CES 2026 現地レポート #03

NVIDIA、AMD、Lenovoが語る「AI前提」の世界。「CES 2026」で半導体王者が大集合【電通 森直樹】

前回の記事:
SamsungとLGが提唱する「暮らしに溶け込む」次世代AI体験とは? 「CES 2026」現地から詳細レポート【電通 森直樹】

AIは産業と生活を設計する「前提」そのものに。大手3社の講演をレポート


 今回は、NVIDIAプレスカンファレンス/AMDキーノート/Lenovoキーノートの3本をレポートする。LenovoのキーノートではNVIDIA、AMD、インテル、クアルコムの各CEOがゲスト登壇。まさに、世界の半導体企業が大集合する壮大な基調講演となった。3社の講演を通して見えたのは、AIを「新製品の目玉機能」として語るフェーズから、産業と生活を設計する「前提」そのものとして語るフェーズへと移行したことだ。3社は立ち位置こそ異なるが、共通して「AIがどこに実装され、何が置き換わり、どんな産業の流れが再編されるのか」を語った。
  
Lenovoの基調講演にゲスト登壇した半導体業界トップが勢揃い。NVIDIA CEOのジェンスン・フアン氏、Intel CEOのリプブー・タン氏、基調講演も行ったAMD CEOのリサ・スー氏、Qualcomm CEOのクリスティアーノ・アモン氏。さらに、Microsoft CMOのユスフ・メディ氏という、なんとも豪華な顔ぶれとなった。
 
 

NVIDIAが語る「AIによるプラットフォームシフト」


 NVIDIAのプレスカンファレンスでは、CEOジェンスン・フアン氏が、コンピューティング史を「10~15年ごとのプラットフォームシフト」と捉え、その次がAIだと位置づけた。そして、AIは「単体のアプリ」ではなく、その上にアプリケーションが構築される「新しい基盤になる」と語った。さらに、ソフトウェアは「書く」から「訓練する」ものへ変わり、推論は一度で終わらない「考えるプロセス」になると説明。特に、推論やツール利用、コンテキストを組み合わせて課題を解くAgentic AI、そして物理法則を扱うPhysical AIがこれからの「重要領域」だと示し、シミュレーションや合成データによってあらゆる現実世界――現実には稀にしか起こらないような事象まで――学習・評価できるという。

 このセッションでは、Siemensとの協業について詳細な発信があった。NVIDAの基盤(CUDA-XライブラリやAIモデル、Omniverse)をSiemens の設計・シミュレーション基盤へ統合すると示した。NVIDIAとSiemens によって、製品設計から生産・運用までを一気通貫で高度化し、Physical AIを産業の実務プロセスに組み込む世界観を、明確に提示した。

 余談だが今年のCESは、まさに「NVIDIAのイベント」と言っても過言ではないくらいに、NVIDIAとジェンスン・フアン氏が目立ちまくっていた。同氏は自社のプレスカンファレンスはもちろん、LenovoやSiemens など、他社の基調講演にもゲスト登壇。あらゆる場面で登壇し、さまざまなブースで存在感を示していた。「NVIDIAと連携しています」というポップが、至る所に置かれていたのだ。

  
NVIDIAのジェンスン・フアン氏は、「10~15年ごとに起きるプラットフォームシフト」が再来したと宣言。AI上にアプリを築き、ソフトは「書く」から「学習させる」へ。CPU(中央演算処理装置)中心からGPU(画像処理装置)中心へ移り、生成AIがゼロから出力をつくると語った。
 
  
「AIはLLM(大規模言語モデル)を超えてスケールする」として、①計算をデータへ変える発想、②AIのエージェント化、③Physical AIの飛躍、④自然法則を学ぶAI、⑤オープンモデルの最前線到達、という5つの潮流を提示した。
 
  
パーソナル助手の「Blueprint」デモ。メールなどはミニAIスパコン「DGX Spark」上のローカル・オープンモデルで処理してプライバシー確保し、他はフロンティアモデルへ。意図ベースのルーターとのツール連携で小型ロボも動かした。
 
  
「Global L4 and Robotaxi Ecosystem」では、思考し、理由も示す高度な自動運転AI基盤「Alpamayo」を中核に据えた。モデルや学習データもオープン化し、Mercedes-Benz等とのフルスタック展開とエコシステム拡大を強調した。
 
