新・消費者行動研究論 #08

銀座という街は、どこが優れているのか。【慶應義塾大学 清水聰】

年配者と若者で、棲み分けが起きている

 その銀座での回遊状況と消費者属性を組み合わせると、より面白いことがわかってきた。たとえば、銀座3丁目から4丁目付近の老舗デパートの利用者は、年齢が高めだが、収入が非常に多く外車所有率も高かった。

 同様に、東銀座界隈を回遊している人も「観劇」を趣味とする年配層が多く、所得も高かった。いわゆる「銀座」の一般的なイメージを構築している人は、そのあたりを回遊していることがわかる。



 これに対して、若くて情報感度の高い人の回遊は、年配者と異なっていた。まず情報感度で見ると、情報感度の低い人が250mメッシュのひとつか2つしか動かないのに対して、情報感度の高い人は、数多くのメッシュを歩き回っており、いわゆる「銀ブラ」をしていることがわかった。

 彼らは、有楽町から銀座一丁目界隈の、各県のアンテナショップが並んでいるところを回遊し、マロニエゲートや東急プラザの利用率が高く、老舗百貨店はあまり利用していない。銀座の中で、上手く若い人と年配の人の住み分けができていた。

 さらに、その情報感度の高い人たちは、銀座1丁目からその北に広がる、京橋や日本橋方面に足を延ばしていることもわかってきた。京橋、日本橋界隈は、新しいビルができ、日本橋高島屋や日本橋三越が改装を終えたところだが、その結果がしっかり表れていたのだ。
 

やはり銀座は、すごかった

 最後に、もうひとつ。これも前回紹介した「ブランド・アドミレーション」の尺度を用いて、銀座利用者と新宿利用者で、それぞれの街のブランド力に違いがあるのかを調査した。

 それによると、新宿は「この街だけで多くのことが済ませられる」「効率的に用事を済ませられる」といった「街の利便性」に関する項目の得点が高くなるのに対して、銀座は「街並みが好き」「この街にある施設・店舗が好き」といった「街の魅力」に関する得点が高くなった。

 これら「街の利便性」「街の魅力」に「街との関係性」の得点を加えた総合得点では、銀座は新宿の倍近くのスコアを叩き出し、ブランド力が非常に高いという結果になった。

 若い人と年配の人が上手く住み分け、その誰もが街の魅力を感じる街、銀座。やはり銀座はすごかった。
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