新・消費者行動研究論 #08

銀座という街は、どこが優れているのか。【慶應義塾大学 清水聰】

前回の記事:
商圏は「距離」ではなく「移動者」、モバイルから新たな顧客が見えてくる【慶應義塾大学 清水聰】

調査から見えてきた、銀座ブランドのすごさ

 仕事柄、学会などで日本各地に出張するが、出張先で「○○銀座商店街」に出会う。でも不思議なことに「○○新宿商店街」という商店街にお目にかかったことはない。銀座と同じく、東京有数の繁華街にも関わらず、である。

 それだけ銀座は特別なエリアで、地方の商店街の名前になるぐらい、ブランド力があると言えるだろう。

 では、銀座のブランド力とは何だろうか。



 今までも「銀座ブランド」に関する研究は多かった。ただその中身は、「銀座の柳の下の・・・」とか、「銀座和光は・・・」といった歴史的文化論的解明がメインで、数量的に銀座の価値を測定した試みはあまりなかった。

 もちろん、「神戸発のケーキ」と言われれば、何となく西洋の香りがしたり、「京都発の和菓子」と言われれば、本格的な感じがしたりするように、その街の歴史に基づいて形成されるブランド力は存在するので、歴史や文化に基づいた考察は大事だ。しかし街のブランド力は、そこに住む人や、その街を利用する人との相互作用によって形成されることもまた事実なので、その街の住民や利用者の研究も大事である。

 そのような視点から、前回お話したモバイルでの人の移動を組み込んだ銀座の研究を、銀座について長年、調査してきた公益財団法人ハイライフ研究所と一緒にしている。

 実際に、銀座に来て歩き回っている人の数値的なデータから、銀座のブランド力を測定する試みだ。詳細は、来年出版される当研究所の報告書に委ねるとして、ここではそのエッセンスを簡単に紹介しよう。

 まず銀座を250mメッシュでいくつかに分割し、その動きを観察すると、銀座に来る人は、有楽町をゲートウェイにしていることがわかった。

 銀座の地下には縦横無尽に地下鉄が走り回っていて、しかも銀座4丁目の交差点に出口があるので、てっきり地下鉄が強いのかと思っていたが違った。「JR、恐るべし」である。

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