【速報】カンヌライオンズ2019現地レポート #02

「カンヌライオンズ2019」変革は、道半ば。それでも刺激的で、大事なことを教えてくれる

前回の記事:
「カンヌライオンズ2019」大変化から1年を経て、どうなった?【多摩美術大学 佐藤 達郎】
 カンヌライオンズの第一の魅力は、世界から集まる事例とそのキュレーション機能です。カンヌライオンズが「贈賞」という形で見るべきものを教えてくれるので、皆が参考にできる。そしてさらに、300以上あるセミナーで、より整理された知見に触れることもできるのです。
 

分かりやすさのためのはずが、返って分かりにくい

 
贈賞式に見入る参加者たち。
 前回のレポートでお伝えしたように、今年は、昨年導入された「9つのトラック」がより打ち出されています。

 この9つのトラックについて復習しておきましょう。①コミュニケーション、②クラフト、③エンターテインメント、④エクスペリエンス、⑤グッド、⑥ヘルス、⑦インパクト、⑧イノベーション、⑨リーチとなります。
 
ライオン(部門)ごとに事例ボードや作品が展示されている

 昨年は明確な定義が無かったように思うのですが、今年はそれぞれの定義がきちんとなされています。9つすべてを確認するのは、なかなかに大変なので、ここでは、①コミュニケーションと⑨リーチについて、見てみましょう。

 まず、①コミュニケーションは、「そのキャンペーンが素晴らしい生活をもたらすような、実行に移されたクリエイティブなアイディア」と定義されていて、フィルム、アウトドアなど古くから存在するライオン(部門)がメインとなります。

 それに対して、⑨リーチは、「ブランドが効果的に消費者にアプローチするための、インサイト/ストラテジー/プランニング」という定義になります。僕なりに解釈してみると、この2つのトラックは、広告ビジネスの中核であり、従来の考え方で言えば、「クリエイティブとメディア」と考えることができるのではないでしょうか。

 セミナーについては、この9つのトラックに加えて、今年はさらに「10のテーマ」も設けられました。「ブランド・イン・カルチャー(カルチャーの中のブランド)」や「プルーヴィング・ザ・バリュー・オブ・クリエイティビティ(クリエイティビティの価値の証明)」など、そのセミナーのメッセージや内容によって分類されています。トラックもテーマも、Webサイトやスマートフォンアプリでは、検索をかけて該当するセミナーが選べるようになっているというわけです。

 果たして、トラックとテーマ、この2つの施策は、上手くいっているでしょうか? 昨年の記事にも書いたように、9つのトラックについて僕自身は「ナイス・トライ!」だと思っています。

 しかし、そこにさらに10のテーマが加わると、いかにも分かりにくい。どちらにもそれなりの意味はあると思うのですが、使い勝手は決してよくない。分かりやすさのための施策のはずが、返って分かりにくくなっている。そんな印象を持ちました。
 
カンヌライオンズ会場内の様子
 
初日、月曜の午後には、赤絨毯の準備も整って。

 さて、ここまでの開催分だけでも、興味深いセミナーが幾つかあったので、ご紹介して行きましょう。ここでは、トップ・クリエイターによる2つのセミナーを取り上げたいと思います。

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