  
ロボットの集合はPhysical AIの次章を象徴。学習用・推論用に加え、現実の反応を返す「シミュレーション用コンピュータ」が不可欠と説明。アプリケーション開発プラットフォーム「Omniverse」とロボット開発プラットフォーム「Isaac」で、仮想環境からロボットが技能を身につける流れを示した。
 
  
Siemensとの提携は、CUDA-XライブラリやAIモデル、OmniverseをEDA/CAE・デジタルツイン群へ深く統合するという宣言に他ならない。設計・シミュレーションから生産・運用まで、産業ライフサイクル全体をPhysical AIで更新する構想だ。
 
  
「NVIDIA One Platform for Every AI」。次世代AIプラットフォーム「Vera Rubin」のAIスーパーコンピュータ、オープンモデル群、「Alpamayo」、「Isaac」を同一プラットフォーム上に並べ、チップ~インフラ~モデル~アプリまで「全層でAIを再発明する」という姿勢を可視化した。
 

AMDは「AIは『どこでも・誰でも』の社会インフラへ」


 今年のプレ・キーノート(開幕前夜に行われる基調講演)はAMDの会長兼CEOのリサ・スー氏が登壇。「AI is Everywhere」を掲げ、AIがクラウド、PC、エッジに広がる社会インフラになると強調した。AIは一部の先進層ではなく、社会全体へと広がる未来像を示した。

 また、AI活用はモデル訓練だけでなく、日常的に使われる推論(Inference)の急拡大が中心になるという。OpenAIの社長・共同創業者のグレッグ・ブロックマン氏がゲストとして登壇し、AIが一問一答型から「エージェント型ワークフロー」へ移行し、人々が同時並行で多くのタスクを進められる世界になることを示した。それは、Inferenceが主要な計算需要となることを意味する。それは計算資源を逼迫し、新機能展開の制約になっているという。同社はこの問題に対して、クラウドに集中させるのではなく、クラウド・PC・エッジへと計算を分散し、用途に応じて最適な場所でInferenceを動かすことが重要だと説明した。

 さらに、これからの可能性として、動画生成、ローカルAI、3D世界生成、医療・創薬といった多様な事例を通じて、AIが人の判断や創造を支える存在になることが示された。
 
AMDのCEOリサ・スー氏の基調講演。「AI is Everywhere」を掲げ、AIを一部の先端技術ではなく、クラウドからPC、エッジまで社会全体に浸透する基盤技術として位置づけた。
 
「AI is Everywhere」のスライドは、AIが研究用途に留まらず、日常業務や創作、産業活動のあらゆる場面に組み込まれていくというAMDの基本思想を象徴的に示している。
 
AI利用者数の成長予測を示したグラフ。数年以内に50億人規模へ拡大するとし、AIは社会インフラ級の存在になると強調された。
 
「Cloud is the Epicenter for AI Development」として、生成AI、AIエージェント、検索、コーディング支援など、現在の主要AI活用がクラウドを中核に展開している現状を整理。
 
クラウド事業者やAIスタートアップとの広範なパートナーシップを提示。AI時代は単独企業ではなく、エコシステム全体で価値を創出する構造だと示した。
 
OpenAIとの協業を象徴する場面。AIの高度化に伴いInferenceが主要ワークロードとなり、計算基盤への要求が質的に変化していることが語られた。
 
「The Age of Always-On Intelligence」。一人の人間が多数のタスクを同時に回せる世界では、AIが常時稼働する前提で、働き方や生産性が再定義されると説明した。
 
手のひらサイズのローカルAI開発環境を紹介。「アイデアからワークフローへ数分で移行できる」とし、AI開発が一部の専門家から広範な開発者へと広がる未来を描いた。
 
医療分野へのAI活用を整理。ゲノム解析、創薬、診断、医療機器、患者ケアまでを一連の流れとして示し、AIが医療の意思決定と研究速度を変えることを強調した。
 

Sphereが基調講演の舞台に。Lenovoの講演には世界に最も影響を与える半導体王者が勢揃い


 昨年に続き、今年もラスベガスの巨大イマーシブシアター「Sphere」にて、Lenovoの基調講演が行われた。Sphereの壮大な演出がかすむほど豪華なゲスト陣の登壇が相次ぎ、本稿の冒頭で紹介した通り、半導体とビックテック王者が揃い踏みするという、極めて贅沢で印象的な基調講演となった。

