鹿毛康司、モダンエルダーを目指す #08

顧客と一番深くつながれる「共感」の正体とは?【鹿毛康司氏・石根友理恵氏】

前回の記事:
鹿毛康司氏が「お見事」と大絶賛、クラフトカクテル「koyoi」石根友理恵氏の人から応援される生き様
「モダンエルダー」という言葉を知っていますか? 若者に耳を傾けて新しいことを受け入れながら、エルダーとしての力も発揮する「職場の賢者」のことを指します。日本を代表するマーケターであり、クリエイティブディレクターでもある鹿毛康司氏がモダンエルダーを目指して、様々な若手にインタビューしていく企画です。

 鹿毛氏は「過去うまくいったことも、今ではうまくいかないことがあります。自分としては、思考能力はまだまだ大丈夫だと思っている一方で、時代との何らかのズレを修正し続けなければいけないと、恐怖を感じているんですよ」と語ります。本連載では「若者に教えてもらう」をテーマに、時代とビジネスの勘どころを探っていきます。

 第7回は、SEAM 代表取締役の石根友理恵氏が登場。石根氏は新卒でサイバーエージェントに入社し、企業のSNSを用いたデジタルマーケティングのサポートなどを経て、2017年にSEAMを設立。同社は「ココロとカラダを満たす食体験を創る」をミッションに掲げ、低アルコールのクラフトカクテル「koyoi」やスパークリングワインブランド「AWANOHI」などを展開。特にkoyoiはアサヒビールと電通デジタルの合弁会社・スマドリとのコラボレーションや、ラグジュアリーホテルへの導入などSNSを中心に話題となっています。前編では、石根氏が参入障壁の高い酒類業界で低アルコール事業を始めた理由や、ブランドに対する考え方を紹介しました。後編では、石根氏自身の生き様や在り方、「共感」に関する考え方とその可能性などについて鹿毛氏との対話を通じて紐解きました。
 

「みんなが自分で選択できる」そんな世界を広げたい


鹿毛 前半では石根さんご本人に焦点をあててお聞きしてきました。さて、10年後はどこまで事業を展開していきたいですか。

石根 10年後は、私たちのつくる商品がたくさんの人の手に取られて、その人たちの明日の元気をつくっているということが一番のイメージです。お酒という商品はロジックではなく直感的に選ぶことが多いと思いますが、人生の豊かさや自分らしさは「自分で選択できる」という点にあると思っています。なので、「お酒も自分で選択する」という世界をつくりたいと思っています。
 
SEAM 代表取締役
石根 友理恵 氏

 広島県出身。神戸大学国際文化学部卒業後、サイバーエージェントに入社し、企業のSNSを用いたwebマーケティングサポートに従事。創業期のワンオブゼムに転職し、マーケティング部門の立ち上げを行う。2017年に株式会社SEAMを設立。「ココロを満たしカラダにやさしい食体験を創る」をミッションとし、低アルコールD2C事業を展開。ファーストブランドkoyoiを切り口に、様々なコラボを実現しながら低アルコール市場のトップランナーを目指す。

鹿毛 10年後も、お酒にこだわっていますか。

石根 正直、お酒はひとつのステップだと思っています。もっといろいろなライフスタイルブランドを展開し、そこにその人の選択肢が生まれるようなものをつくっていきたいと考えています。

鹿毛 「石根友理恵」として、生きるとは何なのかをずっと考えているんですね。

石根 そうだと思います。
 

ハードルを面倒だと思わず、立ち向かう


鹿毛 お酒は酒税法にがんじがらめに守られていて、すごく面倒くさいじゃないですか。途中で嫌にならなかったのですか。
 
かげこうじ事務所 代表 マーケター クリエイティブディレクター
鹿毛 康司 氏

 2020年、エステー クリエイティブディレクター(役員)を退任して現在にいたる。 早稲田大学商学部卒、ドレクセル大学MBA。現在は森永乳業、ほけんの窓口、バーガーキング、ベストコ(塾)会社など様々な企業のマーケティングとクリエイティブの支援をおこなっている。同時にグロービス経営大学院(MBA)教授として社会人学生にマーケティングを指導。2021年には著書「心がわかるとモノが売れる」で、マーケティングに必要なインサイトと人間理解論を実務家の視点で発表した。今年7月26日悩める若手マーケターを応援するためにと「無双の仕事術」を発表。マーケティング立案、特に時代に新しいコンテンツマーケティングやファンマーケティングも得意とする。クリエイターとしてもCMプランナー/監督/コピーライター/作詞作曲などもこなす。2011年の東日本大震災直後に手がけた「消臭力CM」は好感度日本1位を獲得)。ACC Gold、マーケターオブザイヤー(MCEI)、WEB人貢献賞など受賞。

石根 私は、1度も面倒くさいと思ったことがないんです。ハードルがあると、逆に「絶対やってやる」と思って突破してきました。

鹿毛 クレイジーですね(笑)。ハードルがあると立ち向かう人。

石根 まさにそうですね。

鹿毛 怖さみたいなものはないんでしょうか。

石根 怖いですね。

鹿毛 あれ、一応、怖いんだ。じゃあ、その怖さはどうやって取り除いていますか。

石根 取り除くというよりは、それをいかにバネにするかを考えています。「怖い」という気持ちは感じていいものだと思っているので、そこをどのようにいいポイントにしていくかを考えていますね。あと、本当に実現できるのかなという不安があるときは、サウナに行って無になっています。
  

鹿毛 ちゃんと無になることができているんだ。

石根 はい、不安をなくすには、無になることが一番かもしれないですね。

鹿毛 読者になかなか文字では伝わらないとおもいますが、普通、こういう台詞をビジネスパーソンはちょっとかっこつけて口にすることはありますが。しかし、こうやって石根さんと直接お話ししてわかるのですが、本当に心から思われているんですよね。

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