トップマーケターたちに聞く価値共創時代のマーケティング #25

組織の停滞感を打破する「共創」とは? BIOTOPE佐宗邦威氏が明かす、新たな価値を生み出すU理論

 

アウトプットでは文脈を重要視


中村 U理論は、一般的な理論ですか。それとも佐宗さんが考えたオリジナルな理論ですか。

佐宗 「sensing」「presencing」「creating」という概念は、マサチューセッツ工科大学のC・オットー・シャーマー博士によって生み出された理論に基づいています。その中で、具体的に何を取り組むかは、「みんつく工房」の活動を通して考えました。

中村 その理論が図のような最終形になるまでには、どのような試行錯誤があったのでしょうか。

佐宗 当時と現在で大きくは変わっていませんが、最初の「sensing」のフェーズでは、内省を深めるために、ユーザー視点で問題を解決する「デザイン思考」や全体を俯瞰する「システム思考」、さらにプロトタイピング、観察といった実践的な方法論を組み合わせています。

私は特にデザイン思考を中心に「sensing」の部分を学びました。また、最初にお話した「みんつく工房」のワークショップで「creating」の方法論を学び、それを組み合わせて現在の仕事に生かしています。
  

中村
 細かい点ですが、「シナリオ・プランニング」が、「ステークホルダーインタビュー(経営者や従業員、顧客などのステークホルダーに対してのインタビュー)」の前の段階にあるというのは意外です。

通常は、情報の量や質を理解した上で「シナリオ・プランニング」をするので、逆だと思っていました。インタビューでは、その前段階でプラニングした内容を聞くということでしょうか。

佐宗 いえ、そうではありません。「シナリオ・プランニング」と言っても、ここでは外部トレンド分析の手法に近い、PEST分析に近い意味合いで、情報をまとめるプロセスを指します。外部環境で何が起こるかをスクリーニングする作業です。その情報をもとに「ステークホルダーインタビュー」では、定性的なエモーショナルの部分に入り込んでいき、その後に「コピーライティング」で再び言語化します。

中村 この「ストーリーテリング」は、そのままブランドのナラティブに落ちるのでしょうか。

佐宗 はい、ブランドのナラティブとして結晶化させます。さらに、そこから実際にイノベーションプロジェクトを行うなど、アクションプランに分岐させて、大きく2つに分類します。

中村 そこからさまざまなアウトプットにつながると思いますが、具体的にはどのようなアウトプットが得られるのでしょうか。
  

佐宗 具体例としては、商品やサービスのブランドストーリーや、企業が3年後、5年後、10年後に進めるべきプロジェクトのイノベーションプランまで落とし込みます。アウトプットとしては、商品やサービスの進化のロードマップの場合もあれば、イノベーションプロジェクトの立ち上げにつながる場合もあります。

中村 それは面白いですね。これらが、コミュニケーションプランニングにも結びつくのでしょうか。

佐宗 はい、最近はビジョンやパーパス・ミッションを設定して、それを土台にブランディングに繋げていくプロジェクトが増えています。理念を土台にブランディングをするアプローチをすることで、会社独自のやり方で価値の作り方を生み出していくことができる経営を目指しているお客さん相手にサポートしていくことが多いですね。

※後編 ビジネスシーンで「価値共創」が成り立つ3つのマインドセット【BIOTOPE佐宗邦威】 へ続く
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