【速報】カンヌライオンズ2024現地レポート #04
カンヌライオンズ2024 話題作を3つの特徴で分析「社会課題解決は、啓蒙から実効性へ」
早いものでカンヌから帰国してすでにひと月ほど経ちます。今回は、現地視察報告の第4回目(最終回)として、気になる事例を紹介したいと思います。2万6753点にも及ぶ応募作のうちゴールド以上の受賞作はわずか1%ほどだと言いますが、それでも250点もあることになります。それらすべてをいくつかの傾向にまとめることは不可能です。そのため、あくまでも私の視点に引っかかってきたものとして、3つの特徴にまとめてお送りします。
仏ルノー社が「公共交通砂漠」の解決に挑む
ひとつ目は、「社会課題解決は、啓蒙から“実効性”へ」という特徴です。カンヌライオンズと言えば、社会課題解決もの、ということは、今や広く知られている現象です。数年前までは、こんな社会課題に注意を向けましょう!といった啓蒙を主とした受賞作が多く見られましたが、今年(2024年)で言えば、企業やブランドが単なるコミュニケーションとしてではなく、何らかの施策の実施を通じて、“実効性”を持って社会課題解決に挑んだものが多く見られました。
例えば、 SDG‘s部門グランプリなどを受賞した仏ルノー社の「Cars to Work」です。フランスでは、クルマが無いと働きに行けない「公共交通砂漠」とでも言えそうな地域が広く存在し、2700万人が職を得て働きに行くためにクルマを必要としていると言います。しかし数カ月の試用期間中は収入も安定せずクルマを買えないため、結局就職をあきらめざるを得ない人が数多く存在していました。
そこで「Cars to Work」では、試用期間の間は無料でクルマを提供し、試用期間終了後に購入契約をすれば良いようにしたのです。社会課題を実効的に解決した例と言えるでしょう。
シェーバーなどを販売するフィリップスの「Refurb」も、この特徴を持つ事例です。クリエイティブ・ビジネストランスフォーメーション部門グランプリなどを受賞しています。
現在では、オンラインショップで購入されたギフト商品の返品が1000万点にも及び、e-waste (電気製品ゴミ)として社会問題化、最終的には埋立地の素材として使われていると言います。返品された品物は使われたものではないので、再製品化が可能です。しかし、メーカーにとっては多くの場合、返品された商品を、開封し、チェックし、再度パッケージ化して搬送して売り出すのは、新商品を作るよりも高くつくので、実施されていませんでした。
フィリップスは “返品製品”を商品化し、“Better than New”と銘打って売り出しました。その際、一般的な商品よりも安い価格とし、さらにより長期の保証も付けたのです。
さらに、製造した“返品製品”がすべて売り切れるまでオンラインショップでの一般的な商品の発売を取りやめて、みごとに実効的に解決しました。