HANNOVER MESSE 2025 現地レポート #03
ソニーのAI搭載センサーや住友電工の革新素材、「Hannover Messe 2025」で示した日本の活路【電通 森直樹氏】
2025/04/10
ハノーファー・メッセに出展していた日本企業
ドイツのハノーバーで行われた世界最大規模の製造業のカンファレンス「Hannover Messe 2025(ハノーファー・メッセ)」レポートの第3弾は、出展する日本企業に注目してレポートする。日本勢は、中国勢に比べ出店社数や出展規模は、まだまだ小さく発信の余地があるように感じた。
また、主催者発表によると、来場者数はドイツが1位、中国が2位、日本が7位だった。ちなみに韓国は5位になる。出展に関しても、同様の印象を受ける。今回は、私が直接お話をお伺いできた、ソニーセミコンダクタソリューションズや住友電気工業、ジャパン・インダストリー・パークを紹介する。さらに、会場の雰囲気も展示物の写真を中心にお届けしたい。
AI搭載のチップを内蔵するイメージセンサー
ソニーセミコンダクタソリューションズは製造業のデジタルツイン(現実の世界から収集したデータを基に、まるで双子であるかのように、仮想空間上に現実世界を再現する技術)化やフィジカルAI(AIとロボット技術を組み合わせ、現実世界で自律的に判断・行動できるシステム)の拡大に伴い需要の拡大が期待されるイメージセンサーを出展している。
今回は、AI機能を内蔵したチップをイメージセンサーに内包させることで、エッジ側(クラウドではなく、ユーザーやデバイス側)で画像をAIが解析し、必要なデータだけを送信できる仕組みを紹介している。これにより、クラウドの計算機能や通信帯域の節約ができるという。同社は、産業機械メーカーや実装ベンダー、コンサルティング会社への売り込みを目的に出展している。


住友電気工業は、ハノーファー・メッセ内の水素や燃料電池の展示会「Hydrogen & Fuel Cells EUROPE」にて、先進素材であるセルメット(骨格が3次元網目構造の金属多孔体)を紹介していた。これは金属なのにスポンジのような構造を持ち、非常に軽く、柔軟性に優れた新素材で、自動車用の電池から水素製造装置、燃料電池まで幅広く活用されるとのこと。カーボンニュートラル社会の実現に貢献する新たな素材として期待し、注目されている。2024年はプロトタイプを展示し、今年は実物を出展することができたそうだ。


Japan Industrial Parkでは、日本企業のコラボレーションが標榜され、産業連携の実現に関わる外郭団体の取り組みが紹介されている。また、この展示ブースはアビームコンサルティングがリードして運営されており、産業連携の可能性について同社の知見を提示している。会場では、来場者(主に日本人)間のコミュニケーションを円滑にできるような掲示板サービスや、交流を促すアフタービールイベントなどが行われたそうだ。


CESやSXSWにはない、産業機械の臨場感
ここからは、私自身がハノーファー・メッセならではだと感じたモノをいくつかピックアップしてレポートする。
まずは、展示される「モノ」の迫力だ。AmazonのAWSやMicrosoft、Google、SAPなどの米国を中心とするビックテック企業や、戦略コンサルティングファームのブースも多くの産業機械やロボットがデモ用として展示されている。これは、世界最大規模のテクノロジーカンファレンス「CES」や携帯業界の見本市「MWC(モバイル・ワールド・コングレス)」、世界最大級のビジネスカンファレンス&フェスティバル「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)」などでは観られない独特な光景であった。
特に関心したのは、大きな「モノ」を単なる見栄えとして展示しているのではなく、ソフトウェアやクラウド側との連携を説明するために、ダッシュボードと連携したデモを行っていることだ。インパクトもあるし、機能的な説明がしっかりと示されている。これらは、各社が毎日数度に渡って行われるブースツアーでも価値を発揮しており、ツアーの臨場感や理解度を高めるのに役立っていると感じた。



