海外ニュースから読み解くマーケティング・トレンド #06

人の力を引き出す「共感力(Empathy)」の大切さ【ニューバランス 鈴木健】

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中国の企業だけが、なぜGAFAに勝つことができるのか【ニューバランス 鈴木健】

ジム・ステンゲル氏 著書には書かれていない「生きた学び」


 ナノベーション社の主催するジム・ステンゲル塾に参加する際に想像したのは、彼が著書『GROW本当のブランド理念について語ろう 「志の高さ」を成長に変えた世界のトップ企業50』で提唱するブランドのパーパス(目的)について直接学ぶことだった。ただ、実際に8時間の講義で彼から学んだのは、それとは違うことだった。

 彼からその著書以上の知的なインプットを期待した人にとっては、彼が個人的なマイルストーンをもとに「個人的な学び」としてのブランドパーパスの意義を伝えたことは、少々拍子抜けだったかもしれない。

ジム・ステンゲル氏は、P&Gで2008年までの7年間、グローバルマーケティングオフィサーとして全世界のマーケティングを指揮し、同社の売上を2倍、利益を5倍、時価総額を2倍にさせたことで知られている。P&Gの退任後は、Jim Stengel Companyを設立し、複数のグローバル企業のアドバイザーやケロッグ経営大学院の助教授などを務めている。

 もちろん彼自身は、パーパスの詳細な定義による指南型の講義ができないわけではないと思うが、そうしたフレームワークをさらりと流してしまうことは、もっと大事な点を伝えるためであった、と自分には感じられた。

 それは、彼の言葉で言えば「優れたリーダーシップ」であり、最近自分が書籍(後述する)から学んだことで言えば、「思いやり(Compassion)」であり「共感(Empathy)」である。そのことを勘違いしてしまうと、逆にジム・ステンゲル塾からはほとんど学ぶことさえ難しいと思う。
 
2019年5月27日に行われた、ジム・ステンゲル塾の様子。

 ジム・ステンゲル氏は、その意味で徹頭徹尾「生きた人間」の話をしていた。生きた人間において、彼らに「従ってもらう」ためには、ルールや権限をふりかざすのではなく、そのことの意義を本人に理解してもらえない限り、不可能である。それはトップダウンの命令や指示だけでは難しいし、限界があるのだ。それはフレームワークについても同じである。

 いくら頭がいい人が理解して分析するフレームワークが素晴らしくても、生きた人間を動かすことができなければ、何の意味もない。リーダーシップとはそういうものであり、マーケティングが世の中を動かすことと同じである。

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