 CEOのヤン・ユエンチン氏が登壇し、AIを単体技術ではなく、デバイスからクラウドまでを横断するHybrid AIとして提示し、用途や文脈に応じて最適な計算基盤を使い分ける構想を示した。Lenovoは、自社を半導体各社の強みを束ね、AI体験を統合する「ハブ」であるのだという。

 さらに、AIは個人の利便性だけでなく、インフラや産業用途にも接続するものだとし、NVIDIAとの「AI Giga Factory」構想、AMDとのAIインフラ連携、そしてスポーツ・エンタメ領域での活用事例(Sphereでの映像基盤やFIFA向けの生成AI知識支援「Football AI Pro」など)を紹介、Hybrid AIの可能性とファクトを示した。
 
 
 
たぶん、SphereでのLenovoの基調講演は定番となった。イマーシブシアターを最大限に活用した演出のインパクトは極めて大きい。
 
レノボCEOのヤン・ユエンチン氏とNVIDIAのジェンスン・フアン氏が同時登壇。AI時代におけるハードウェア、ソフトウェア、製造力を統合した「フルスタック連携」が、次の産業競争力になると強調された。
 
「User-Centric AI」を象徴するビジュアル。PC、スマートフォン、タブレットなど複数デバイスを一人のユーザーを中心に束ね、個人の意図を理解するAI体験を実現するというLenovoの思想を示している。
 
「Intelligent Model Orchestration」のスライド。用途や文脈に応じて最適なAIモデルを自動選択・連携させ、効率的かつコスト効果の高いAI活用を実現する基盤概念が語られた。
 
個人向けAIスーパーエージェント「QIRA」を発表。ユーザーの行動や好みを学習し、デバイスやサービスを横断して支援する「常駐型AI」として位置づけられた。
 
F1をはじめとするスポーツ・エンターテインメント領域でのAI活用事例。大量の映像データをリアルタイムに解析・配信する基盤として、LenovoのインフラとAI技術が活用されていることを示した。
 
「Hybrid AI Advantage」の全体構造。AIライブラリ、AIファクトリー、AIサービスを一体で提供し、データからエージェントまでを統合的に支える戦略だという。
 
Lenovoのヤン・ユエンチン氏とAMDリサ・スー氏が共演。デバイスからクラウド、エッジまでを横断する「ハイブリッドAI」の実装には、半導体とシステムの協調が不可欠であると訴えた。
 
ステージ上を自律走行するロボットのデモ。AIエージェントとフィジカルデバイスが連携し、現実空間でタスクを遂行する未来像を示す演出がなされた。
 

AIは要素技術から、顧客体験の再定義へ


 3社の講演が共通して示したのは、AIの現在地が「新しい機能」というより、計算基盤(NVIDIA)/社会インフラ(AMD)/体験統合(Lenovo)として再定義されている事実だ。推論とエージェントが前面に出るほど、顧客接点は「画面で操作するUI」から「意図を伝え、結果を受け取るUI」への移行が加速するだろう。マーケターにとっては、AI進展による顧客体験や、購買態度の大きな変化を未来の可能性ではなく、足元の現実的な対応として考える必要がある。かつてWebやスマホが普及したことで、急激に情報接触態度や購買態度が変化したとき以上のスピードで、「AIドリブン」な世界が来ることは間違いない。

 
森 直樹 氏
株式会社電通
ビジネストランスフォーメーション・クリエイティブセンター
エクスペリエンス・デザイン部長/クリエイティブディレクター

光学機器のマーケティング、市場調査会社、ネット系ベンチャーなど経て2009年電通入社。米デザインコンサルティングファームであるfrog社との協業及び国内企業への事業展開、デジタル&テクノロジーによる事業およびイノベーション支援を手がける。2023年まで公益社団法人 日本アドバタイザーズ協会 デジタルマーケティング研究機構の幹事(モバイル委員長)を務める。著書に「モバイルシフト」(アスキー・メディアワークス、共著)など。ADFEST(INTERACTIVE Silver他)、Spikes Asia(PR グランプリ)、グッドデザイン賞など受賞。ad:tech Tokyo公式スピーカー他、講演多数。CESでは、ライフワークとして各種メディアに10年以上の寄稿経験がある。

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