アセアンのリアルな生活者の姿を追う #03
アセアンの生活者にとって、消費は将来の収入のための投資行動?【博報堂生活総研アセアン 帆刈吾郎】
クアラルンプールでお会いしたエステティシャン
今回は、マレーシア・クアラルンプールでお会いしたマレー系の生活者についてご紹介します。写真の右の方が今回の対象者で、この方は普段はエステティシャンとして働く、SEC(社会経済階層)で言えば、Bクラスに属する方です。
SECの規定は、調査会社によって異なる部分もありますが、主に世帯月収をもとにA・B・C・Dなどに分類します。その上で、A以上をアッパークラス、B・Cをミドルクラス(中間層)とみなす場合もあります。
今回の対象者は、SECでBクラスに属していますので、中間層に位置付けられる人だと言えます。
お話を伺ううちに分かったのですが、彼女はトランスジェンダーでした。私たちがこの家庭を訪問した際、少々警戒されていたため、家庭訪問の意図を伝えると、当初トランスジェンダーに関するインタビューと思っていたため、どのようなことを質問されるのかと、身構えていたということでした。
普段の生活や働き方についてのインタビューです、とお伝えすると少し不思議な顔をしていましたが、気さくに話を聞かせていただけました。
彼女は養子をもらって育てており、兄弟2人と合わせて4人で暮らしています。4人家族の生活を一手に引き受けているため、毎月それなりの支出があるようです。
そこで、月々の収入と支出について一つひとつ細かく聞いていくことにして、家賃、光熱費、食費などの支出をお聞きした上で、それらをすべて足し合わせると、エステティシャンとしての収入額よりも、支出金額の方が多くなってしまう感じです。
家庭訪問で話を伺う中で、話のつじつまが合わない場合がたまに起きます。そういう場合、必ず矛盾した部分について再度、詳しく確認することが大事です。生活の機微にまつわる話は、そういった矛盾の中にあることが多いのです。
今回も、「収入よりも支出が多いようだけれど、実際どうやって生計を立てているのですか?」と改めて話を振ってみます。