HANNOVER MESSE 2025 現地レポート #03

ソニーのAI搭載センサーや住友電工の革新素材、「Hannover Messe 2025」で示した日本の活路【電通 森直樹氏】

前回の記事:
ドイツのSIEMENS「Hannover Messe 2025」展示は、日本企業にとって見習う点が多い【電通 森直樹氏】
 

ハノーファー・メッセに出展していた日本企業


 ドイツのハノーバーで行われた世界最大規模の製造業のカンファレンス「Hannover Messe 2025(ハノーファー・メッセ)」レポートの第3弾は、出展する日本企業に注目してレポートする。日本勢は、中国勢に比べ出店社数や出展規模は、まだまだ小さく発信の余地があるように感じた。

 また、主催者発表によると、来場者数はドイツが1位、中国が2位、日本が7位だった。ちなみに韓国は5位になる。出展に関しても、同様の印象を受ける。今回は、私が直接お話をお伺いできた、ソニーセミコンダクタソリューションズや住友電気工業、ジャパン・インダストリー・パークを紹介する。さらに、会場の雰囲気も展示物の写真を中心にお届けしたい。
 

AI搭載のチップを内蔵するイメージセンサー


 ソニーセミコンダクタソリューションズは製造業のデジタルツイン(現実の世界から収集したデータを基に、まるで双子であるかのように、仮想空間上に現実世界を再現する技術)化やフィジカルAI(AIとロボット技術を組み合わせ、現実世界で自律的に判断・行動できるシステム)の拡大に伴い需要の拡大が期待されるイメージセンサーを出展している。

 今回は、AI機能を内蔵したチップをイメージセンサーに内包させることで、エッジ側(クラウドではなく、ユーザーやデバイス側)で画像をAIが解析し、必要なデータだけを送信できる仕組みを紹介している。これにより、クラウドの計算機能や通信帯域の節約ができるという。同社は、産業機械メーカーや実装ベンダー、コンサルティング会社への売り込みを目的に出展している。
      
 住友電気工業は、ハノーファー・メッセ内の水素や燃料電池の展示会「Hydrogen & Fuel Cells EUROPE」にて、先進素材であるセルメット(骨格が3次元網目構造の金属多孔体)を紹介していた。これは金属なのにスポンジのような構造を持ち、非常に軽く、柔軟性に優れた新素材で、自動車用の電池から水素製造装置、燃料電池まで幅広く活用されるとのこと。カーボンニュートラル社会の実現に貢献する新たな素材として期待し、注目されている。2024年はプロトタイプを展示し、今年は実物を出展することができたそうだ。
     
日本国内の複数の外郭団体および民間企業による共同ブース「Japan Industrial Park(日本工業団地)」

 Japan Industrial Parkでは、日本企業のコラボレーションが標榜され、産業連携の実現に関わる外郭団体の取り組みが紹介されている。また、この展示ブースはアビームコンサルティングがリードして運営されており、産業連携の可能性について同社の知見を提示している。会場では、来場者(主に日本人)間のコミュニケーションを円滑にできるような掲示板サービスや、交流を促すアフタービールイベントなどが行われたそうだ。
       

CESやSXSWにはない、産業機械の臨場感


 ここからは、私自身がハノーファー・メッセならではだと感じたモノをいくつかピックアップしてレポートする。

 まずは、展示される「モノ」の迫力だ。AmazonのAWSやMicrosoft、Google、SAPなどの米国を中心とするビックテック企業や、戦略コンサルティングファームのブースも多くの産業機械やロボットがデモ用として展示されている。これは、世界最大規模のテクノロジーカンファレンス「CES」や携帯業界の見本市「MWC(モバイル・ワールド・コングレス)」、世界最大級のビジネスカンファレンス&フェスティバル「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」などでは観られない独特な光景であった。

 特に関心したのは、大きな「モノ」を単なる見栄えとして展示しているのではなく、ソフトウェアやクラウド側との連携を説明するために、ダッシュボードと連携したデモを行っていることだ。インパクトもあるし、機能的な説明がしっかりと示されている。これらは、各社が毎日数度に渡って行われるブースツアーでも価値を発揮しており、ツアーの臨場感や理解度を高めるのに役立っていると感じた。
  
AmazonのAWSのブースでは、工場の生産ラインを再現してデモを行っていた。迫力があるだけでなく、ソフトウェアのダッシュボードと連動されており、具体的にどのような機能を提供しているのかが視覚的にわかりやすかった。
  
Microsoftのブースで実演されていたヒューマンロボット。
  
Googleのブースで展示されていたプラント模型。
  
SAPのブースでも工場用のロボットがデモ用に展示さている。

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