食のビッグデータ最強タッグ「クックパッド×ぐるなび」のトレンド分析 #03

クックパッドとぐるなびのデータを組み合わせることで見えてきた、内食と外食トレンド(例:チーズタッカルビ)

レシピ量からブームの発生を分析

 クックパッドに掲載されているタッカルビのレシピは、2018年8月末時点で全594品が投稿されている。
 一方で、2009年当時は、約50品程度しかなく、毎年数十レシピずつの投稿しかなかった。それが、2017年に投稿量が急増していることがわかる。その投稿量は2016年比で、約14倍。2018年は、約24倍と2017年には入ってからの投稿量が急増していることがわかった。(図2)
 
図2.タッカルビレシピの投稿量
 では、なぜこれほどまでに、投稿量が急増するのか。

 その理由のひとつが、クックパッドのレシピサービスタイプが、ユーザー投稿型であることが考えられる。
 
図3. 3つのレシピサービスタイプ
 こうしたユーザー投稿型レシピサービスは、レシピを参考にして調理したいユーザーが訪れ、そうしたユーザーが調理した際のレポートなども掲載されている。クックパッドの場合は、投稿されているレシピをユーザーが実際につくり、その感想を写真付きで投稿する仕組みである「つくれぽ」という機能がある。

 この機能により、実際にレシピを投稿したレシピ作者に「あなたのレシピをつくりました、美味しかったです! ありがとう」という感謝の気持ちを写真1枚と32文字で送ることができ、コミュニティを形成できるというわけだ。

 こうしたコメントなどが多数投稿されていくことで、レシピが人気化し、レシピ閲覧量が増え、投稿量も増える自発サイクルが生まれる。このサイクルがうまれることで、他メニューへのアレンジしたレシピなどが生まれ、新しいトレンドが生まれていくことも少なくない。

 チーズダッカルビを例に、どのようにメディアにとりあげられ、外食・内食でどのように変化をしていったかは、ここまでに解説した通りである。

 では、ぐるなびの取扱店舗指数とクックパッドのレシピ検索指数の2変数の間の類似性の度合いは、どの程度の相関性があったのか。いくつかのキーワードをピックアップし、類似性の度合い(相関係数)を確認したところ、チーズタッカルビ/タッカルビのスコアがもっとも高い結果となった。(図4)
 
図4.内食と外食の関係
※内食でのトレンドを示す、クックパッド検索指数(1000回あたり検索)と外食でのトレンドを示す、ぐるなびの取扱店舗指数(1000店あたりメニュー掲載)、双方のweeklyデータを利用し、同一キーワードの単相関係数を確認した

 チーズタッカルビ/タッカルビ以外に目を向けると、ジャーサラダ・ジビエ・魯肉飯なども、取扱店舗指数とレシピ検索指数の上昇タイミングの一致度が高いことがわかった。

 これらに共通してみられる傾向として、食卓へ提供される際の付加価値性の程度が関係しているのではないだろうか。

 チーズタッカルビ/タッカルビなどを代表的に、上昇タイミングの一致度が高いキーワードは、主菜・主食など食卓上でメインとなりうるレシピが並んでいる。

 内食の場合、毎日の食事であるために、その調理頻度は外食の利用頻度に比べて高く、食卓へ提供するためには事前の調理行動が必然的に必要となり、簡便性や節約性などが重視されることになる。また、単身世帯と共働き世帯の増加などのマクロトレンドを鑑みれば、その傾向は顕著に上昇している。

 チーズタッカルビ/タッカルビも同様であり、下味をつけて炒めるだけで簡便性は高い。また、メインとなる食材は鶏肉と三畜肉の中ではもっとも単価が低く、節約性も兼ね備えているといえる。
 

上昇タイミングが低いキーワードの特徴とは

 それに対して、上昇タイミングの一致度が低いキーワードとしては、ダッチベイビー・エッグタルトなどの非メインレシピ・キーワードみられた。

 ダッチベイビーとは、オーブンで焼き上げたドイツ風のパンケーキのことであるが、イベント要素が強い非日常食であることから考えると、クックパッド内でのレシピ検索頻度も、検索されるタイミングは限定的である。また、ぐるなびの取扱店舗は居酒屋業態が中心となっているため、取扱店舗指数としてのトレンドは表面化しにくいと考えられる。同様なキーワードには、エッグタルトやたまごサンドも確認できた。

 また、上昇タイミングの一致度が低いキーワードとしてあげられるキーワードとして、キヌア/チアシードや熟成肉も確認できた。

 外食の場合、飲食店は自分の店舗がどういう付加価値で選ばれているのか、選ばれたいのかを起点に提供するレシピや店舗タイプが変わる。

 言い換えると、プロが消費者の立場で自業態の姿を問う必要があるため、他店とは違う差別化された価値を提供することになる。そのため、提供される食材のグレードや産地などへのこだわりが実体化してくる。素人では調達しにくい食材や調理技術の必要な料理は外食での利用が中心となるというわけだ。
 
  • 食材 - 産地、グレードなど
  • 調理・提供方法 - レシピ、調理技術など
  • 空間・接客 - 祝い事、非日常性など
  • ストーリー性 - 料理・食材にまつわる伝統性など

 チーズタッカルビブームを外食からの観点を中心に紐解き、内食と外食双方のデータを組み合わせることで、チーズタッカルビが内食ではどういった拡がりをもっているのか、家庭で提供される時にはどのような工夫がなされていたのかといったことを解説した。

 しかしながら、チーズタッカルビのように継続的なブームとなるものもあれば、瞬間的・断続的にブームが発生するものも存在する。次回は、内食と外食双方のデータを組み合わせることでみえた、継続的・断続的なブームの違いについてご紹介する。
 
続きの記事:
サラダのトレンドは、内食と外食で違う?【ぐるなびとクックパッドから見えてきた食トレンド】
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