アセアンのリアルな生活者の姿を追う #04

タイの夫婦は、どう家事分担しているのか?日本との違い【博報堂生活総研アセアン 帆刈吾郎】

前回の記事:
アセアンの生活者にとって、消費は将来の収入のための投資行動?【博報堂生活総研アセアン 帆刈吾郎】

バンコクでお会いした伝統的な役割分担の夫婦の話

 近年、日本でも話題になることが多い、「家庭における夫婦の役割分担」についてアセアンに住む生活者の意識と実態をご紹介します。アセアンの国々で暮らす夫婦は、どのように家事や育児などの役割分担を考えて、実行しているのでしょうか。

 夫からの目線、妻からの目線をフェアに理解するため、インタビューは夫と妻を別々に行い、夫婦それぞれが役割分担についてどう思い、家庭での行動にどう反映されているのかについての本音をできるだけ引き出すよう努めています。
 

 今回、ご紹介するのは、タイ在住の夫のタオさん37歳と、妻ポーさん31歳。

 夫は鉄道エンジニアで、妻は専業主婦です。夫の月収は6万バーツ(約20万円)、取材当時結婚5年で、4歳と1歳の子供がいます。

 この夫婦は、「夫は外で働き、妻は家を守る」という伝統的な夫婦の役割分担の認識を持っています。では、具体的に夫、妻はそれぞれ現在の夫婦の役割分担についてどう考えているのでしょうか。
 

夫タオさんの話

 一般論として男女平等についてどう思いますか?

 「すでに男女平等な世の中だと思う。会社にも女性のエンジニアがいて、同じ仕事をしている。性別は重要ではない。仕事において、男女の違いはないと思います」

 では、家庭での夫婦の役割はどうでしょう?

 「家庭では、夫婦は平等ではないと思うよ。夫婦それぞれが得意なことに集中すべきだと思う。これはカルチャーだから。自分は、男は家族のリーダーである必要があると母からずっと言われて育ったから。でもうちの夫婦関係は、平等だよ。よく話を聞くし、一緒に買い物に行くし、自分で全ての物事を決めているわけではないし」

 そうですか、では家事や育児はどのように分担していますか?

 「アイロンがけは自分がやるよ。それ以外の家事は妻の仕事。でも妻が忙しいときは、洗濯や食器洗いも手伝うよ。妻 を助けるためベストを尽くそうとしているよ」

 自分自身に点数をつけると100点満点で何点だと思いますか?

 「99.99点かな。残りの0.01はお酒を飲むこと。もしお酒を飲まなかったら100点満点だよ!」

 なるほど、ありがとうございました。
 

妻ポーさんの話

 一般論として男女平等について、どう思いますか?

 「昔よりは平等になっていると思う。自分が子供のころは、男性に色々頼む必要があったが、今は何でも自分でできる」

 では、家庭での夫婦の役割はどうでしょう?

 「平等ではないと思います。私が妊娠して仕事を辞めて以来、すべての家事は自分がしています。彼は掃除でもなんでもやろうと思えば手伝えるのに、絶対にやろうとしない」

 家事や育児はどのように分担していますか?

 「彼は家では何もやってくれない。これまでいくら頼んでも、皿洗いすらしてくれないので、最近は自分も言うのを諦めた。旦那は家に帰ってくるとすぐお酒を飲み始めて、深夜2時くらいまでずっとお酒を飲み続けている。何かあると、『自分は働いている、一家の大黒柱は俺だ』といって聞く耳を持たない。家族の一員でもあるのだから、少しは家のことも手伝ってよ!」


 
 少しは家事も手伝って欲しい、と主張する妻ポーさん

 それほど全く家事や育児を手伝わないのですか?

 「やるのは友だちを呼んでバーベキューをするときの準備だけ。子どもとの写真はいいパパのように映っているけど、外見だけがいいのよ。この間、酔っぱらいすぎて転んで指の骨を折ったので、その時の写真をFacebookにあげてやったのよ」

 それはちょっと腹いせ的な気持ちからですか?

 「そうよ、ちょっと、ざまあみろ、みたいな気持ちもあったわね」
 

 妻ポーさんが腹いせにアップしたFacebookの写真

 そうですか、では旦那に点数をつけると100点満点で何点だと思いますか?

「60点がいいところ。足りないのは、もう少し家のことを手伝ってもらいたいです。別に50対50で同じだけやってほしいとは思っていなくて、家事と育児を一人でやっている大変さを理解して、少し手伝ってほしいだけなのです」
 

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