeは伸びないと思いますか。

鹿毛 センスがないからです(笑)。

Junko☆ そのセンスを私は困っている人にお伝えすることができるんです。数字を伸ばしたいけれど伸ばせていないという人のお役に立つことが私は得意なんです。

鹿毛 ぜひお願いしたいですね。ここでいうセンスには2つあると思うんですよ。一つは演者としてのセンス。もうひとつはマーケターとしてYouTubeをどのように伸ばせるかのセンス。今回聞きたいのはマーケターとしてのセンス。Junko☆さんは何が自分の中で抜きん出ていると思いますか。

Junko☆ 事実確認を徹底的にやるところです。Googleアナリティクスはめっちゃ見ています。毎日その戦いですね。

鹿毛 演者としてのJunko☆さんもすごいけれど、そこなんですね、秘密は。1日でどれくらい、どんなデータを見ているんでしょうね。

Junko☆ 簡単に言うと人はどこで離脱をするのか、どのサムネイルが一番良かったのかを見ていきますが、特に、重要なのはそれを、1日、1カ月、1年、5年などの単位でしっかりと分析していくことです。できる限り、あらゆるデータを見てあらゆる視点で分析しています。

鹿毛 そこなんですね。単なる天才ではなく、汗をかいているのがすごいよね。
 
かげこうじ事務所 代表 マーケター クリエイティブディレクター
鹿毛 康司 氏

 2020年、エステー クリエイティブディレクター(役員)を退任して現在にいたる。 早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。現在は森永乳業、ほけんの窓口、バーガーキング、ベストコ(塾)会社など様々な企業のマーケティングとクリエイティブの支援をおこなっている。同時にグロービス経営大学院(MBA)教授として社会人学生にマーケティングを指導。2021年には著書「心がわかるとモノが売れる」で、マーケティングに必要なインサイトと人間理解論を実務家の視点で発表した。マーケティング立案、特に時代に新しいコンテンツマーケティングやファンマーケティングも得意とする。クリエイターとしてもCMプランナー/監督/コピーライター/作詞作曲などもこなす。2011年の東日本大震災直後に手がけた「消臭力CM」は好感度日本1位を獲得)。ACC Gold、マーケターオブザイヤー(MCEI)、WEB人貢献賞など受賞。

Junko☆ 自分のチャンネルはそれほど時間をかけずに毎日30分ほどでサクサク分析します。一方で、コンサルを請け負っている相手のチャンネルのデータは1日中ずっと見続けて、やるべきことを見つけます。その根拠もお示しするようにしています。

鹿毛 単なる感覚でこうしようではなく、事実を持ってアイデアを提案しているのですね。ではどうやってコンテンツの良し悪しは見抜きますか。

Junko☆ コンテンツはとにかく、出したいものを世に出してみます。そうすれば、それがいるのかいらないのかは、世の中が判断します。たくさんいる魚が餌を食べてくれるかどうかという話なので。釣りでいう、食いつかなかったね、あるいは食いついても離脱したね、というだけの話です。

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