マーケティングは、どこまで人間を理解できるのか #29

「ピッカピカの1年生」「プリプリの海老」 感覚間協応が顧客のインサイトを刺激する

前回の記事:
「人間の嗅覚はオワコンではない」共感覚比喩によるコミュニケーションを考える
 

クロスモーダル効果と感覚間協応


 前回の記事で、「共感覚比喩」(楠見・米田, 2007)の話題に触れました。「やわらかい色(触覚⇒視覚)」や「明るい声(視覚⇒聴覚)」のように、もともと別の感覚を説明する言葉だったものを他の感覚の修飾に流用する方略でした。

 これを一歩引いて考えてみると、別々の感覚の間の相互作用は、言語を介さなくても、日常的に絶えず生じています。たとえば、この時期各地で花火大会が行われていますが、ドーンという音(聴覚)やそれがお腹に響く(体性感覚)感覚で、視覚的な美しさや迫力が増長されているでしょう。夏といえば、シロップの色(視覚)によってかき氷の味(味覚)の知覚が変わるのも、よく知られた現象ですね。

 このように本来は別々である感覚同士が互いに影響することは、「クロスモーダル現象」や「クロスモーダル効果」などと呼ばれ、さまざまな側面から研究され、応用もされてきました。古くは100年ほど前の研究で、視覚として入ってくる色の情報が体感温度に影響することが報告されています(Mogensen and English, 1926)。同様に、/a/と/i/の母音がそれぞれ視覚的に大きいものと小さいものの印象を与えるという報告も1920年代になされました(Sapir, 1929)。

 このクロスモーダル効果が生じる背景の一つに、「感覚間協応」(Crossmodal Correspondence)があります。「明るい―高音」(Marks et al. 1987)、「暗い色―重い」(Walker et al. 2010)、「丸みを帯びた形状―甘い」(Ogata et al 2023)など、もともと無関係な情報間の結びつきを指します。有名なブーバキキ効果を思い浮かべると、具体的にイメージしやすいかもしれません(Ramachandran and Hubbard, 2001)。「ブーバ」「キキ」がそれぞれ下のどちらの形状に適合するか問われると、左が「キキ」で右が「ブーバ」ですよね。

 


前回からの流れもふまえ、この機会に感覚間協応について考察して、クロスモーダル効果の活用のヒントを探ってみたいと思います。

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