トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #21

鹿毛康司氏が語る、AI時代に求められるマーケターの真の役割

 

オフラインとオンラインの融合で実践するファンマーケティング


中村 鹿毛さんが行ってきたような「共鳴」や「共振」を起こすマーケティングのアプローチの仕方に変わらなければと感じている人が多くいると思いますが、その人たちには、どのようなアドバイスをされるんですか。
  

鹿毛 わたしがご支援している森永乳業さんもマスマーケティングを力強く展開されてきた会社さんです。もちろんマスも必要ですが、価値共創を生み出す活動が必要だと、宣伝の責任者さんもメンバーさんたちも本気でそれを生み出したいと悪戦苦闘されています。そういう自主的な取組が大切だと思っています。どうしてかというとマスマーケティングのように誰かに託したらできるものでもないし、企業によってやり方が違うからです。

中村 それはフレームワークをつくれないからないんですか。それとも企業ごとに異なるからないんですか。

鹿毛 ある程度のフレームワークは存在すると思いますが、企業ごとに今までやってきたコミュニケーションの歴史も思想も違いますし、業界によっても違います。お客様の生活の中にどうやって「こんにちは」と入り込んで仲間になり価値共創を生み出すかは千差万別。だから難しいし、それができればとても強いと思います。
  

中村 鹿毛さんから見て上手くいっている事例ってありますか。

鹿毛 ファンマーケティングの事例ですが、お好み焼きのオタフクソースです。世の中でファンマーケティングをやる時の主流はSNSやその他のツール主体の活動です。オタフクソースさんの場合は、どうやれば美味しいお好み焼きがつくれるのかという料理教室を取り組んでこられてきています。お好み焼きを焼く場所を用意してお客様と素晴らしい関係値をつくっている。その上でソーシャルという道具を使ってもっとつよい関係を生み出している。これぞ長年の歴史とオタフクソースさんならではのコミュニケーションのあり方を大切にしている事例ですよね。

一説には、終戦、広島には戦機がたくさんあり、それを鉄板にしてお好み焼きが発展したともいわれています。食品難の中だから卵を持ちこんで焼くのはかなりの贅沢だったらしいのです。

お好み焼きは広島の人たちを支えた文化、そこに本社をかまえるオタフクソース、ソースの製造・販売普及活動と壮大な歴史があります。このように過去から脈々とオフラインで料理教室を実施し、そこに現代のソーシャルを組み込んだファンマーケティングがうまれている。

中村 素晴らしいエピソードですね。以前、この連載で花王の日焼け止めブランド「BioréUV」を担当している小原聡太郎さんにインタビューさせてもらったのですが、オタフクソースと同じようにオフラインとオンラインを融合しているんですよ。

オフラインでは、ファンを全員集めて商品づくりの背景や想いなどを伝える取り組みをしていると話していました。オタフクソースの話を聞いていて、改めてオフラインとオンラインの融合で熱量を高めることが、いかに大切かを感じましたね。

※後編 「人間にしか表現できない“泥臭さ”がAIに勝つ」鹿毛康司氏が語る価値共創時代のマーケティング に続く
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