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アセアンのリアルな生活者の姿を追う #06

1997年アジア通貨危機が生んだトラウマ世代と、ポジティブなミレニアル世代【博報堂生活総研アセアン 帆刈吾郎】

前回の記事:
「姿勢を評価してほしい夫」と「実態で評価する妻」 タイと日本の家事シェア【博報堂生活総研アセアン 帆刈吾郎】
 博報堂生活総研アセアンは「生活者発想」に基づいてアセアン各国で暮らす生活者の行動や意識の変化について、さまざまな研究活動を行っています。

 アセアン各国での研究においては、「鳥の目」と「虫の目」二つの目線を意識しています。「鳥の目」とは、生活の変化を俯瞰でとらえる目線です。マクロデータや、定量リサーチから、意識や行動の大きな変化を把握します。

 一方の「虫の目」とは、生活者行動の実態を、生活者一人ひとりの行動のディテールからとらえる目線です。家庭訪問調査などのフィールドワークから、行動や意識変化の背後にある深いインサイトを発掘します。

 本稿では、「鳥の目」「虫の目」二つの目線を通して、現地生活者の新しい消費行動やデジタル接触環境の変化などのリアルな姿を紹介していきたいと思います。読者の皆様にとって、発想や視野を広げるきっかけ・刺激となれば幸いです。
 

そもそも、ミレニアル世代とは何か?

 ミレニアル世代という言葉が、世界の若者世代を指すキーワードとして広く使われています。そもそもミレニアル世代とは、どんな世代を指す言葉なのでしょうか?

 様々な定義があるようですが、おおよそ1980年から1999年の間の20年間に生まれ、ミレニアル(2000年代)に育ってきた世代を指すことが多いようです。この世代は、ジェネレーションXの次の世代という意味でジェネレーションY(GenY)とも呼ばれることもあります。

 彼らはティーンエイジャーのころからデジタル技術があったため、世界的にデジタルに精通した世代であると言われています。日本においては生まれてから好景気を経験したことがなく、将来についても少子高齢化、人口減少社会にあることを意識して、身の丈にあったくらしを志向していることから「さとり世代」などいった呼ばれ方をすることもあるようです。

 では、アセアンの国々におけるミレニアル世代の特徴はどのようなものなのでしょうか? 今回は上の世代(主に1970年代生まれの世代)との比較を通してミレニアル世代固有の特徴を探ってみたいと思います。
 

歴史背景の違いから、世代の違いをひもとく

 世代の価値観は、彼らが育ってきた時代環境により形成される部分もあります。その世代の人たちが、どんな出来事に強く影響を受けて育ってきたのかを理解することにより、より深く世代の特徴を理解することが可能になります。そこで、アセアン各国の歴史年表をつくり、自分の考えや行動に影響を与えた出来事を教えてもらうことにしました。
 
政治、経済、文化、テクノロジーなど歴史的出来事をリスト化、対象者に影響を与えた出来事を教えてもらう

ウライラットさんのケース(タイ・バンコク・1979年生まれ)



 彼の実家は家具店を経営していたのですが、1997年のアジア通貨危機で会社が倒産。家業を継ごうと思っていたため、方向転換を余儀なくされました。その影響もあって、収入が安定している大学の事務職を選んだということです。さらには万が一失業したときの備えとして、英語学校を副業で経営しています。
 

ルエンリットさんのケース(タイ・バンコク・1993年生まれ)



 彼女も97年のアジア通貨危機の際の出来事を語ってくれました。不況の影響で郊外へ移住することになりましたが、まだ小さかったため覚えているのは、緑の多いところに引っ越ししたこと程度だったとのことです。

 一方、彼女が大きく影響を受けたのは、2015年のAEC(アセアン経済共同体)発効だったといいます。彼女は大学で教授からこう教わったそうです。「AECによるグローバル化時代にどんな仕事が必要とされるかをよく考える必要がある」。その後、彼女は自分なりに考え、グローバルに通用する職業として「建築士」としてキャリアを積むことを選択したとのことです。
 

アセアンの1970年代生まれは「トラウマ世代」

下記のデータは、「1997年のアジア通貨危機に最も影響を受けた」とした人の割合です。 



 タイだけでなく、インドネシアやマレーシア、シンガポールでも多くの70年代生まれの人たちが、いまだに最も影響があったと答えています。アジア通貨危機とは、ヘッジファンドの空売りにより、タイバーツやインドネシアルピアなどの通貨が大暴落、それに起因し大きな経済危機が起きた事件というように解説されていますが、当時現地で働いていた人の感覚では、会社の倒産が相次ぎ、3人に1人は会社を解雇されるような大変な混乱を起こした出来事だったようです。

 ですので、当時既に多くの人が働いていた70年代生まれの人にとっては、この出来事がトラウマになって意識や行動に今も影響を与えていると考えられます。先日シンガポールで金融関係の方にこのトラウマ世代の話をしたところ、タイやインドネシアの中央銀行のこの世代の担当者が保守的で警戒心が強い理由の背景が分かった気がする、と言っていたのが印象的でした。
 

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