SXSW現地レポート #02

TwitterがSXSWに凱旋。嫉妬を覚えるほどの企画で、まだ見ぬ潜在能力を披露【奥谷孝司・風間公太 現地レポート】

前回の記事:
テクノロジーの先進性を競う場から、“体験の創造”の場へ【奥谷孝司・風間公太 SXSW現地レポート】

Twitterの「言葉を超えた言葉の世界」

 第1弾レポートで、SXSWが体験の場へと変容していることに言及したが、第2弾では今では当たり前のように我々が接している現代社会を象徴するデジタルとリアルの融合体験であるSNSを活用した事例を中心に紹介したい。

 140文字(半角では280文字)のTweetがここまで五感を刺激する体験に進化するのかと、来訪者に驚きを与えた展示イベント「The Donald J. Trump Presidential Twitter Library」だ。

 アメリカのケーブルテレビチャンネルComedy Centralの人気番組「The Daily Show」が企画し、これまでもニューヨークやサンフランシスコ、シカゴなどで実施されてきた展示が、満を持してSXSWに登場した。

 筆者の一人である風間は、企業ソーシャルメディアのアカウント運用担当を10年余り務めてきたが、この展示を見終えた感想が感動や興奮ではなく“嫉妬”だったとお伝えすれば、その魅力の一端を感じてくれるだろうか。

 2007年にSXSW Web Awardを受賞して一躍注目を集めることになったTwitterの凱旋公演とも呼べる、“言葉を超えた言葉の世界”をご案内しよう。
 

立体化した言葉に包み込まれるような展示の数々

■TRUMP NICKNAME GENERATOR


 SXSWのメイン会場であるオースティン・コンベンション・センターから10分ほど歩いた場所に位置するThe Driskill。格調高きホテルの2階が今回の展示会場だ。

 絢爛豪華な装飾が施された室内で、まず来訪者を出迎えるのが「TRUMP NICKNAME GENERATOR」。これまで数多くの著名人や政治家に辛辣なニックネームが付けられてきたように、タブレット端末にファーストネームを入力すると、「それらしい」ニックネームが生成される。ちなみに筆者の風間に与えられたニックネームは「ShrinKing Kota(シュリンクしていく公太)」だった。

■TWEET CHRONOLOGY


 会場スタッフの手でニックネームが記入されたパスを胸に貼り、次の展示に進むと、そこにはTwitterを通してユーザーとつくり上げてきたデジタルとアナログの融合体験の歴史が壁一面に設置された年表で表現されている。

 2008年までの“BEFORE TWITTER”に始まり、Twitter開設以降が数年ごとに“THE BRONZER AGE”(小麦色時代)、“THE CRANIUM EXPLOSION”(頭蓋骨爆発)、“THE FEUDAL PERIOD”(封建時代)、“THE GILDED AGE”(金メッキ時代)と、皮肉たっぷりの名称で括られ、各期間で話題となったTweetが並ぶ。

 今回の展示で一貫しているのが、企画者たちの風刺、皮肉、ユーモアの視点だが、それを徹底的に磨き上げたクリエイティブで表現することで、見る側の没入感をより一層高めている。次の大統領の発言の矛盾をテーマにした展示もそうだ。

■TRUMP v. TRUMP


 SNSは必ずしも第三者への発信だけでなく、自らの日記や備忘録のように利用することもあり、その発言に一貫性が無いこともあるだろう。「TRUMP v. TRUMP」は、そのような発言の矛盾を、いくつかのテーマで括った展示だ。

 大統領の発言となれば、同じ一人の人間の発言から生まれた矛盾さえコンテンツ化されてしまうが、政治の話題からゴルフまで、膨大なTweetの中からそれを対立構造として表現する企画者たちの選定眼は見事だ。

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